スーパートレンドとは
スーパートレンドとは、ATR(平均的な値幅)をもとにした線を、価格の下(または上)に表示して、トレンドの方向と、損切りの目安を示す、トレンド系のテクニカル指標です。価格が上昇しているときは、線が価格の下にあり、下降しているときは、線が価格の上にあります。終値が線を越えると、線が反対側に移り、色も変わるため、トレンドの転換が、見た目で分かりやすいのが、特徴です。一般的な設定は、ATRの期間10、倍率3です(ソフトによって、異なる場合があります)。
| 上昇トレンド | 下降トレンド | |
|---|---|---|
| 線の位置 | 価格の下 | 価格の上 |
| 線の動き | 価格を追って、上がる(下がらない) | 価格を追って、下がる(上がらない) |
| 転換のサイン | 終値が線を下回ると、線が上に移る | 終値が線を上回ると、線が下に移る |
| 使われ方 | 買いの保有と、損切りの目安 | 売りの保有と、損切りの目安 |

計算方法
基準値 = (高値 + 安値)÷ 2
上側の線(仮) = 基準値 + 倍率 × ATR
下側の線(仮) = 基準値 − 倍率 × ATR
ATRは、1本ごとの値幅(TR)を、平均したもので、TRは、「高値 − 安値」「高値 − 前の終値の絶対値」「安値 − 前の終値の絶対値」のうち、最も大きいものです。ATRについては、別の記事で解説しています。
この「仮の線」を、そのまま使うと、ATRの増減に合わせて、線が上下に揺れてしまいます。そこで、トレンドが続いている間は、線が「トレンドの方向にしか動かない」ように、調整します。
【上昇トレンド中】
下側の線 = 今回の仮の線が、前の下側の線より高ければ、更新する
低ければ、前の線のまま(下がらない)
終値が線を下回ったら、下降トレンドに転換
【下降トレンド中】
上側の線 = 今回の仮の線が、前の上側の線より低ければ、更新する
高ければ、前の線のまま(上がらない)
終値が線を上回ったら、上昇トレンドに転換
転換したときは、反対側の線(上昇から下降なら、上側の線)に、切り替わります。
計算例:上昇トレンドの線を、手計算する
ATRは、計算を簡単にするため、0.20円(20pips)で固定、倍率は3とします。**倍率 × ATR = 0.60円(60pips)**です。前の足の下側の線は、149.75円とします(例の数値です)。
| 足 | 高値 | 安値 | 終値 | 基準値 | 仮の下側の線 | 下側の線(確定) | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1本目 | 150.60 | 150.20 | 150.50 | 150.40 | 149.80 | 149.80 | 上昇継続 |
| 2本目 | 150.80 | 150.40 | 150.75 | 150.60 | 150.00 | 150.00 | 上昇継続 |
| 3本目 | 150.85 | 150.45 | 150.55 | 150.65 | 150.05 | 150.05 | 上昇継続 |
| 4本目 | 150.70 | 150.30 | 150.40 | 150.50 | 149.90 | 150.05 | 上昇継続 |
| 5本目 | 150.45 | 149.90 | 149.95 | 150.175 | 149.575 | 150.05 | 転換 |
1本目 基準値 = (150.60 + 150.20)÷ 2 = 150.40
仮の線 = 150.40 − 0.60 = 149.80 > 前の線149.75 → 149.80に更新
3本目 仮の線 = 150.65 − 0.60 = 150.05 → 更新
4本目 仮の線 = 150.50 − 0.60 = 149.90 < 前の線150.05 → 更新しない。150.05のまま
(仮の線は下がったが、確定した線は下がらない)
5本目 終値149.95 < 線150.05 → 終値が線を下回った → 下降トレンドに転換
4本目で、仮の線(149.90円)は下がっていますが、線は、前の150.05円のままです。これが、「トレンドの方向にしか動かない」という、調整です。
5本目で転換すると、線は、反対側の「上側の線」に移ります。
5本目の上側の線 = 基準値 + 0.60 = 150.175 + 0.60 = 150.775円
(前の上側の線が、これより高い場合は、低いほう(150.775円)になる)
線が、価格の下から、150.775円の上側に移り、下降トレンドに切り替わりました。実際の計算では、ATRも1本ごとに変わり、ATRの平均の取り方(単純平均か、ワイルダー式の平滑化か)も、ソフトによって異なります。手計算の値と、チャートの値が、少しずれることが、あります。
スーパートレンドが示すこと
線が価格の下 = 上昇トレンドの途中
線が価格の上 = 下降トレンドの途中
線の色・位置が入れ替わる = トレンドが転換した可能性
線と価格の距離 = 反転するまでの余裕
スーパートレンドは、「ATRの何倍分、逆に動いたら、トレンド終了とみなす」という、ルールを、線で表したものとも言えます。値動きが大きい時期は、ATRが大きくなって、線が遠くなり、小さい時期は、線が近くなります。
他の指標との違い
| スーパートレンド | パラボリックSAR | ケルトナーチャネル | 移動平均線 | |
|---|---|---|---|---|
| 表示 | 1本の線(色が変わる) | ドット | 3本の線(帯) | 線 |
| 計算の軸 | ATRの倍数 | 加速係数とEP | EMAとATR | 終値の平均 |
| 価格との距離 | ATRで決まる | 進むほど、近づく | ATRで決まる | 一定の遅れ |
| 転換の頻度 | 少なめ | 多い | (転換はない) | 少なめ |
| 主な用途 | 方向と、損切りの目安 | 損切り・転換の目安 | 行き過ぎ、ブレイク | 方向の確認 |
