フラクタルとは
フラクタルとは、5本のローソク足の並びから、「真ん中の足の高値(安値)が、前後2本ずつより高い(低い)」という形を見つけて、チャート上に印を付ける、高値・安値を探すためのテクニカル指標です。ビル・ウィリアムズ氏が、著書『Trading Chaos』(1995年)で紹介したものとして知られています。高値側の印を「上のフラクタル(アップフラクタル)」、安値側の印を「下のフラクタル(ダウンフラクタル)」と呼びます。目で見て「ここが山・谷」と判断していた部分を、ルールで、機械的に拾えるのが、特徴です。
| 上のフラクタル(高値) | 下のフラクタル(安値) | |
|---|---|---|
| 形 | 5本の真ん中の高値が、前後2本ずつの高値より高い | 5本の真ん中の安値が、前後2本ずつの安値より低い |
| 印の位置 | 真ん中の足の上 | 真ん中の足の下 |
| 意味 | 短期的な山(レジスタンスの候補) | 短期的な谷(サポートの候補) |
| 確定 | 真ん中の足から、2本あとの足が終わったとき | 同左 |

計算方法
上のフラクタル:
高値[t] > 高値[t−1] かつ 高値[t] > 高値[t−2]
かつ 高値[t] > 高値[t+1] かつ 高値[t] > 高値[t+2]
下のフラクタル:
安値[t] < 安値[t−1] かつ 安値[t] < 安値[t−2]
かつ 安値[t] < 安値[t+1] かつ 安値[t] < 安値[t+2]
「t」は、真ん中の足です。同じ高値(安値)が並んだ場合の扱いは、ソフトによって異なります。前後2本の、計5本で判断するのが、標準的な設定ですが、前後の本数を変える(3本ずつの7本など)こともあります。
計算例:5本の足で、フラクタルを判定する
5本の足の高値は、古い順に、次のとおりです(例の数値です)。
| 足 | 1本目 | 2本目 | 3本目(真ん中) | 4本目 | 5本目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高値 | 150.40 | 150.55 | 150.70 | 150.60 | 150.45 |
真ん中(3本目)の高値 150.70円
> 2本目 150.55円(○)
> 1本目 150.40円(○)
> 4本目 150.60円(○)
> 5本目 150.45円(○)
→ 4つとも満たすので、3本目の高値150.70円は、上のフラクタル
次は、フラクタルにならない例です。
| 足 | 1本目 | 2本目 | 3本目(真ん中) | 4本目 | 5本目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高値 | 150.40 | 150.70 | 150.60 | 150.75 | 150.50 |
真ん中(3本目)の高値 150.60円
> 2本目 150.70円(×) → 前の2本目のほうが高い
→ 上のフラクタルではない
下のフラクタルは、安値で、同じように判定します。
| 足 | 1本目 | 2本目 | 3本目(真ん中) | 4本目 | 5本目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 安値 | 150.30 | 150.20 | 150.05 | 150.15 | 150.25 |
真ん中(3本目)の安値 150.05円が、前後2本ずつの安値(150.30、150.20、150.15、150.25)より低い
→ 下のフラクタル
フラクタルは、5本目の足が終わるまで、確定しません。3本目(真ん中)の高値が、そのときには分かっていても、「あとの2本」が出るまで、フラクタルになるかは、分からないためです。この「2本の遅れ」が、フラクタルの、大きな特徴です。
見方
上のフラクタル = 短期の山。この高値を超えたら、上方向に動く可能性
下のフラクタル = 短期の谷。この安値を割ったら、下方向に動く可能性
直近の上のフラクタルの高値を、レジスタンス、下のフラクタルの安値を、サポートの目安として、見ます。また、フラクタルの高値・安値が、切り上がっていくか、切り下がっていくかで、ダウ理論の「高値・安値の切り上げ・切り下げ」を、確認できます。ダウ理論、サポートとレジスタンスについては、別の記事で解説しています。
他の指標との違い
| フラクタル | ジグザグ | ドンチャンチャネル | |
|---|---|---|---|
| 確定の条件 | 前後2本ずつより、高い(低い) | しきい値以上の反転 | なし(常に、N本の最高値・最安値) |
| 確定の遅れ | 2本(固定) | 反転がしきい値に達するまで(変動) | 遅れはない |
| 印の数 | 多い(レンジでも付く) | 少ない(大きな波だけ) | −(線) |
| 値幅の考慮 | なし(順位だけ) | あり | あり(価格の水準) |
ジグザグ、ドンチャンチャネルについては、別の記事で解説しています。
フラクタルは、「値幅」を見ず、「前後の足との比較」だけを見るため、小さな山・谷にも、印が付きます。図の右側(レンジ)は、小さな山・谷に、多くの印が付いています。
使い方
1. サポート・レジスタンスの目安にする
直近の上のフラクタルの高値を、上値の目安(レジスタンス)、下のフラクタルの安値を、下値の目安(サポート)に、します。
2. ブレイクアウトの目安にする
価格が、直近の上のフラクタルの高値を、上に抜けたら、買いの目安、下のフラクタルの安値を、下に抜けたら、売りの目安とする方法があります。
