プレミアム/ディスカウントゾーンとは
プレミアム/ディスカウントゾーン(Premium / Discount Zone)とは、直近の安値から高値までの範囲を、中間(50%)で2つに分け、上半分を「プレミアム(高い側)」、下半分を「ディスカウント(安い側)」と呼ぶ見方です。スマートマネー系(SMC・ICT)の手法で使われます(呼び方や、範囲の決め方は、解説書によって違います)。
「買うなら、安い側(ディスカウント)で、売るなら、高い側(プレミアム)で」という考え方で使われますが、これは、考え方(仮説)です。「安い側」で買えば、必ず、有利になる、というわけでは、ありません。範囲の取り方次第で、同じ価格が、高い側にも、安い側にも、なります。
中間の水準は、「均衡(イクイリブリアム:Equilibrium)」と呼ばれます。ICT(Inner Circle Trader)と呼ばれるトレーダーの、考え方をもとに、広まった手法、とされています(出典により、説明は違います)。学術的に、確立された理論では、なく、主に、個人トレーダーの間で、使われている考え方です。
範囲の高値 = H、安値 = L のとき
均衡(50%)= (H + L)÷ 2
プレミアム = 均衡より上(均衡 〜 H)
ディスカウント = 均衡より下(L 〜 均衡)

上の図は、説明のために作った例です。安値148.80円から、高値150.00円まで上昇したあと、価格は、均衡の149.40円の下まで戻り、149.25円で反発して、再び、上昇しています。実際の相場が、このようにきれいに動くことは、少ないです。
フィボナッチ・リトレースメントとの違い
この考え方は、フィボナッチ・リトレースメント(別の記事で解説しています)の、50%の水準と、同じ位置です。違いは、次のとおりです。
| プレミアム/ディスカウント | フィボナッチ・リトレースメント | |
|---|---|---|
| 使う水準 | 主に、50%の1本 | 23.6%、38.2%、50%、61.8%、78.6%など複数 |
| 目的 | 範囲を「高い側・安い側」に分ける | 戻りの、目安の水準を、探す |
| 使い方 | どちら側に、いるかを、見る | 各水準での、反応を、見る |
ICTの解説では、「オプティマル・トレード・エントリー(OTE)」として、戻りの、62%〜79%付近を、使うという説明が、あります(出典により、数値は違います)。このあたりの数値は、フィボナッチ比率に、近い値です。
範囲の決め方
範囲の取り方で、結果が、大きく変わります。よく紹介される、考え方は、次のとおりです。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 直近のスイング | 直近の、大きな上昇(下降)の、安値から高値まで |
| トレンドの、1つの波 | 押し(戻り)が、始まる前の、1つの波 |
| レンジ | レンジの上限と下限 |
| 時間足 | 長い時間足の、範囲を、見る、という考え方もある |
範囲の取り方には、決まった基準が、ありません。スイング高値・安値の見方は、別の記事で解説しています。後から、範囲を、取り直すと、結果を、都合よく、合わせてしまうことに、なります。
計算例
均衡と、戻りの割合
例の範囲は、次のとおりです(例の数値です)。
| 項目 | 価格 |
|---|---|
| 範囲の高値(H) | 150.00円 |
| 範囲の安値(L) | 148.80円 |
| 戻りの安値 | 149.25円 |
範囲の幅 = 150.00 − 148.80 = 1.20円(120pips)
均衡(50%)= (150.00 + 148.80)÷ 2 = 149.40円
戻りの深さ = 150.00 − 149.25 = 0.75円(75pips)
戻りの割合 = 75 ÷ 120 = 62.5 %
戻りの安値の位置 = (149.25 − 148.80)÷ 1.20 = 37.5 %
戻りの安値は、範囲の下から37.5%の位置で、均衡(50%)より下、つまり、ディスカウントです。戻りの割合は、高値から見て、62.5%です。
参考:OTEとして紹介される62%〜79%の、価格の範囲(この例の場合)
62 %戻し = 150.00 − 1.20 × 0.62 = 150.00 − 0.744 = 149.256円
79 %戻し = 150.00 − 1.20 × 0.79 = 150.00 − 0.948 = 149.052円