パラボリックSAR、ケルトナーチャネル、移動平均線(SMA)については、別の記事で解説しています。
使い方
1. トレンドの方向を確認する
線が価格の下(上昇色)なら、買い目線、上(下降色)なら、売り目線、という、方向の確認に使います。色が変わった足を、トレンド転換の目安とします。
2. 損切り・決済の目安にする(トレイリングストップ)
買いのポジションを持っているとき、線の位置を、損切りの位置にします。線は、トレンドの方向にしか動かないため、損切りの位置が、自動的に引き上がります。終値が線を下回ったら、決済します。
計算例:転換後の買いと、線を使った損切り
線が価格の上から、下に移り(上昇への転換)、新しい線が150.30円、その足の終値が150.80円だったとします。直近高値は151.60円です。損切りは線(150.30円)、利益確定は、直近高値(151.60円)とします。
転換が確認された足の終値(150.80円)で買う場合
エントリー 150.80円、損切り 150.30円、利確 151.60円
リスク = 150.80 − 150.30 = 0.50円(50pips)
リワード = 151.60 − 150.80 = 0.80円(80pips)
リスクリワード比 = 80 ÷ 50 = 1.6
転換後、150.55円まで押したところで、指値で買う場合
エントリー 150.55円、損切り 150.30円、利確 151.60円
リスク = 150.55 − 150.30 = 0.25円(25pips)
リワード = 151.60 − 150.55 = 1.05円(105pips)
リスクリワード比 = 105 ÷ 25 = 4.2
押しを待つほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、押さずに上がると、エントリーできません。また、押しが深くなって線に触れると、損切りになります。転換の確認後に入る場合は、エントリーできないリスクは、ありませんが、損切りまでの距離が、遠くなりやすいです。線は、足が進むごとに動くため、損切りの位置は、見直す必要があります。
3. 他の指標と組み合わせる
スーパートレンドは、単独では、レンジでダマシが出るため、ADXなど、トレンドの強さを測る指標と、組み合わせることが、多いです。DMI・ADXについては、別の記事で解説しています。
注意点
1. レンジでは、転換を繰り返す
価格が上下を繰り返すレンジでは、線が、何度も上下に入れ替わります。転換のたびに売買すると、小さな損失が重なります。
たとえば、レンジで、転換ごとに平均20pipsの損失が、5回続くと、合計100pipsの損失です。その後のトレンドで、1回の利益が150pipsなら、合計は+50pips、80pipsなら、合計は−20pipsです。この数字は、あくまで例ですが、レンジの損失を、トレンドの利益で取り返せるかは、状況によって変わります。相場がトレンドか、レンジかを、まず確認しましょう。環境認識については、別の記事で解説しています。
2. 転換のサインは、遅い
終値が線を越えたときには、すでに価格が、大きく戻っています。倍率3の場合、ATRの3倍分(この例では60pips)の逆行を許すため、転換の確認までに、利益が減ることが、あります。天井や底の予測には、向いていません。
3. 設定によって、見え方が変わる
ATRの期間と、倍率を変えると、線の位置も変わります。倍率を小さくすると、線は近づいて、転換が増え、大きくすると、線は遠のいて、転換が減ります。他人のチャートと、そのまま比べないようにしましょう。
4. 利益確定の位置は、示さない
スーパートレンドは、「損切り・転換」の目安で、「どこまで上がるか」は、示しません。利益確定の目標は、別に決める必要があります。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、ATRが急に大きくなり、線が遠くなることが、あります。一気に線を越えて転換する場合もあり、その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、線を越えたように見えても、確定までに戻ることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
色が変わるたびに、売買する
レンジでは、ダマシが続き、損失が重なります。トレンドがあるかを、先に確認しましょう。
線を、反転の予測として使う
スーパートレンドは、「転換した」ことを、遅れて知らせるものです。「ここで反転する」を、予測するものでは、ありません。
線の位置が、いつも同じだと考える
ATRが変わると、線と価格の距離も変わります。損切り幅は、毎回、確認しましょう。
設定を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、設定を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「スーパートレンドの転換で売買すれば勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- スーパートレンドは、ATRをもとにした線を、価格の下(上昇)または上(下降)に表示して、トレンドの方向と、転換の目安を示す指標
- 基準値 =(高値 + 安値)÷ 2。線 = 基準値 ± 倍率 × ATR。トレンド中は、線がトレンドの方向にしか動かない。一般的な設定は、ATR10・倍率3
- 終値が線を越えると、線が反対側に移り、トレンドが転換する
- トレンドの方向の確認と、損切り(トレイリングストップ)の目安に使う。指値のほうがリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- レンジでは、転換を繰り返し、小さな損失が重なる。利益確定の位置は、示さない
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
