フィボナッチ・ファン・アーク・タイムゾーンとは
フィボナッチ・ファン(Fibonacci Fan)・アーク(Fibonacci Arcs)・タイムゾーン(Fibonacci Time Zones)とは、フィボナッチ数列から作られる比率を使った、チャート分析の道具の仲間です。リトレースメント(押し・戻りの水準)や、エクスパンション(目標値)が、「価格」の水準を見るのに対して、これらは、「斜めの線」「弧(円)」「時間(本数)」を使う点が、特徴です。フィボナッチ数列と、比率の成り立ちについては、別の記事で解説しています。
| 道具 | 見るもの | 描き方の概要 |
|---|---|---|
| ファン | 傾き(斜めの線) | 起点から、扇状に、傾きの違う線を引く |
| アーク | 距離(円・弧) | 終点を中心に、弧を引く |
| タイムゾーン | 時間(足の本数) | 基準の足から、フィボナッチ数の本数ごとに、縦線を引く |

図は、3つの道具を、並べた例です。この図は、説明のために作った例で、価格が、必ず、線や弧、縦線の近くで、反応するわけでは、ありません。
ファン
ファンは、波の起点(A)から、終点(B)に向かう線を、基準に、終点の時間で、値幅の38.2%・50%・61.8%の位置を通る線を、起点から引くものです。線が、扇(ファン)のように、広がります。上昇の後の押しで、これらの線が、サポート(支え)になりやすい、と考えられています(下落の後の戻りでは、レジスタンスとして、使います)。
線の価格 = Aの価格 +(Bの価格 − Aの価格)× 比率 ×(経過本数 ÷ AからBまでの本数)
手計算の例
A=149.00円(0本目)、B=150.00円(40本目)とします(例の数値です)。AからBまでの値幅は、1.00円(100pips)、本数は、40本です。
60本目(Bから、20本後)の線の価格
38.2%の線 = 149.00 + 1.00 × 0.382 × (60 ÷ 40) = 149.573円
50.0%の線 = 149.00 + 1.00 × 0.500 × (60 ÷ 40) = 149.750円
61.8%の線 = 149.00 + 1.00 × 0.618 × (60 ÷ 40) = 149.927円
56本目の線の価格は、次のとおりです。
56本目: 38.2% = 149.535円、50.0% = 149.700円、61.8% = 149.865円
| 本数 | 38.2%の線 | 50.0%の線 | 61.8%の線 |
|---|---|---|---|
| 56本目 | 149.535円 | 149.700円 | 149.865円 |
| 60本目 | 149.573円 | 149.750円 | 149.927円 |
同じ線でも、時間が進むと、価格が変わる(斜めの線のため)点が、水平線(リトレースメント)と、違うところです。図では、押しが、61.8%の線を、割り込み、60本目付近で、50%の線(149.75円)に、触れて、反発しています。
アーク
アークは、終点(B)を中心に、AB間の距離に、比率(38.2%・50%・61.8%)をかけた半径で、弧(円の一部)を引くものです。価格と時間の、両方を、考慮した「距離」で、押し・戻りの目安を、見ると、説明されます。
半径 = AB間の距離 × 比率
AB間の距離 = √((時間方向の距離)² + (価格方向の距離)²)
手計算の例と、画面の縮尺による違い
AB間(40本、100pips)の距離は、チャートの、画面上の縮尺で、決まります。たとえば、1本=5ピクセルとし、価格方向の縮尺が、2通りあるとします(例の数値です)。
縮尺1(100pips = 100ピクセル):
AB間の距離 = √(200² + 100²) ≒ 223.6ピクセル
半径 38.2% ≒ 85.4、50.0% ≒ 111.8、61.8% ≒ 138.2 ピクセル
縮尺2(100pips = 50ピクセル):
AB間の距離 = √(200² + 50²) ≒ 206.2ピクセル
半径 38.2% ≒ 78.8、50.0% ≒ 103.1、61.8% ≒ 127.4 ピクセル
| 縮尺 | AB間の距離 | 38.2%の半径 | 50.0%の半径 | 61.8%の半径 |
|---|---|---|---|---|
| 縮尺1 | 223.6 | 85.4 | 111.8 | 138.2 |
| 縮尺2 | 206.2 | 78.8 | 103.1 | 127.4 |
同じ価格・同じ本数でも、チャートの縮尺(拡大・縮小)によって、弧の大きさや、価格との交わる位置が、変わります。これが、アークの、大きな特徴であり、注意点です。
タイムゾーン
