DEMA・TEMAとは
DEMA(二重指数移動平均線:Double Exponential Moving Average)とTEMA(三重指数移動平均線:Triple Exponential Moving Average)とは、指数平滑移動平均線(EMA)を、複数回組み合わせて、遅れを小さくした移動平均線です。パトリック・マロイ氏が考案しました。名前は「二重」「三重」ですが、EMAを2回、3回重ねて平均した値を、うまく足し引きして、遅れを打ち消しているのが、仕組みです。EMAについては、別の記事で解説しています。
EMAは、価格の動きに遅れてついてくるため、転換を知るのが遅い弱点があります。DEMAとTEMAは、その遅れを減らすための線です。

| DEMA | TEMA | |
|---|---|---|
| 英語名 | Double Exponential Moving Average | Triple Exponential Moving Average |
| 考案者 | パトリック・マロイ氏 | パトリック・マロイ氏 |
| 遅れ | 小さい | さらに小さい |
| 行き過ぎ | あり | より大きい |
計算方法
まず、EMAを「重ねて」計算します。
EMA1 = 価格のEMA(N)
EMA2 = EMA1のEMA(N) (EMAを、もう1回かける)
EMA3 = EMA2のEMA(N) (EMAを、さらにもう1回かける)
EMAを重ねるたびに、遅れが大きくなります。この「遅れ」を、次の式で打ち消します。
DEMA = 2 × EMA1 − EMA2
TEMA = 3 × EMA1 − 3 × EMA2 + EMA3
EMA1とEMA2の遅れの差を、そのまま足して(2倍して引く)、遅れを取り除く考え方です。
計算例:期間3のDEMA・TEMA
手計算しやすいように、期間N=3(平滑化係数 α = 2 ÷ (3+1) = 0.5)で、計算します。EMAの最初の値は、1本目の終値としました(簡単のためで、ツールによって初期値の決め方が違います)。
| 足 | 終値 |
|---|---|
| 1本目 | 150.00円 |
| 2本目 | 150.20円 |
| 3本目 | 150.40円 |
| 4本目 | 150.60円 |
| 5本目 | 150.40円 |
| 6本目 | 150.20円 |
【EMA1】前のEMA1 + 0.5 × (終値 − 前のEMA1)
1本目 150.0000 → 2本目 150.1000 → 3本目 150.2500
→ 4本目 150.4250 → 5本目 150.4125 → 6本目 150.3063
【EMA2】前のEMA2 + 0.5 × (EMA1 − 前のEMA2)
1本目 150.0000 → 2本目 150.0500 → 3本目 150.1500
→ 4本目 150.2875 → 5本目 150.3500 → 6本目 150.3281
【EMA3】前のEMA3 + 0.5 × (EMA2 − 前のEMA3)
1本目 150.0000 → 2本目 150.0250 → 3本目 150.0875
→ 4本目 150.1875 → 5本目 150.2688 → 6本目 150.2984
4本目(終値150.60円)の値は、次のとおりです。
DEMA = 2 × 150.4250 − 150.2875 = 150.5625円
TEMA = 3 × 150.4250 − 3 × 150.2875 + 150.1875
= 451.2750 − 450.8625 + 150.1875
= 150.6000円
4本目の終値150.60円に対して、EMAは150.425円(17.5pips下)、DEMAは150.5625円(3.75pips下)、TEMAは150.600円(差なし)です。EMAより、DEMAが、DEMAより、TEMAが、価格に近いことが分かります。
全体の値は、次のとおりです。
| 足 | 終値 | EMA | DEMA | TEMA |
|---|---|---|---|---|
| 1本目 | 150.00円 | 150.000円 | 150.000円 | 150.000円 |
| 2本目 | 150.20円 | 150.100円 | 150.150円 | 150.175円 |
| 3本目 | 150.40円 | 150.250円 | 150.350円 | 150.388円 |
| 4本目 | 150.60円 | 150.425円 | 150.563円 | 150.600円 |
| 5本目 | 150.40円 | 150.413円 | 150.475円 | 150.456円 |
| 6本目 | 150.20円 | 150.306円 | 150.284円 | 150.233円 |
5本目は、終値が150.60円から150.40円へ下がった直後です。このとき、EMAは150.413円(終値との差1.3pips)、DEMAは150.475円(同7.5pips)、TEMAは150.456円(同5.6pips)で、DEMAとTEMAのほうが、終値から離れています。転換の直後には、行き過ぎで、EMAのほうが近くなることが、分かります。
遅れの大きさ
一定の傾きで動き続ける価格に対して、EMAの遅れを L とすると、次のとおりです。
EMA1 の遅れ = L
EMA2 の遅れ = 2L
EMA3 の遅れ = 3L
DEMA の遅れ = 2 × L − 2L = 0
TEMA の遅れ = 3 × L − 3 × 2L + 3L = 0
理論上は、一定の傾きで動き続ける間、DEMAもTEMAも、遅れがゼロになります。期間15なら、EMAの遅れは7本分ですが、DEMA・TEMAは、ほぼゼロです。図でも、上昇中は、価格とほぼ重なっています。
ただし、これは「一定の傾きで動き続ける」場合の話です。実際の価格は、傾きが変わり続けるため、遅れがゼロになるわけではありません。
行き過ぎ(オーバーシュート)
遅れを打ち消すために、先読みのような働きをするので、価格が向きを変えたとき、行き過ぎます。TEMAのほうが、DEMAより、行き過ぎが大きいです。
| EMA | DEMA | TEMA | |
