ハル移動平均線(HMA)とは
ハル移動平均線(HMA:Hull Moving Average)とは、移動平均線の弱点である「遅れ」を、大きく減らすように工夫された移動平均線です。アラン・ハル氏が考案しました。加重移動平均線(WMA)を、3回組み合わせて計算することで、なめらかさを保ちながら、価格の動きに素早く追従します。
SMAやEMAは、トレンドの転換を知るのが遅いという弱点があります。HMAは、その遅れをほとんどなくすことを目指した線です。SMA、EMA、WMAについては、別の記事で解説しています。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Hull Moving Average(HMA) |
| 考案者 | アラン・ハル氏 |
| 計算に使う値 | 終値(設定で、他の価格に変えられる) |
| 期間 | 9、16、21、50など |
| 特徴 | 遅れが小さく、転換に素早く反応する。行き過ぎやすい |
MT4・MT5には標準では入っていません。TradingViewには標準で入っており、MT4・MT5では、カスタムインジケーターとして追加して使うことが多いです。
計算方法
HMAは、次の3つのステップで計算します。
ステップ1:短い期間のWMAを2倍し、長い期間のWMAを引く
差 = 2 × WMA(N÷2) − WMA(N)
ステップ2:その「差」を、期間 √N のWMAでなめらかにする
HMA = WMA(差, √N)
N÷2、√Nは、四捨五入して整数にします。
| 期間N | N÷2 | √N |
|---|---|---|
| 4 | 2 | 2 |
| 9 | 4〜5 | 3 |
| 16 | 8 | 4 |
| 25 | 12〜13 | 5 |
| 49 | 24〜25 | 7 |
ステップ1の「2 × 短いWMA − 長いWMA」は、遅れを打ち消す働きをします。短いWMAのほうが、価格に近く動くため、そのぶんを強調して、長いWMAの遅れを取り除く考え方です。ただし、行き過ぎが生じるため、ステップ2でなめらかにします。
計算例:4本のHMA
期間N=4で、計算します(N÷2 = 2、√N = 2)。次の終値を使います。
| 足 | 終値 |
|---|---|
| 1本目 | 150.90円 |
| 2本目 | 150.78円 |
| 3本目 | 150.66円 |
| 4本目 | 150.52円 |
| 5本目 | 150.40円 |
【4本目】
2WMA = (150.52 × 2 + 150.66 × 1) ÷ 3 = 150.5667
4WMA = (150.52×4 + 150.66×3 + 150.78×2 + 150.90×1) ÷ 10 = 150.6520
差 = 2 × 150.5667 − 150.6520 = 150.4813
【5本目】
2WMA = (150.40 × 2 + 150.52 × 1) ÷ 3 = 150.4400
4WMA = (150.40×4 + 150.52×3 + 150.66×2 + 150.78×1) ÷ 10 = 150.5260
差 = 2 × 150.4400 − 150.5260 = 150.3540
【5本目のHMA】
HMA = (150.3540 × 2 + 150.4813 × 1) ÷ 3
= 451.1893 ÷ 3
≒ 150.3964円(150.40円)
5本目の終値は150.40円で、HMA(4)は150.396円と、ほぼ同じです。同じ時点の4SMAは150.59円で、終値から19pips離れています。HMAは、価格にぴったり寄り添っていることが分かります。
遅れの大きさ
一定の傾きで動き続ける価格に対する、HMAの遅れは、おおよそ(√N − 2) ÷ 3本分です。
SMA :(N − 1) ÷ 2 本分
HMA :(√N − 2) ÷ 3 本分
N = 16 の場合
SMA = 15 ÷ 2 = 7.5本分
HMA = (4 − 2) ÷ 3 ≒ 0.7本分
N = 100 の場合
SMA = 99 ÷ 2 = 49.5本分
HMA = (10 − 2) ÷ 3 ≒ 2.7本分
期間が長くなっても、HMAの遅れは、ほとんど増えません。期間16なら、遅れは1本未満です。
| SMA | EMA | WMA | HMA | |
|---|---|---|---|---|
| 遅れ(期間16) | 7.5本 | 7.5本 | 5本 | 約0.7本 |
| 転換への反応 | 遅い | やや速い | 速い | 最も速い |
| 行き過ぎ(オーバーシュート) | なし | なし | ほぼなし | あり |
| ダマシ | 比較的少ない | やや多い | やや多い | 多い |
HMAの遅れが小さい理由は、「ステップ1で、価格を少し先取りする」ためです。その副作用で、価格が急に向きを変えると、HMAは行き過ぎて(オーバーシュート)から、戻ります。図の左側で、HMAが価格の底より下まで行ってから反転している部分が、これです。
計算例:価格への追従の差
下降から上昇に転じる場面で、4SMAと4HMAの値を、比べます。
| 足 | 終値 | 4SMA | 4HMA |
|---|---|---|---|
| 7本目 | 150.220円 | 150.360円 | 150.208円 |
| 8本目 | 150.180円 | 150.275円 | 150.160円 |
| 9本目 | 150.260円 | 150.240円 | 150.206円 |
| 10本目 | 150.380円 | 150.260円 | 150.340円 |
| 11本目 | 150.520円 | 150.335円 | 150.500円 |
【価格との差(11本目)】