タイムゾーンは、基準の足(重要な、高値・安値など)から、フィボナッチ数(1・2・3・5・8・13・21・34・55・89…)の本数ごとに、縦線を引くものです。「転換点が、これらの本数の近くで、起きやすい」と、考える使い方です。時間の分析については、別の記事で解説しています。
手計算の例
1時間足で、基準の足が、9:00の安値だったとします(例です。週末をまたがない場合)。
+1本 → 10:00
+2本 → 11:00
+3本 → 12:00
+5本 → 14:00
+8本 → 17:00
+13本 → 22:00
+21本 → 翌日 6:00
+34本 → 翌日 19:00
+55本 → 翌々日 16:00
図では、基準の足から、9本目の高値、21本目の高値、34本目の高値が、縦線(8・21・34本目)の近くで、起きています。一方、15本目・27本目・40本目付近の転換は、縦線と、一致していません。一部は、近く、一部は、一致しないため、「必ず、転換する」とは、言えません。
FXでは、週末(土日)は、足が、できないため、本数で、数えると、実際の時間と、ずれることが、あります。ソフトが、週末の足を、どう扱うかも、確認しましょう。
他の分析との違い
| ファン | アーク | タイムゾーン | リトレースメント | |
|---|---|---|---|---|
| 見るもの | 傾き | 距離(価格と時間) | 時間(本数) | 価格 |
| 線の形 | 斜め | 弧 | 縦線 | 水平線 |
| 時間とともに | 価格が変わる | 画面の縮尺で変わる | 本数で決まる | 変わらない |
| 主観の入りやすさ | A・Bの選び方で変わる | A・Bと、縮尺で変わる | 基準の足の選び方で変わる | 起点・終点の選び方で変わる |
ファンは、トレンドラインに、近い使い方で、アークは、縮尺に、左右されやすく、タイムゾーンは、時間だけを、見るため、単独では、使いにくいと、言われることが、多いです。フィボナッチ・リトレースメントについては、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. 道具を、使う目的を、決める
「押しの、支えの線」を探す(ファン)、「押し・戻りの、距離」を探す(アーク)、「転換の、時間」を探す(タイムゾーン)の、どれを、見たいのかを、決めます。
2. 起点・終点・基準の足を、決める
直近の、大きな波の、起点(A)と、終点(B)、基準の足を、決めます。どの高値・安値を、使うかで、線の位置が、大きく、変わります。
3. 他の根拠と、重なる場所を、探す
水平線、移動平均線、フィボナッチ・リトレースメントの水準などと、重なる場所は、意識されやすいと、考えられています。1つの線だけで、判断しないようにしましょう。
4. 反転のサインを、確認する
線や弧に、触れただけでは、エントリーせず、反転のサイン(ローソク足の形など)を、確認するのが、一般的です。
計算例:ファンの50%の線で、買う場合(上昇後の押し)
図の例(A=149.00円、B=150.00円)で、60本目に、50%の線(149.75円)に、触れた場合を、考えます。損切りは、38.2%の線(149.573円)の少し下の149.55円、利益確定は、Bの高値の少し上の150.30円とします(例の数値です)。
50%の線(149.75円)に、指値で買う場合
エントリー 149.75円、損切り 149.55円、利確 150.30円
リスク = 149.75 − 149.55 = 0.20円(20pips)
リワード = 150.30 − 149.75 = 0.55円(55pips)
リスクリワード比 = 55 ÷ 20 ≒ 2.8
反発を確認した足の終値(149.90円)で買う場合
エントリー 149.90円、損切り 149.55円、利確 150.30円
リスク = 149.90 − 149.55 = 0.35円(35pips)
リワード = 150.30 − 149.90 = 0.40円(40pips)
リスクリワード比 = 40 ÷ 35 ≒ 1.1
Bの高値(150.00円)を、上抜けた足の終値(150.02円)で買う場合
エントリー 150.02円、損切り 149.55円、利確 150.30円
リスク = 150.02 − 149.55 = 0.47円(47pips)
リワード = 150.30 − 150.02 = 0.28円(28pips)
リスクリワード比 = 28 ÷ 47 ≒ 0.6
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 |
|---|---|---|---|---|
| 指値(50%の線) | 149.75円 | 20pips | 55pips | 2.8 |
| 反発を確認(足の確定) | 149.90円 | 35pips | 40pips | 1.1 |
