DMI・ADXとは
DMI(Directional Movement Index、方向性指数)とは、価格が「上に動く力」と「下に動く力」のどちらが強いかを、数値で表す指標です。ADX(Average Directional Movement Index、平均方向性指数)とは、その動きの「方向の強さ(トレンドの強さ)」を、方向に関係なく、1本の線で表す指標です。どちらも、J・ウェルズ・ワイルダー氏が考案したものとして知られ、セットで使われることが、多いです。別ウィンドウに表示する、トレンド系の指標です。
| 線 | 内容 |
|---|---|
| +DI | 上方向の動きの強さ |
| −DI | 下方向の動きの強さ |
| ADX | トレンドの強さ(方向は示さない) |

大切なのは、「+DIと−DIは方向」「ADXは強さ」と、役割が分かれていることです。ADXが高いからといって、上昇とは限りません。下降トレンドでも、ADXは、高くなります。
計算方法
計算は、4つのステップです(期間は、一般に14)。
① +DM・−DM(方向性の動き)を、足ごとに求める
② TR(トゥルーレンジ)を、足ごとに求める
③ +DM・−DM・TRを、ワイルダーの方法で平滑化し、+DI・−DIを求める
④ +DI・−DIの差から、DXを求め、DXを平滑化してADXを求める
① +DM・−DM
上の動き = 今の高値 − 前の高値
下の動き = 前の安値 − 今の安値
+DM = 上の動きが、下の動きより大きく、かつ、プラスなら「上の動き」。それ以外は 0
−DM = 下の動きが、上の動きより大きく、かつ、プラスなら「下の動き」。それ以外は 0
1本の足では、+DMと−DMの、どちらか一方(または両方0)が、値を持ちます。
② TR
TR = 次の3つのうち、最も大きい値です。
高値 − 安値、|高値 − 前の終値|、|安値 − 前の終値|
③ +DI・−DI
+DI = +DMの平滑値 ÷ TRの平滑値 × 100
−DI = −DMの平滑値 ÷ TRの平滑値 × 100
④ DXとADX
DX = |+DI − −DI| ÷ (+DI + −DI) × 100
ADX = DXを、ワイルダーの方法で平滑化した値(一般に14期間)
計算例:5本のDMI
手計算しやすいように、5本の足で、+DM・−DM・TRの合計を使って計算します(実際には、14本などを、ワイルダーの方法で平滑化します)。前の足(0本目)は、高値150.50円、安値150.20円、終値150.40円です。
| 足 | 高値 | 安値 | 終値 | 上の動き | 下の動き | +DM | −DM | TR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1本目 | 150.70 | 150.40 | 150.65 | +0.20 | −0.20 | 0.20 | 0 | 0.30 |
| 2本目 | 150.80 | 150.55 | 150.60 | +0.10 | −0.15 | 0.10 | 0 | 0.25 |
| 3本目 | 150.75 | 150.35 | 150.40 | −0.05 | +0.20 | 0 | 0.20 | 0.40 |
| 4本目 | 150.65 | 150.30 | 150.55 | −0.10 | +0.05 | 0 | 0.05 | 0.35 |
| 5本目 | 150.95 | 150.60 | 150.90 | +0.30 | −0.30 | 0.30 | 0 | 0.40 |
+DMの合計 = 0.20 + 0.10 + 0 + 0 + 0.30 = 0.60
−DMの合計 = 0 + 0 + 0.20 + 0.05 + 0 = 0.25
TRの合計 = 0.30 + 0.25 + 0.40 + 0.35 + 0.40 = 1.70
+DI = 0.60 ÷ 1.70 × 100 ≒ 35.3
−DI = 0.25 ÷ 1.70 × 100 ≒ 14.7
DX = |35.3 − 14.7| ÷ (35.3 + 14.7) × 100
= 20.6 ÷ 50.0 × 100 ≒ 41.2
+DI(35.3)が、−DI(14.7)を大きく上回っています。上方向の動きが、強い状態です。
ADXは、このDXを平滑化したものです。たとえば、前の足のADXが28.0、今のDXが41.2のとき、期間14のワイルダーの平滑化は、次のとおりです。
ADX = (前のADX × 13 + 今のDX)÷ 14
= (28.0 × 13 + 41.2)÷ 14
= 405.2 ÷ 14 ≒ 28.9
DXが、前のADXより大きい(41.2 > 28.0)ため、ADXは、わずかに上がります。ADXは、DXを平滑化するため、動きが遅く、なめらかです。
見方
+DIと−DI(方向)
| 状態 | 見方 |
|---|---|
| +DIが、−DIの上 | 上方向の動きが強い。買い優勢 |
| −DIが、+DIの上 | 下方向の動きが強い。売り優勢 |
| +DIが、−DIを上抜ける | 買い優勢への転換の目安 |
| −DIが、+DIを上抜ける | 売り優勢への転換の目安 |
ADX(強さ)
| 状態 | 見方 |
|---|---|
| ADXが高い(例:25以上) | トレンドが強い(方向は、DIで確認) |
| ADXが低い(例:20以下) | トレンドが弱い。レンジの可能性 |
| ADXが、上昇している | トレンドが強まっている |
| ADXが、高い位置から下がり始める | トレンドの勢いが、弱まっている可能性 |
「25」「20」といった数字は、よく使われる目安ですが、決まった基準ではありません。通貨ペア・時間足・時期によって、ADXの水準は変わります。過去のチャートで、「普段は、どのくらいの水準か」を、確認しましょう。図でも、上昇トレンドの間、ADXは大きく上昇し、レンジに入ると、下がっています。
他の指標との違い
| DMI・ADX | 移動平均線の傾き | ボリンジャーバンドのバンド幅 | |
|---|---|---|---|