4SMA:150.520 − 150.335 = 0.185円(18.5pips)
4HMA:150.520 − 150.500 = 0.020円(2.0pips)
【8本目のHMA】150.160円は、終値の最安値(150.180円)より下
→ 行き過ぎ(オーバーシュート)
11本目で、4HMAは価格との差が2pipsですが、4SMAは18.5pips離れています。また、8本目の4HMA(150.160円)は、期間中の最安値の終値(150.180円)を下回っており、行き過ぎが見られます。
移動平均線が示すこと
| 見るポイント | 内容 |
|---|---|
| 傾き | 右上がりなら上昇、右下がりなら下降の目安。向きの変化が、早い |
| 向きが変わる位置 | 価格の天井・底の近く |
| 価格との位置 | 価格に近いため、交差のサインにはなりにくい |
HMAは、価格に非常に近く動くため、「価格がHMAの上か下か」より、「HMAが上向きか下向きか」で、見ることが多いです。
使い方
傾きの変化を、トレンド転換の目安にする
HMAが、下向きから上向きに変わることを、下降から上昇への転換の目安にします。SMAより、早く向きが変わるため、早めに気づける可能性があります。
計算例:エントリーの早さによる違い
上の例で、4HMAが上向きに変わったのは9本目、4SMAが上向きに変わったのは10本目でした。損切りは、それぞれの平均線の底の5pips下、利益確定は、下落の起点の150.90円とします。平均線が再び下を向くと、前提が崩れるためです。
4HMAが上向きになった9本目の終値(150.26円)で買う場合
HMAの底 150.160円 → 損切り 150.11円(5pips下)
エントリー 150.26円、損切り 150.11円、利確 150.90円
リスク = 150.26 − 150.11 = 0.15円(15pips)
リワード = 150.90 − 150.26 = 0.64円(64pips)
リスクリワード比 = 64 ÷ 15 ≒ 4.3
4SMAが上向きになった10本目の終値(150.38円)で買う場合
SMAの底 150.240円 → 損切り 150.19円(5pips下)
エントリー 150.38円、損切り 150.19円、利確 150.90円
リスク = 150.38 − 150.19 = 0.19円(19pips)
リワード = 150.90 − 150.38 = 0.52円(52pips)
リスクリワード比 = 52 ÷ 19 ≒ 2.7
HMAのほうが、早く入れて、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、HMAは行き過ぎやすいため、向きの変化が、そのまま転換とは限らず、すぐ元に戻ることがあります。早い反応は、ダマシと隣り合わせです。
長い期間の方向確認に使う
期間を長くしても、遅れが増えにくいため、長い期間のHMAを、トレンドの方向の確認に使う方法もあります。
注意点
1. 行き過ぎ(オーバーシュート)がある
価格が急に向きを変えたとき、HMAは価格を越えて行き過ぎます。HMAの天井・底を、そのまま、価格の天井・底と考えないようにしましょう。
2. レンジでは、ダマシが多い
価格が上下を繰り返すとき、HMAも細かく向きを変えます。レンジでは、向きの変化の多くが、ダマシになります。
3. 多くの人が見ているわけではない
SMAやEMAに比べて、HMAを使う人は少ないため、サポート・レジスタンスとして意識されにくい可能性があります。
4. ツールによって、計算の細部が違う
N÷2、√Nの丸め方や、WMAの扱いが、ツールによって違い、数値が少しずれることがあります。普段使うツールで、確認しましょう。
5. 期間に、魔法の数字はない
「この期間なら勝てる」というものは、ありません。過去のチャートで、通貨ペア・時間足ごとに確認することが大切です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足の終値は、確定するまで変わります。HMAの向きも、それにつれて変わるため、確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
HMAなら、遅れがなく、勝てると考える
遅れが小さい分、行き過ぎやダマシが増えます。利益につながるかは、別です。
HMAの向きが変わったら、すぐに売買する
レンジでは、向きが細かく変わり続けます。相場がトレンドか、レンジかを、まず確認しましょう。
価格とHMAの交差を、売買のサインにする
HMAは価格に近いため、交差は頻繁に起こります。交差のたびに売買すると、損失が重なります。
期間を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「HMAは転換が早い」と聞いても、実際に利益につながるかは、通貨ペア・時間足・相場の状況で変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- HMAは、WMAを3回組み合わせて、遅れを小さくした移動平均線。HMA = WMA(2 × WMA(N÷2) − WMA(N)、√N)
- 遅れは、おおよそ(√N − 2) ÷ 3本。期間を長くしても、ほとんど増えない
- 転換に素早く反応するが、行き過ぎ(オーバーシュート)があり、ダマシも多い
- 「価格との交差」より、「HMAの向きの変化」を、転換の目安にする
- 早く入るほど、リスクリワード比は良くなるが、ダマシのリスクも上がる
- レンジでは、向きの変化の多くがダマシになる
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
