パラボリックSARとは
パラボリックSARとは、価格の下(または上)に「ドット(点)」を表示して、トレンドの方向と、トレンドが終わる目安の位置を示す、トレンド系のテクニカル指標です。米国のJ・ウェルズ・ワイルダー氏が、1978年の著書で紹介したものとして知られています。「SAR」は「Stop And Reverse」の略で、「止めて、反転する」という意味です。価格がドットに触れたら、いったんポジションを閉じて(ストップ)、反対の方向に切り替える(リバース)、という考え方にもとづいています。「パラボリック(放物線)」と呼ばれるのは、ドットが、トレンドとともに、放物線のように価格に近づいていくためです。
| 上昇トレンド | 下降トレンド | |
|---|---|---|
| ドットの位置 | 価格の下 | 価格の上 |
| ドットの動き | 価格を追いかけて、上がる | 価格を追いかけて、下がる |
| 転換のサイン | 価格がドットに触れる(割る)と、ドットが上に移る | 価格がドットに触れる(超える)と、ドットが下に移る |
| 使われ方 | 買いの保有と、損切りの目安 | 売りの保有と、損切りの目安 |

計算方法
SAR(次の足)= 今のSAR + AF × (EP − 今のSAR)
EP(エクストリーム・ポイント)= トレンド中の、最高値(上昇)または最安値(下降)
AF(加速係数)= 初期値 0.02。EPを更新するたびに、0.02ずつ増える。上限 0.20
ドットは、EP(トレンドの行き過ぎた端)に向かって、少しずつ近づき、EPを更新するたびに、近づく速度(AF)が上がります。そのため、トレンドが続くほど、ドットは価格に近づき、反転しやすくなります。
価格がドットに触れたとき(上昇なら、安値がドットを下回ったとき)、次のとおり、転換します。
新しいSAR = それまでのEP(上昇なら、それまでの最高値)
AF = 初期値(0.02)に戻る
EP = 新しいトレンドの、最初の極値
一般的な設定は、AFの初期値0.02、増加幅0.02、上限0.20です(ソフトによって、異なる場合があります)。
計算例:上昇トレンドのSARを、手計算する
起点のSARを、150.00円(直近の安値)、EP = 150.40円(直近の最高値)、AF = 0.02とします。各足の高値・安値は、次のとおりです(例の数値です)。
1本目 SAR = 150.00 + 0.02 × (150.40 − 150.00) = 150.008円
→ 高値150.55円で、EPを更新(150.55円)。AF = 0.04
2本目 SAR = 150.008 + 0.04 × (150.55 − 150.008) ≒ 150.030円
→ 高値150.60円で、EPを更新(150.60円)。AF = 0.06
3本目 SAR = 150.030 + 0.06 × (150.60 − 150.030) ≒ 150.064円
→ 高値150.58円で、EPは更新されない。AF = 0.06のまま
4本目 SAR = 150.064 + 0.06 × (150.60 − 150.064) ≒ 150.096円
→ 高値150.75円で、EPを更新(150.75円)。AF = 0.08
5本目 SAR = 150.096 + 0.08 × (150.75 − 150.096) ≒ 150.148円
→ EPの更新なし。AF = 0.08のまま
6本目 SAR = 150.148 + 0.08 × (150.75 − 150.148) ≒ 150.197円
| 足 | 高値 | 安値 | その足のSAR | EP | AF |
|---|---|---|---|---|---|
| 1本目 | 150.55 | 150.25 | 150.008 | 150.55 | 0.04 |
| 2本目 | 150.60 | 150.30 | 150.030 | 150.60 | 0.06 |
| 3本目 | 150.58 | 150.35 | 150.064 | 150.60 | 0.06 |
| 4本目 | 150.75 | 150.40 | 150.096 | 150.75 | 0.08 |
| 5本目 | 150.70 | 150.45 | 150.148 | 150.75 | 0.08 |
| 6本目 | 150.55 | 150.15 | 150.197 | — | — |
6本目は、安値(150.15円)が、その足のSAR(150.197円)を下回っています。これが「価格がドットに触れた」状態で、トレンドが転換します。
7本目の新しいSAR = それまでのEP = 150.75円(下降トレンドの、ドットは価格の上)
AF = 0.02に戻る
EP = 6本目の安値 = 150.15円
ドットが、価格の下から、上に移ったことで、「上昇トレンドが終わった可能性」と、判断します。なお、ワイルダーの方法では、ドットが、直前2本の安値(下降なら、高値)を超えないよう、調整する規則も、あります。上の例では、この調整は、働いていません。
パラボリックSARが示すこと
ドットが価格の下 = 上昇トレンドの途中
ドットが価格の上 = 下降トレンドの途中
ドットが上下入れ替わる = トレンドが転換した可能性
ドットと価格の距離 = 反転するまでの余裕(距離が近いほど、反転しやすい)
SARは、「トレンドが続いている間は、損切りの位置を、少しずつ価格に近づけていく」という、考え方を、自動的に表したものとも言えます。
他の指標との違い
| パラボリックSAR | 移動平均線 | スーパートレンド | |
|---|---|---|---|
| 表示 | ドット(点) | 線 | 線 |
| 主な用途 | 損切り・転換の目安 | 方向の確認 | 方向と、損切りの目安 |
| 転換の頻度 | 多い(特にレンジ) | 少なめ | 少なめ |