| 見るもの | 高値・安値の更新の強さ | 平均価格の向きと勢い | 終値のばらつき |
| 方向と強さ | 方向(DI)と強さ(ADX)を、分けて見る | 向きと勢いが、1本の線に含まれる | 強さ(値動きの大きさ)のみ |
| レンジの判定 | ADXが低い | 傾きが、横ばい | バンド幅が、狭い |
| 遅れ | ADXは、遅い | 移動平均線の遅れ | 標準偏差の計算の遅れ |
移動平均線の傾き、ボリンジャーバンド、スクイーズとエクスパンションについては、別の記事で解説しています。
使い方
1. レンジとトレンドを区別する
ADXが低いときは、順張りのサインを、控える、ADXが高いときだけ、順張りを考える、という使い方です。図の左側のレンジでは、+DIと−DIが、何度も交差していますが、ADXは低いままです。この交差は、ダマシになりやすいため、ADXで、フィルター(絞り込み)をかける考え方が、あります。
2. +DIと−DIの交差を、方向の転換の目安にする
+DIが−DIを上抜けて、ADXも上昇しているときを、上昇トレンドの始まりの目安にする方法があります。
計算例:DIの交差とADXを使った押し目買い
+DIが、−DIを上抜け、ADXが、28で上昇中だとします。その足の終値は、150.90円です。直近の安値は、150.50円、直近高値は、151.50円です。損切りは、直近安値(150.50円)、利益確定は、直近高値(151.50円)とします。直近安値を割ると、「上昇への転換」という前提が崩れるためです。
交差を確認した足の終値(150.90円)で買う場合
エントリー 150.90円、損切り 150.50円、利確 151.50円
リスク = 150.90 − 150.50 = 0.40円(40pips)
リワード = 151.50 − 150.90 = 0.60円(60pips)
リスクリワード比 = 60 ÷ 40 = 1.5
そのあと、150.70円まで押したところで、指値で買う場合
エントリー 150.70円、損切り 150.50円、利確 151.50円
リスク = 150.70 − 150.50 = 0.20円(20pips)
リワード = 151.50 − 150.70 = 0.80円(80pips)
リスクリワード比 = 80 ÷ 20 = 4.0
押しを待つほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、押さずに上がると、エントリーできません。また、押しが深くなり、150.50円を割ると、損切りになります。交差を確認した足で入る場合は、エントリーできないリスクは、ありませんが、リスクリワード比は、下がります。DMIは、すべて、すでに動いたあとの値動きから計算されるため、エントリーが遅れやすい点にも、注意が必要です。
3. トレンドの終わりの目安にする
ADXが、高い位置から、下がり始めることを、トレンドの勢いが、弱まった目安にする方法があります。ただし、ADXが下がっても、トレンドの方向が変わるとは限りません。一時的な、横ばいに入っただけの場合も、あります。
注意点
1. ADXは、方向を示さない
ADXが高くても、上昇か下降かは、分かりません。方向は、+DI・−DI(または、価格そのもの)で確認します。
2. サインが、遅い
ADXは、DXを平滑化したもので、トレンドが始まって、ある程度進んだあとに、上がります。図でも、価格が動き始めたあとに、ADXが上がっています。初動を捉える道具では、ありません。
3. レンジでは、DIの交差が頻発する
レンジ相場では、+DIと−DIが、何度も交差します。交差のたびに売買すると、小さな損失が重なります。ADXで、トレンドがあるかを、まず確認しましょう。環境認識については、別の記事で解説しています。
4. 「25」は、絶対の基準ではない
ADXの水準は、通貨ペア・時間足・時期で、変わります。固定の数字を、そのまま使わないようにしましょう。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、DIが一気に大きく動くことが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、確定するまで、DI・ADXの値が変わります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
ADXが高いから、上昇と考える
ADXは、トレンドの強さのみで、下降トレンドでも、高くなります。
ADXが下がり始めたら、すぐに逆張りする
ADXが下がっても、トレンドの方向が、変わるとは限りません。一時的な、横ばいの場合も、あります。
DIの交差だけで、売買する
レンジでは、ダマシが続きます。ADXや、価格の動きも、あわせて確認しましょう。
期間・しきい値を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間や、ADXの水準を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「ADXが25を超えたら、順張りで勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- DMIは、+DI(上方向の強さ)と−DI(下方向の強さ)で、動きの方向を見る指標。ADXは、方向に関係なく、トレンドの強さを、1本の線で示す。ワイルダー氏が考案した
- +DM・−DM・TRを、14期間などで平滑化して、+DI・−DIを求め、DXを平滑化して、ADXを求める
- 5本の例では、+DIが35.3、−DIが14.7、DXが41.2
- ADXが高いとトレンドが強く、低いとレンジの可能性。「25」「20」は、目安で、固定の基準ではない
- ADXが低いときの、DIの交差は、ダマシになりやすい
- 交差を確認した足で入るとリスクリワード比は下がり、押しを待つと上がるが、エントリーできないこともある
- ADXは遅い。単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