| Bの高値を上抜けた(継続の確認) | 150.02円 | 47pips | 28pips | 0.6 |
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。指値は、価格が、届かずに、反発して、エントリーできないことも、あります。また、ファンの線は、斜めのため、149.75円は、60本目の価格で、時間が進むと、線の価格が、変わります。Bの高値の上抜けまで待つと、目標までの値幅が、小さくなるため、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。
注意点
1. 起点・終点の選び方で、線が、大きく、変わる
「どの高値・安値を、使うか」は、人によって、違います。特に、ファンは、起点を、少し、ずらすだけで、線の傾きが、変わります。
2. アークは、チャートの縮尺で、変わる
同じ価格・本数でも、画面の拡大・縮小で、弧の位置が、変わります。同じチャートを、別の縮尺で、見ると、「当たった」「外れた」の見え方が、変わります。
3. タイムゾーンは、一部が、当たったように、見えやすい
縦線が、1・2・3・5・8・13…と、ある程度、密にあるため、転換が、どれかの、近くで、起きたように、見えやすいです。図でも、一致しない転換が、あります。
4. 週末や、足の扱いで、ずれる
FXでは、土日は、足が、できないため、本数で数えると、実際の時間とずれます。ソフトの設定によっても、違います。
5. レンジ相場では、機能しにくい
方向感のない、レンジ相場では、A→Bの波が、はっきりせず、線・弧・縦線の、意味が、薄れます。
たとえば、線での買いが、損失20pipsで、8回続くと、合計−160pipsの損失です。その後の1回の利益が、200pipsなら、合計は+40pips、120pipsなら、合計は−40pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって、変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
6. 足が確定するまで、分からない
ヒゲで、一時的に、線を、割り込んでも、足が確定したときには、戻っていることが、あります。終値で、確認するようにしましょう。確定するまで、分からないことを、忘れないようにしましょう。
初心者が間違えやすいポイント
「線に触れたら、必ず、反転する」と考える
線・弧・縦線は、「反応しやすいかもしれない、目安」で、必ず、反転する場所では、ありません。反転しない場合の、損切りを、先に、決めておくことが、必要です。
線を、後から、当てはめる
反転した後に、「この線で、止まった」と、線を引くのは、後付けです。先に、線を、決めるようにしましょう。
水平線と、斜めの線を、同じように、見る
ファンの線は、時間とともに、価格が、変わります。「この価格で、止まる」と、決めつけず、その時点の、線の価格を、確認しましょう。
タイムゾーンで、転換の「日」が、決まると考える
フィボナッチ数の本数の、近くで、転換が、起きやすい、という、考え方は、あっても、必ず、そうなるわけでは、ありません。
検証せずに、使う
「フィボナッチのファン・アーク・タイムゾーンで、相場が、読める」と聞いても、実際の成績は、通貨ペア・時間足・ルールの組み合わせで、変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- ファン・アーク・タイムゾーンは、フィボナッチ比率を使った、「斜めの線」「弧」「時間」の道具。価格を見るリトレースメント・エクスパンションとは、見るものが、違う
- ファンは、Aから、38.2%・50%・61.8%の線を引く。時間とともに、線の価格が変わる。アークは、Bを中心に、AB間の距離×比率の半径で、弧を引く。画面の縮尺で、変わる。タイムゾーンは、基準の足から、1・2・3・5・8・13・21・34・55本目に、縦線を引く
- 例では、ファンの線は、60本目で、38.2%=149.573円、50.0%=149.750円、61.8%=149.927円。アークは、縮尺1と縮尺2で、61.8%の半径が、138.2と127.4ピクセルと、変わる
- 例では、指値(2.8)、反発の確認(1.1)、Bの高値の上抜け(0.6)の順に、リスクリワード比が下がる。指値は、エントリーできないこともある
- 起点・終点の選び方で、線が変わる。タイムゾーンは、一部が、当たったように、見えやすい。レンジ相場では、機能しにくい
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。チャート分析の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