| トレンドとの距離 | 進むほど、近づく | 一定の遅れ | ATRで決まる |
移動平均線(SMA)、スーパートレンドについては、別の記事で解説しています。
使い方
1. トレンドの方向を確認する
ドットが価格の下なら、買い目線、上なら、売り目線、という、方向の確認に使います。
2. 損切り・決済の目安にする(トレイリングストップ)
買いのポジションを持っているとき、ドットの位置を、損切りの位置にします。ドットは、トレンドが続くほど、価格に近づくため、損切りの位置が、自動的に引き上がります。価格がドットに触れたら、決済します。
計算例:転換後の買いと、ドットを使った損切り
ドットが価格の上から、下に移り(上昇への転換)、その足の終値が150.60円、新しいSARが150.30円だったとします。直近高値は151.20円です。損切りはSAR(150.30円)、利益確定は、直近高値(151.20円)とします。
転換が確認された足の終値(150.60円)で買う場合
エントリー 150.60円、損切り 150.30円、利確 151.20円
リスク = 150.60 − 150.30 = 0.30円(30pips)
リワード = 151.20 − 150.60 = 0.60円(60pips)
リスクリワード比 = 60 ÷ 30 = 2.0
転換後、150.45円まで押したところで、指値で買う場合
エントリー 150.45円、損切り 150.30円、利確 151.20円
リスク = 150.45 − 150.30 = 0.15円(15pips)
リワード = 151.20 − 150.45 = 0.75円(75pips)
リスクリワード比 = 75 ÷ 15 = 5.0
押しを待つほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、押さずに上がると、エントリーできません。また、押しが深くなってSARに触れると、損切りになります。転換の確認後に入る場合は、エントリーできないリスクは、ありませんが、転換直後に、また元に戻る(ダマシ)ことも、あります。SARは、足が進むごとに動くため、損切りの位置は、見直す必要があります。
3. 他の指標と組み合わせる
パラボリックSARは、単独では、ダマシが多いため、移動平均線の傾きや、一目均衡表の雲など、トレンドを確認する指標と、組み合わせることが、多いです。移動平均線の傾きについては、別の記事で解説しています。
注意点
1. レンジでは、転換が頻発する
価格が上下を繰り返すレンジでは、ドットが、何度も上下に入れ替わります。図の右側が、その例です。転換のたびに売買すると、小さな損失が重なります。
たとえば、レンジで、転換ごとに平均15pipsの損失が、6回続くと、合計90pipsの損失です。その後のトレンドで、1回の利益が110pipsなら、合計は+20pips、70pipsなら、合計は−20pipsです。この数字は、あくまで例ですが、レンジの損失を、トレンドの利益で取り返せるかは、状況によって変わります。相場がトレンドか、レンジかを、まず確認しましょう。環境認識については、別の記事で解説しています。
2. 転換のサインは、遅い
価格がドットに触れたときには、すでに、価格が大きく戻っています。天井や底の予測には、向いていません。
3. 利益確定の位置は、示さない
SARは、「損切り・転換」の目安で、「どこまで上がるか」は、示しません。利益確定の目標は、別に決める必要があります。
4. 設定によって、見え方が変わる
AFの初期値・増加幅・上限を変えると、ドットの位置も変わります。他人のチャートと、そのまま比べないようにしましょう。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、一気にドットに触れて転換することが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、ドットに触れたように見えても、確定までに戻ることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
ドットが転換するたびに、売買する
レンジでは、ダマシが続き、損失が重なります。トレンドがあるかを、先に確認しましょう。
ドットを、反転の予測として使う
SARは、「転換した」ことを、遅れて知らせるものです。「ここで反転する」を、予測するものでは、ありません。
利益確定を、ドットの転換だけに任せる
ドットが転換するまで待つと、利益が、大きく減ることが、あります。目標の価格を、別に決めておくことも、検討しましょう。
設定を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、設定を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
**「SARの転換で売買すれば勝てる」**と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- パラボリックSARは、価格の下(上昇)または上(下降)に、ドットを表示して、トレンドの方向と、転換の目安を示す指標。ワイルダー氏が考案した
- SAR(次)= 今のSAR + AF × (EP − 今のSAR)。AFは、初期値0.02、EPを更新するたびに0.02増え、上限は0.20
- 価格がドットに触れると転換し、新しいSARは、それまでのEPになる。AFは、初期値に戻る
- トレンドの方向の確認と、損切り(トレイリングストップ)の目安に使う。指値のほうがリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- レンジでは、転換が頻発し、小さな損失が重なる。利益確定の位置は、示さない
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