|---|---|---|---|
| 一定の傾きでの遅れ | あり | ほぼなし | ほぼなし |
| 転換への反応 | 遅い | 速い | 最も速い |
| 行き過ぎ | なし | あり | 大きい |
| ダマシ | やや多い | 多い | 最も多い |
図の右側で、価格が下落に転じたあと、DEMAとTEMAが、価格より上まで行き過ぎてから、下がり始めています。TEMAの行き過ぎが、最も大きいです。HMAも、同じように遅れを減らす代わりに行き過ぎが出る線です。HMAについては、別の記事で解説しています。
移動平均線が示すこと
| 見るポイント | 内容 |
|---|---|
| 傾き | 右上がりなら上昇、右下がりなら下降の目安。向きの変化が、早い |
| 価格との位置 | 価格に近いため、交差は頻繁に起こる |
| 価格との距離 | トレンド中は近い。転換の直後は、行き過ぎで離れることがある |
使い方
決済の目安(トレーリング)にする
上昇トレンドで、TEMAを割ったら決済するという使い方があります。EMAより早く反応するため、早めに利益を確保できます。一方、浅い押しでも、早く決済してしまうことがあります。
計算例:EMAとTEMAの決済の違い
150.60円で買い、損切りは150.35円(リスク25pips)とします。以下は、仕組みを理解するための、仮の値です。
ケースA:151.20円まで上昇したあと、そのまま下落に転じた場合
| 決済方法 | 決済位置 | 利益 | 当初のリスクとの比 |
|---|---|---|---|
| TEMAを割ったら決済 | 151.02円 | +42pips | 1.7 |
| EMAを割ったら決済 | 150.88円 | +28pips | 1.1 |
TEMA:151.02 − 150.60 = 0.42円(42pips)、42 ÷ 25 ≒ 1.7
EMA :150.88 − 150.60 = 0.28円(28pips)、28 ÷ 25 ≒ 1.1
ケースB:151.00円付近で、いったん浅く押したが、そのまま151.50円まで上昇を続けた場合
| 決済方法 | 決済位置 | 利益 | 当初のリスクとの比 |
|---|---|---|---|
| TEMAを割ったら決済 | 151.00円(押しで割った) | +40pips | 1.6 |
| EMAを割ったら決済 | 151.40円(上昇後に割った) | +80pips | 3.2 |
TEMA:151.00 − 150.60 = 0.40円(40pips)、40 ÷ 25 = 1.6
EMA :151.40 − 150.60 = 0.80円(80pips)、80 ÷ 25 = 3.2
ケースAでは、TEMAのほうが、早く決済でき、利益が大きくなります。ケースBでは、浅い押しで早く決済してしまい、その後の上昇を取り逃がします(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。どちらが良いかは、相場の形で変わります。過去のチャートで、確認しましょう。
上位足の方向確認に使う
DEMAやTEMAは、価格に近く動くため、方向の確認には、傾きを見ます。傾きが短い間隔で変わる場合は、トレンドがないと考えられます。
注意点
1. 行き過ぎがある
価格が急に向きを変えたとき、DEMA・TEMAは行き過ぎます。DEMA・TEMAの天井・底を、そのまま、価格の天井・底と考えないようにしましょう。
2. レンジでは、ダマシが多い
価格が上下を繰り返すと、DEMA・TEMAも細かく向きを変えます。レンジでは、向きの変化の多くが、ダマシになります。
3. 最初の値に、影響が出る
EMAを重ねるため、チャートの最初の部分では、数値が安定しません。表示する本数が少ないと、値がずれることがあります。十分な本数を表示しましょう。
4. ツールによって、数値が少しずれる
初期値の決め方が、ツールによって違うため、数値が少しずれることがあります。普段使うツールで、確認しましょう。
5. 期間に、魔法の数字はない
「この期間なら勝てる」というものは、ありません。過去のチャートで、通貨ペア・時間足ごとに確認することが大切です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足の終値は、確定するまで変わります。DEMA・TEMAの値も、それにつれて動くため、確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
DEMA・TEMAなら、遅れがなく、勝てると考える
遅れが小さいのは、一定の傾きで動き続けるときだけです。転換では行き過ぎ、ダマシも増えます。
TEMAは、DEMAより優れていると考える
TEMAは、遅れが小さい分、行き過ぎも大きいです。どちらが良いかは、使い方次第です。
価格との交差を、売買のサインにする
価格に近いため、交差は頻繁に起こります。交差のたびに売買すると、損失が重なります。
期間を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「TEMAは遅れが少ない」と聞いても、実際に利益につながるかは、通貨ペア・時間足・相場の状況で変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- DEMA・TEMAは、EMAを2回・3回重ねて、遅れを打ち消した移動平均線。DEMA = 2×EMA1 − EMA2、TEMA = 3×EMA1 − 3×EMA2 + EMA3
- 理論上、一定の傾きで動き続ける間は、遅れがゼロになる。実際の価格では、ゼロにならない
- 転換には素早く反応するが、行き過ぎ(オーバーシュート)があり、ダマシも多い。TEMAのほうが、行き過ぎが大きい
- 転換の直後は、EMAのほうが価格に近くなることもある
- 決済の目安にすると、早く利益を確保できるが、浅い押しで早く決済してしまうこともある
- レンジでは、向きの変化の多くがダマシになる
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
