移動平均線(SMA)とは
移動平均線とは、直近のN本分の終値の平均を、足ごとに計算して、線でつないだものです。価格の細かい上下をならして、全体の流れ(トレンド)を見やすくするために使われます。テクニカル分析で、最も広く使われている指標の1つです。
移動平均線には、計算方法の違いでいくつかの種類があります。その中で、最も基本的なものが「単純移動平均線(SMA:Simple Moving Average)」です。単純とは、N本分の終値を、すべて同じ重さで平均するという意味です。指数平滑移動平均線(EMA)など、他の種類については、別の記事で解説しています。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Simple Moving Average(SMA) |
| 計算に使う値 | 終値(設定で、他の価格に変えられる) |
| 期間 | 平均する足の本数(5、25、75、200など) |
| 表示 | メインチャート上に、価格と重ねて表示 |
計算方法
SMAは、直近N本の終値を足して、Nで割るだけです。
SMA = 直近N本の終値の合計 ÷ N
計算例:5本のSMA
1時間足の終値が、次のとおりだったとします。
| 足 | 終値 |
|---|---|
| 1本目 | 150.10円 |
| 2本目 | 150.30円 |
| 3本目 | 150.20円 |
| 4本目 | 150.50円 |
| 5本目 | 150.60円 |
5本目時点の5SMA
= (150.10 + 150.30 + 150.20 + 150.50 + 150.60) ÷ 5
= 751.70 ÷ 5
= 150.34円
次の6本目の終値が150.80円だった場合、1本目を外して、6本目を加えます。
6本目時点の5SMA
= (150.30 + 150.20 + 150.50 + 150.60 + 150.80) ÷ 5
= 752.40 ÷ 5
= 150.48円
変化 = 150.48 − 150.34 = 0.14円(14pips)
終値が150.60円から150.80円へ、20pips上がっただけで、5SMAは14pips動きました。1本目の150.10円が外れて、150.80円が入るため、入れ替わった2つの値の差(70pips)を、5で割った分(14pips)だけ動くためです。このように、「古い値が外れる」ことで、SMAが動くのが、SMAの特徴です。
移動平均線が示すこと
| 見るポイント | 内容 |
|---|---|
| 傾き | 右上がりなら上昇、右下がりなら下降、横ばいならレンジの目安 |
| 価格との位置 | 価格がSMAの上なら買い優勢、下なら売り優勢の目安 |
| サポート・レジスタンス | SMAが、押し目や戻りの目安として意識されることがある |
| 平均コスト | N本の間に取引した人たちの、平均的な価格とも見られる |
特に、価格が下がってきて、SMAの付近で止まると、「平均的な買い手の損益が、ゼロ付近になるため、買いが入りやすい」という見方があります。ただし、必ず止まるわけではありません。サポート・レジスタンスについては、別の記事で解説しています。
期間の選び方
期間が短いほど、価格に近く、敏感に動きます。期間が長いほど、なめらかで、遅れて動きます。
| 期間 | 特徴 | 主な見方 |
|---|---|---|
| 5・10 | 価格に近く、敏感 | 短期の勢い |
| 20・25 | 中期の流れ | 押し目・戻りの目安 |
| 50・75 | やや長期の流れ | トレンドの方向 |
| 100・200 | 長期の流れ | 大きな方向感。多くの人が見る |
日本では、25・75・200といった期間がよく使われます。多くの人が同じ期間を見ているほど、その線が意識されやすいと考えられます。ただし、どの期間が最適かは、通貨ペアや時間足、相場の状況で変わります。決まった正解はありません。
計算例:遅れの大きさ
N本のSMAは、価格に対して、おおよそ(N − 1) ÷ 2本分、遅れると言われます。
5SMA :(5 − 1) ÷ 2 = 2本分
25SMA :(25 − 1) ÷ 2 = 12本分
75SMA :(75 − 1) ÷ 2 = 37本分
200SMA :(200 − 1) ÷ 2 ≒ 100本分
1時間足の25SMAは、価格より12時間分ほど遅れて動くことになります。この遅れが、SMAの弱点であり、「ダマシが少ない」という長所の裏返しでもあります。
他の種類との違い
| SMA | EMA | WMA | |
|---|---|---|---|
| 重みづけ | すべて同じ | 新しい値ほど大きい | 新しい値ほど大きい(一次関数的) |
| 動き | なめらかで、遅れる | 敏感 | やや敏感 |
| 特徴 | 計算が単純で、最も標準的 | 直近の値動きに反応しやすい | 直近を重視する |
| 古い値が外れる影響 | あり(急に動くことがある) | 小さい | あり(小さめ) |
どれが良いかは、使い方次第です。SMAは、多くの人が見ているため、意識されやすいと考えられます。EMA、WMAについては、別の記事で解説しています。
使い方
1. 傾きで、トレンドの有無を見る