この例では、戻りの安値149.25円は、62%戻しの149.256円付近です。これは、結果から見た、一致で、事前に、ここで、反発すると、分かっていたわけでは、ありません。
ATRで、範囲の大きさを見る
平均的な値動きの大きさ(ATR)が、0.20円(20pips)だった場合、
範囲の幅 ÷ ATR = 1.20 ÷ 0.20 = 6.0
範囲は、ATRの6倍です。範囲が、ATRに対して、小さすぎると、ノイズに、なりやすい、という考え方もあります(基準は、決まっていません)。ATRについては、別の記事で解説しています。
他の分析との違い
| プレミアム/ディスカウント | オーダーブロック | FVG | |
|---|---|---|---|
| 見るもの | 範囲の、どちら側にいるか | 強い動きの、直前の足 | 3本の足の、値幅の空白 |
| 使い方 | 場所を、絞る | 具体的な、反応の範囲 | 具体的な、反応の範囲 |
| 範囲 | スイング全体 | 1本の足 | 足1と足3の間 |
プレミアム/ディスカウントは、「どのあたりで、反応を、待つか」の、大まかな目安で、オーダーブロックや、FVGと、組み合わせる、という使い方が、あります。どちらも、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. 上昇(下降)の方向を、確認する
上昇トレンドなら、押しを、待って買う、という使い方が、あります。環境認識については、別の記事で解説しています。
2. 範囲を、決める
直近の、安値と高値を決め、中間(均衡)を、計算します。
3. 価格が、均衡より下に、戻るのを待つ
上昇のあと、価格が、均衡の下(ディスカウント)に、戻ってくるかを、待ちます。戻ってこない場合は、エントリーできません。
4. 反応を確認する
ディスカウントに、入ったあとの、ローソク足の反応を、確認します。範囲の安値を、割る場合は、前提(上昇の流れ)が、崩れた、と考えます。
5. 損切りと、目標を決める
損切りは、戻りの安値(範囲の安値)の外側に、置く考え方が、あります。目標は、範囲の高値と、する考え方が、あります。
計算例:ディスカウントでの買い
戻りの安値は149.25円、その10pips下の149.15円を損切り、目標は、範囲の高値150.00円とします(例の数値です)。
均衡(149.40円)に、指値で買う場合
エントリー 149.40円、損切り 149.15円、利確 150.00円
リスク = 149.40 − 149.15 = 0.25円(25pips)
リワード = 150.00 − 149.40 = 0.60円(60pips)
リスクリワード比 = 60 ÷ 25 = 2.4
戻りの安値のあと、陽線が確定した、終値(149.45円)で買う場合
エントリー 149.45円、損切り 149.15円、利確 150.00円
リスク = 149.45 − 149.15 = 0.30円(30pips)
リワード = 150.00 − 149.45 = 0.55円(55pips)
リスクリワード比 = 55 ÷ 30 ≒ 1.8
反発が進み、均衡を、上に戻した後の、149.60円で買う場合
エントリー 149.60円、損切り 149.15円、利確 150.00円
リスク = 149.60 − 149.15 = 0.45円(45pips)
リワード = 150.00 − 149.60 = 0.40円(40pips)
リスクリワード比 = 40 ÷ 45 ≒ 0.9
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 | 損益分岐の勝率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 均衡に指値 | 149.40円 | 25pips | 60pips | 2.4 | 約29.4% |
| 陽線の確定後 | 149.45円 | 30pips | 55pips | 1.8 | 約35.7% |
| 均衡を戻したのを確認 | 149.60円 | 45pips | 40pips | 0.9 | 約52.6% |
損益分岐の勝率 = 1 ÷(1 + リスクリワード比)
リスクリワード比 2.4 → 1 ÷ 3.4 ≒ 29.4 %
リスクリワード比 1.8 → 1 ÷ 2.8 ≒ 35.7 %
リスクリワード比 0.9 → 1 ÷ 1.9 ≒ 52.6 %