3. 損切りの位置を決める
買いなら、直近の下のフラクタルの安値の、少し下を、損切りにする、といった使い方です。
計算例:上のフラクタルのブレイク後の買い
直近の上のフラクタルが151.20円、直近の下のフラクタルが150.90円とします。価格が151.20円を、上に抜けたとします。**損切りは、下のフラクタル(150.90円)の5pips下(150.85円)、利益確定は、152.00円(前の高値)**とします。
抜けたあと、その足が確定した終値(151.30円)で買う場合
エントリー 151.30円、損切り 150.85円、利確 152.00円
リスク = 151.30 − 150.85 = 0.45円(45pips)
リワード = 152.00 − 151.30 = 0.70円(70pips)
リスクリワード比 = 70 ÷ 45 ≒ 1.6
抜けたあと、151.20円まで戻ってきた(リテスト)ところで、指値で買う場合
エントリー 151.20円、損切り 150.85円、利確 152.00円
リスク = 151.20 − 150.85 = 0.35円(35pips)
リワード = 152.00 − 151.20 = 0.80円(80pips)
リスクリワード比 = 80 ÷ 35 ≒ 2.3
戻りを待つほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、戻らずに上がると、エントリーできません。また、戻りが深くなって、151.20円を割り込むと、「ブレイクが、ダマシだった」可能性が高まります。確定した足で入る場合は、エントリーできないリスクは、ありませんが、ダマシにかかったときの損失は、そのまま発生します。新しいフラクタルが、足が進むごとに現れるため、損切りや目標の位置は、見直す必要があります。
注意点
1. 確定が遅い(2本遅れる)
フラクタルは、真ん中の足から2本あとに、確定します。1時間足なら2時間、日足なら2日のあとです。確定したときには、すでに価格が、少し反転していることが、あります。
2. レンジでは、印が多すぎる
レンジでは、小さな山・谷が、何度も現れ、印が増えます。すべてを、意味のある高値・安値として扱うと、判断が、散らかります。どの印を使うか、先にルールを決めておくことが、大切です。
3. 値幅を、見ていない
1pips高いだけの高値にも、100pips高い高値にも、同じ印が付きます。印の「重さ」は、別に判断する必要があります。
たとえば、レンジで、フラクタルの高値を抜けるたびに買い、平均20pipsの損失が、5回続くと、合計100pipsの損失です。その後のトレンドで、1回の利益が130pipsなら、合計は+30pips、70pipsなら、合計は−30pipsです。この数字は、あくまで例ですが、ダマシの損失を、トレンドの利益で取り返せるかは、状況によって変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
4. 過去チャートで、きれいに見えすぎる
過去のチャートでは、すべての印が、きれいな山・谷に付いて見えます。**実際の取引では、印が出るのは「2本あと」**で、同じ点では、入れません。検証するときは、確定した時点以降の価格で、判断する必要があります。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、1本だけ極端に長い足が出て、フラクタルが付くことが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、フラクタルが付いたように見えても、確定までに変わることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
印が出たら、その方向に反転すると考える
フラクタルは、「ここが山・谷だった」ことを、2本遅れて知らせるものです。反転の予測では、ありません。
印が付いている足で、すぐ逆張りする
印は、確定したときには、すでに2本あとです。付いたときの価格は、もう、山・谷から離れています。
すべての印を、重要な高値・安値として扱う
小さな山・谷にも、印は付きます。直近の大きな波にある印か、小さなノイズかを、見分ける必要があります。
設定を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、前後の本数を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「フラクタルのブレイクで売買すれば勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- フラクタルは、5本の足のうち、真ん中の高値(安値)が、前後2本ずつより高い(低い)形に、印を付ける指標。ウィリアムズ氏が紹介した
- 上のフラクタル = 短期の山、下のフラクタル = 短期の谷
- 確定は、真ん中の足から2本あと。印が付いたときには、すでに少し反転している
- サポート・レジスタンスの目安、ブレイクの目安、損切りの位置決めに使う。ブレイク後の買いでは、リテストでの指値のほうがリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- 値幅を見ないため、レンジでは、印が多すぎる
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