SMAが右上がり、または右下がりで、一定の角度がある場合は、トレンドが出ていると見ます。ほぼ横ばいの場合は、レンジの可能性があります。
傾きの大きさを、数値で見ることもできます。
25SMA:現在 150.40円、5本前 150.28円
傾き = (150.40 − 150.28) ÷ 5 = 0.024円(2.4pips)/本
この数値が、普段より大きいか小さいかで、トレンドの強さの目安にします。どの程度なら「トレンド」とするかは、自分で決める必要があります。トレンドについては、別の記事で解説しています。
2. 押し目・戻りの目安にする
上昇トレンドで、価格がSMAまで下がって、反発する場面を、押し目として見ます。押し目(プルバック)については、別の記事で解説しています。
計算例:押し目買い
上昇トレンド(25SMAが右上がり、価格はSMAの上)で、価格が25SMA(150.40円)まで下がり、安値150.38円をつけて反発したとします。前回高値は151.10円です。損切りは、SMAの下(150.30円)、利益確定は前回高値の少し手前(151.10円)とします。SMAを明確に割ると、「SMAが支える」という前提が崩れるためです。
反発の陽線が確定した終値(150.60円)で買う場合
エントリー 150.60円、損切り 150.30円、利確 151.10円
リスク = 150.60 − 150.30 = 0.30円(30pips)
リワード = 151.10 − 150.60 = 0.50円(50pips)
リスクリワード比 = 50 ÷ 30 ≒ 1.7
SMA付近(150.42円)に指値で買う場合
エントリー 150.42円、損切り 150.30円、利確 151.10円
リスク = 150.42 − 150.30 = 0.12円(12pips)
リワード = 151.10 − 150.42 = 0.68円(68pips)
リスクリワード比 = 68 ÷ 12 ≒ 5.7
指値のほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、SMAの手前で反発すると、エントリーできません。また、損切り幅が小さく、価格が少し下がっただけで損切りになりやすい点にも注意します。反発を確認してから入るほうが、勝率は高くなりやすい一方、リスクリワード比は下がります。
3. 長い期間のSMAを、方向の確認に使う
短い時間足で取引するときでも、上位足の長い期間のSMA(日足の200SMAなど)で、大きな方向を確認します。上位足の見方については、別の記事で解説しています。
注意点
1. レンジでは、ダマシが増える
SMAが横ばいのときは、価格がSMAを何度も上下に交差します。交差のたびに売買すると、損失が重なります。SMAの傾きを、まず確認しましょう。
2. 遅れがある
SMAは、過去の平均のため、転換を後から知らせることになります。天井や底の予測には、向いていません。
3. 古い値が外れると、急に動くことがある
N本前に、大きな値動きがあった場合、それが外れた瞬間に、SMAが急に動くことがあります。価格が動いていないのに、SMAだけが動いて見える場合は、N本前の足を確認しましょう。
4. 期間に、魔法の数字はない
「この期間なら勝てる」というものは、ありません。過去のチャートで、通貨ペア・時間足ごとに確認することが大切です。
5. 時間足で、意味が変わる
短い時間足のSMAは、ノイズが多いです。長い時間足のSMAのほうが、意識されやすいと考えられます。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足の終値は、確定するまで変わります。SMAの値も、それにつれて動くため、確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
SMAにタッチしたら、必ず反発すると考える
SMAは、目安です。割り込んで、そのまま下がることも、よくあります。
レンジでも、SMAの交差をサインにする
傾きのない相場では、交差は、ほとんど意味を持ちません。
期間を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
単独で、売買を決める
SMAは、トレンドの方向を見る道具です。エントリーの位置、損切りは、他の根拠と組み合わせて決めます。
検証せずに、使う
「25SMAで反発する」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・相場の状況で変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- 移動平均線(SMA)は、直近N本の終値の平均を結んだ線。計算は、「N本の終値の合計 ÷ N」
- 傾きでトレンドの有無と方向、価格との位置で優勢な側、押し目・戻りの目安として見る
- 期間が短いほど敏感、長いほどなめらかで遅れる。N本のSMAは、おおよそ(N − 1) ÷ 2本分、遅れる
- 日本では、25・75・200がよく使われる。どの期間が最適かは、状況で変わる
- レンジでは、価格との交差が増え、ダマシが多くなる
- 押し目買いでは、SMA付近の指値でリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