この例の、損切り149.15円は、戻りの安値(149.25円)を、見てから、決めた位置です。均衡に指値した時点では、どこまで下がるか、分かりません。この例では、指値の後も、149.25円まで、下がるため、含み損が、最大15pips出ます。指値は、価格が、均衡まで、戻らず、エントリーできないことも、あります。スプレッドや、約定のずれは、考慮していません。
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります。確認が遅れて、リスクリワード比が、1を下回るときは、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。
売り(下降)の場合
下降の場合は、反対です。範囲の安値から、高値まで、下落したあと、価格が、均衡より上(プレミアム)に、戻ってきたところを、売る、という考え方です。計算の方法は、同じです。
注意点
1. 強いトレンドでは、戻らないことが多い
強い上昇のとき、価格は、均衡の下まで、戻らずに、上昇を、続けることが、あります。戻るのを、待つ間に、機会を逃すことも、あります。
2. 範囲の取り方で、結果が変わる
同じ価格でも、安値・高値の取り方次第で、プレミアムにも、ディスカウントにも、なります。高値を更新すれば、範囲そのものが、変わります。
3. 「安い側」で買っても、下がることがある
ディスカウントに、入ったあと、さらに、下落し、範囲の安値を、割ることが、あります。「安い」は、範囲の中での、相対的な位置にすぎません。
4. 判断の基準が、解説によって違う
範囲の決め方、均衡の使い方、OTEの数値などは、解説書によって、異なります。使う基準を、決めて、後から、変えないようにしましょう。
5. 後から、範囲を決めやすい
過去のチャートでは、反発した場所が、うまく、ディスカウントに、入るように、範囲を、取れてしまいます。リアルタイムでは、範囲を、先に決めておく必要があります。
6. ブローカーによって、足の高値・安値が違う
ブローカーによって、レートが違うため、範囲の、高値・安値が、微妙に違い、均衡の位置も、ずれることが、あります。
7. ダマシ・負けが、続くことがある
たとえば、均衡の149.40円で買い、損切り149.15円にかかる場合、損失は25pipsです。これが3回続くと、合計−75pipsです。その後の1回の利益が、60pipsなら、合計は−15pips、75pipsなら、0pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって、変わります。
初心者が間違えやすいポイント
「安い側」だから、買えば上がると考える
相対的な位置を、示しているだけで、将来を、保証するものでは、ありません。損切りを、先に、決めておきましょう。
均衡に、触れたら、すぐ、エントリーする
触れた瞬間に買うと、そのまま、下落する場合に、損失が広がります。反発の形を、確認しましょう。
範囲を、後から、取り直す
結果に、合わせて、範囲を、変えると、根拠が、なくなります。先に、範囲を、決めましょう。
下降トレンドでも、ディスカウントで買う
下降の流れの中で、「安い側」で買うのは、逆張りです。流れの方向を、確認しましょう。
検証せずに、使う
「ディスカウントで買うと、有利」と聞いても、実際の成績は、通貨ペア・時間足・ルールの組み合わせで、変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- プレミアム/ディスカウントは、安値〜高値の範囲を、中間(均衡:50%)で、高い側(プレミアム)と、安い側(ディスカウント)に、分ける見方
- フィボナッチの50%と、同じ位置で、「どちら側に、いるか」を見る点が、特徴
- 「安い側で買う」は、考え方(仮説)で、範囲の取り方で、結果が、変わる
- 例では、安値148.80円、高値150.00円で、幅は120pips(ATRの6.0倍)。均衡は149.40円。戻りの安値149.25円は、戻り62.5%、範囲の下から37.5%の位置
- 例では、均衡に指値(2.4)、陽線の確定後(1.8)、均衡を戻したのを確認(0.9)の順に、リスクリワード比が下がる。損切り位置は、後から決めた例で、指値は、エントリーできないこともある
- 損益分岐の勝率は、リスクリワード比2.4で約29.4%、1.8で約35.7%、0.9で約52.6%(スプレッド除く)
- 強いトレンドでは、戻らないことも、ある
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。チャート分析の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
