流動性スイープとは
流動性スイープ(Liquidity Sweep)とは、直近の高値や安値、または、同じ水準の高値・安値(ダブルトップ・ダブルボトムのような形)の外側を、ヒゲで一度抜けて、足の終値は、元の範囲の中に、戻ってくる動きを、指す言葉です。スマートマネー系(SMC・ICT)の手法で使われます(呼び方や、定義は、解説書によって違います)。
「安値の外側には、ストップ注文が集まりやすく、そこまで価格を動かして、注文を、約定させたあと、反対方向に動く」と説明されることが、ありますが、これは、考え方(仮説)です。FXは、店頭取引で、他の人の注文は、見えません。そのため、実際に、そのような意図で、動いたのかは、外部から、確認できません。値動きの結果として、「抜けたあと、戻った」という形を、見ている、だけです。
ストップ注文が、集まりやすい場所の考え方は、別の記事で解説しています(流動性とストップ狩り)。この記事では、「抜けて、戻った」形を、どう見分け、どう使う(または、使えない)かに、絞ります。

上の図は、説明のために作った例です。149.50円付近に、2回、安値ができています。その後、1本の足が、ヒゲで、149.38円まで、下抜けましたが、終値は149.58円と、安値の上に、戻りました。その後、価格は、上昇しています。実際の相場が、このようにきれいに動くことは、少ないです。
「下抜けて終値も下」との違い
安値を下抜けたとき、終値が、安値の下で確定するか、上に戻るかで、見方が、分かれます。
| 流動性スイープ | 終値での、下抜け(ブレイク) | |
|---|---|---|
| ヒゲ | 安値の下に、出る | 安値の下に、出る |
| 終値 | 安値の上に、戻る | 安値の下で、確定する |
| 考え方 | 「抜けたが、定着しなかった」 | 「抜けて、定着した」 |
| 関連する見方 | ダマシ・反転の候補 | 構造の転換(BOS・CHoCH)の候補 |
終値で判断する、構造の転換(BOS・CHoCH)は、別の記事で解説しています。ただし、「スイープ」と「ブレイク」は、足が確定するまで、区別できません。足の途中で、安値の下に、出ているときは、どちらになるか、分かりません。
判断の条件
流動性スイープの判断条件も、解説書によって違います。よく紹介される、条件は、次のとおりです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象の水準 | 直近の安値(高値)、または、同じ水準の複数の安値(高値) |
| ヒゲでの、抜け | その水準を、ヒゲで、一度抜ける |
| 終値の、戻り | 足の終値が、水準の、内側に、戻る |
| 抜けた幅 | 大きすぎない(基準は、決まっていない) |
| その後の反応 | 反対方向への動きが、続く |
「抜けた幅」には、決まった基準が、ありません。抜けた幅が、大きいときは、「スイープ」ではなく、単なる、ブレイクの可能性が、あります。ヒゲの長さを、ATRと比べる、という考え方もあります(基準は、例です)。
計算例
抜けた幅とヒゲの長さ
例の水準と、スイープの足は、次のとおりです(例の数値です)。
| 項目 | 価格 |
|---|---|
| 同じ安値の水準(安値①②) | 149.50円 |
| スイープの足の、始値 | 149.64円 |
| 同・高値 | 149.66円 |
| 同・安値 | 149.38円 |
| 同・終値 | 149.58円 |
抜けた幅 = 149.50 − 149.38 = 0.12円(12pips)
下ヒゲの長さ = 実体の下端(終値149.58) − 安値149.38 = 0.20円(20pips)
実体の長さ = 149.64 − 149.58 = 0.06円(6pips)
ヒゲ ÷ 実体 = 20 ÷ 6 ≒ 3.3
平均的な値動きの大きさ(ATR)が、0.20円(20pips)だった場合、
抜けた幅 ÷ ATR = 0.12 ÷ 0.20 = 0.6
抜けた幅は、ATRの0.6倍です。「ATRの1倍未満の抜けを、スイープとする」といった基準を、事前に決めておく、という考え方があります(この基準は、例です。決まった基準は、ありません)。ATRについては、別の記事で解説しています。
他の分析との違い
| 流動性スイープ | ピンバー | 2Bパターン(フェイクアウト) | |
|---|---|---|---|
| 見るもの | 水準を、抜けて戻る動き | 長いヒゲを持つ、1本の足の形 | 高値(安値)の更新が、すぐ、失敗する形 |
| 水準の有無 | 水準を、必ず、使う | 水準は、必須ではない | 直近の高値・安値を、使う |
| 特徴 | 水準の「外」まで出たかを、見る | 足の形を、見る | 更新の「失敗」を、見る |
3つとも、似た場面を、指すことが、あります。呼び方が違うだけで、同じ場面を、別の言葉で、説明している、場合も、あります。ピンバーと、2Bパターンは、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. 水準を、決める
同じ水準の安値(高値)や、直近の安値(高値)を、チャートに、マークします。
2. 足の確定を、待つ
水準の外に、出ても、足が確定するまでは、スイープか、ブレイクか、分かりません。足の終値が、水準の内側に、戻ったかを、確認します。
3. 反応を確認する
戻ったあとの足が、反対方向に、動くか(例では、陽線)を、確認します。
4. 損切りと、目標を決める
損切りは、スイープの足の、安値(高値)の外側に、置く考え方が、あります。目標は、直前の、高値(安値)などと、する考え方が、あります。
計算例:安値のスイープのあと、買う場合
スイープの足の安値は149.38円、その5pips下の149.33円を、損切り、目標は、150.20円とします(例の数値です)。
水準の149.50円に、先に指値で買う場合(抜けて戻ると予想)
エントリー 149.50円、損切り 149.33円、利確 150.20円
リスク = 149.50 − 149.33 = 0.17円(17pips)
リワード = 150.20 − 149.50 = 0.70円(70pips)
リスクリワード比 = 70 ÷ 17 ≒ 4.1
スイープの足が確定した、終値(149.58円)で買う場合
エントリー 149.58円、損切り 149.33円、利確 150.20円
リスク = 149.58 − 149.33 = 0.25円(25pips)
リワード = 150.20 − 149.58 = 0.62円(62pips)
リスクリワード比 = 62 ÷ 25 ≒ 2.5
上昇が進んだことを確認した後の、149.80円で買う場合
エントリー 149.80円、損切り 149.33円、利確 150.20円
リスク = 149.80 − 149.33 = 0.47円(47pips)
リワード = 150.20 − 149.80 = 0.40円(40pips)
リスクリワード比 = 40 ÷ 47 ≒ 0.9
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 | 損益分岐の勝率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水準で先に指値 | 149.50円 | 17pips | 70pips | 4.1 | 約19.6% |
| スイープの足の確定後 | 149.58円 | 25pips | 62pips | 2.5 | 約28.7% |
| 上昇が進んだのを確認 | 149.80円 | 47pips | 40pips | 0.9 | 約54.1% |
損益分岐の勝率 = 1 ÷(1 + リスクリワード比)
リスクリワード比 4.1 → 1 ÷ 5.1 ≒ 19.6 %
リスクリワード比 2.5 → 1 ÷ 3.5 ≒ 28.7 %
リスクリワード比 0.9 → 1 ÷ 1.9 ≒ 54.1 %
この例の、損切り149.33円は、スイープの足の安値(149.38円)を、見てから、決めた位置です。水準で先に指値する場合は、抜ける深さが、事前に、分からないため、損切りを、もっと、深く置く必要があり、リスクリワード比は、この表より、低くなります。指値は、価格が、水準まで、戻らず、エントリーできないことも、あります。スプレッドや、約定のずれは、考慮していません。
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります。確認が遅れて、リスクリワード比が、1を下回るときは、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。
注意点
1. 水準の外に出た後、戻らないことが多い
ヒゲで、下抜けたあと、終値も、水準の下で、確定し、そのまま、下落する場合も、あります。そのときは、スイープではなく、ブレイクだった、ということに、なります。足が確定するまで、区別できません。
2. 後から、見つけやすい
過去のチャートでは、「スイープだった」箇所を、簡単に、見つけられます。しかし、リアルタイムで、水準を、抜けた時点で、戻るか、戻らないかは、分かりません。
3. 「ストップ狩り」の意図は、確認できない
価格が、安値の下に出て、戻った、という値動きの結果は、確認できます。しかし、誰かが、ストップ注文を、狙って、動かしたのかは、確認できません。仮説として、扱いましょう。
4. 判断の基準が、解説によって違う
対象とする水準、抜けた幅の上限、終値の判定などは、解説書によって、異なります。使う基準を、決めて、後から、変えないようにしましょう。
5. 時間足によって、見え方が、変わる
時間足が、短いほど、小さなスイープが、数多く、できます。長い時間足の水準を、抜けたものを、重視する、という考え方も、あります。
6. ブローカーによって、足の高値・安値が違う
ブローカーによって、レートが違うため、ヒゲの先が、微妙に、違うことが、あります。水準を、わずかに、抜けた、抜けない、が、ブローカーによって、変わることが、あります。
7. ダマシ・負けが、続くことがある
たとえば、スイープの足の終値(149.58円)で買い、損切り149.33円にかかる場合、損失は25pipsです。これが3回続くと、合計−75pipsです。その後の1回の利益が、62pipsなら、合計は−13pips、75pipsなら、0pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって、変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
初心者が間違えやすいポイント
水準の外に出た瞬間に、逆張りする
足が確定する前に、買うと、そのまま、下落した場合に、損失が広がります。終値が戻ったことを、確認しましょう。
ヒゲが出れば、すべて、スイープと考える
水準が、はっきりしないまま、ヒゲだけを見ると、根拠が、薄くなります。水準を、先に、決めておきましょう。
「ストップ狩り」が、必ず起きると考える
仮説であり、検証できません。損切りを、先に、決めておきましょう。
ブレイクと、区別しない
終値が、水準の外で確定すれば、ブレイクです。同じ「抜け」でも、見方が、変わります。
検証せずに、使う
「スイープのあとは、反転しやすい」と聞いても、実際の成績は、通貨ペア・時間足・ルールの組み合わせで、変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- 流動性スイープは、同じ水準や、直近の安値(高値)の外を、ヒゲで一度抜け、終値は、内側に戻る動き
- 「ストップ注文を、狙って動いた」という説明は、仮説で、外部から確認できない
- 終値でも抜けて定着すると、ブレイク(構造の転換の候補)。足が確定するまで、区別できない
- 例では、149.50円の安値を、149.38円まで抜け(12pips、ATRの0.6倍)、終値は149.58円。下ヒゲは、実体の約3.3倍
- 例では、先に指値(4.1)、足の確定後(2.5)、上昇が進んだのを確認(0.9)の順に、リスクリワード比が下がる。指値は、エントリーできないこともあり、損切り位置は、後から決めた例
- 損益分岐の勝率は、リスクリワード比4.1で約19.6%、2.5で約28.7%、0.9で約54.1%(スプレッド除く)
- 後から見つけやすく、リアルタイムでは、分からない
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。チャート分析の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
