ギャン理論とは
ギャン理論(Gann Theory)とは、20世紀前半に活躍した、アメリカの相場師、ウィリアム・デルバート・ギャン(W.D. Gann)が、考案したと、される、相場分析の考え方の、総称です。価格と時間の関係を、重視し、「時間と価格が、バランスよく、動くとき、トレンドが、続く」と、考える点が、特徴です。ギャン理論には、さまざまな分析(ギャンアングル、ギャンファン、ギャンスクエアなど)が、含まれますが、この記事では、チャートソフトでよく使われる、「ギャンアングル」と「ギャンファン」を、説明します。ギャンが、実際に、どのように、相場を分析し、どれだけ、成功したかについては、諸説あり、確かな、検証は、難しいと、言われています。
ギャンアングル(Gann Angle)とは、起点(高値・安値)から、決まった「傾き(角度)」で、引いた斜めの線です。ギャンファン(Gann Fan)とは、起点から、複数のギャンアングルを、扇状に、まとめて、引いたものです。

図は、安値149.00円を起点に、ギャンファンを引いた例です。価格は、1×1の線の近くで、反発し、その後、1×1を下抜け、1×2の線の近くで、反発しています。この図は、説明のために作った例で、必ず、このように動くわけでは、ありません。
ギャンアングルの意味
ギャンアングルは、「価格」と「時間」の、比率で、表されます。「1×1」は、「時間1に対して、価格1」の、傾きで、45度の線です。
a × b = 時間 b に対して、価格が a 進む傾き
1×1 … 時間1に対して、価格1(45°)
2×1 … 時間1に対して、価格2(急な傾き)
1×2 … 時間2に対して、価格1(緩やかな傾き)
よく使われる、角度は、次のとおりです(ギャンが、使ったと、される角度)。
| 名前 | 傾き | 角度(目安) | 見方 |
|---|---|---|---|
| 8×1 | 時間1に価格8 | 82.5° | 非常に急な上昇 |
| 4×1 | 時間1に価格4 | 75° | 急な上昇 |
| 3×1 | 時間1に価格3 | 71.25° | 急な上昇 |
| 2×1 | 時間1に価格2 | 63.75° | 強い上昇 |
| 1×1 | 時間1に価格1 | 45° | 最も重要な線。バランスのとれた上昇 |
| 1×2 | 時間2に価格1 | 26.25° | 緩やかな上昇 |
| 1×3 | 時間3に価格1 | 18.75° | 緩やかな上昇 |
| 1×4 | 時間4に価格1 | 15° | 非常に緩やかな上昇 |
| 1×8 | 時間8に価格1 | 7.5° | ほぼ横ばい |
ギャンの考え方では、「価格が、1×1の線の上にある間は、上昇トレンド(強い)」、「1×1を、下抜けると、次の線(1×2など)が、サポートになる」と、されます。逆に、下降トレンドでは、高値を起点に、線を引き、価格が、1×1の線の下にある間は、下降トレンド(強い)と、見ます。
線の価格の計算と、手計算の例
ギャンアングルを、チャート上で、使うには、「価格1目盛り」と「時間1目盛り(1本)」の、大きさを、決める必要があります。この図の例では、「価格の1目盛り = 2pips」、「時間の1目盛り = 1本」と、しました(例です)。
線の価格 = 起点の価格 +(価格1目盛りの値幅 × a ÷ b)× 本数
手計算の例
起点が、安値149.00円(0本目)、価格1目盛りが2pips(0.02円)とします。
1×1の線 = 149.00 + 0.02 × (1÷1) × 本数 = 149.00 + 0.02 × 本数(1本あたり +2pips)
2×1の線 = 149.00 + 0.02 × (2÷1) × 本数(1本あたり +4pips)
1×2の線 = 149.00 + 0.02 × (1÷2) × 本数(1本あたり +1pips)
1×4の線 = 149.00 + 0.02 × (1÷4) × 本数(1本あたり +0.5pips)
| 線 | 1本あたり | 55本目 | 100本目 |
|---|---|---|---|
| 2×1 | +4.0pips | 151.20円 | 153.00円 |
| 1×1 | +2.0pips | 150.10円 | 151.00円 |
| 1×2 | +1.0pips | 149.55円 | 150.00円 |
| 1×4 | +0.5pips | 149.275円 | 149.50円 |
図の例では、55本目に、価格が、1×1の線(150.10円)の近くまで、押して、反発しています。その後、100本目前後で、1×1の線(151.00円)を、下抜け、115本目に、1×2の線(150.15円)の近くまで、下がって、反発しました。
115本目の1×2の線 = 149.00 + 0.01 × 115 = 150.15円
図の例の、115本目付近の安値 ≒ 150.18円 → 線の近くで反発
計算例:目盛りの決め方で、線が、変わる
同じ、起点・同じ、1×1の線でも、「価格1目盛り」を、変えると、線の価格が、変わります。
50本目の1×1の線
価格1目盛り = 1pips(0.01円):149.00 + 0.01 × 50 = 149.50円
価格1目盛り = 2pips(0.02円):149.00 + 0.02 × 50 = 150.00円
価格1目盛り = 4pips(0.04円):149.00 + 0.04 × 50 = 151.00円
| 価格1目盛り | 50本目の1×1の線 | 起点との差 |
|---|---|---|
| 1pips | 149.50円 | +50pips |
| 2pips | 150.00円 | +100pips |
| 4pips | 151.00円 | +200pips |
同じ「1×1」でも、目盛りの決め方で、線の位置が、150pips(149.50円と、151.00円の差)も、変わります。これが、ギャンアングルの、最も大きな、注意点です。ギャンの、時代の株式では、「1ドル = 1日」のように、決めやすい、単位が、あったと、言われますが、FXでは、決まった単位が、ありません。
多くのチャートソフトでは、「画面上で、45度」に、なるように、1×1の線を、引く方法も、あります。この場合は、画面の拡大・縮小で、線の傾きが、変わります。
他の分析との違い
| ギャンアングル・ファン | トレンドライン | フィボナッチ・ファン | |
|---|---|---|---|
| 傾きの決め方 | 決まった比率(1×1・2×1など) | 高値同士・安値同士を結ぶ | 値幅の比率(38.2%・50%・61.8%) |
| 起点 | 1つの高値(安値) | 2点以上 | A・Bの2点 |
| 目盛りの影響 | 大きい(目盛りの決め方で変わる) | ない(実際の価格を結ぶ) | ない(実際の値幅を使う) |
| 主観の入りやすさ | 起点・目盛りの決め方で変わる | 線の引き方で変わる | A・Bの選び方で変わる |
ギャンアングルは、「実際の高値・安値」を、結ぶのでは、なく、「決まった傾き」で、引くため、トレンドラインとは、考え方が、違います。トレンドライン、フィボナッチ・ファンについては、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. 起点を、決める
重要な、高値・安値(トレンドの、始まりや、大きな転換点)を、起点に、選びます。起点の選び方で、すべての線が、変わります。
2. 価格の目盛りを、決める
価格1目盛りの値幅(1pips、2pips、10pipsなど)を、決めます。通貨ペア・時間足に、合わせて、決める必要が、あります。目盛りが、適切でないと、線が、実際の値動きと、合わなくなります。
3. 価格と線の位置関係を、見る
価格が、どの線の、上にあるか、下にあるかを、見ます。1×1の線の上なら、強い上昇、1×1を、下抜けたら、次の線(1×2)まで、下がりやすいと、考えます。
4. 反応を、確認する
線の近くで、反発するか、下抜けるかを、見て、反応を確認します。線に、触れただけでは、エントリーしないのが、一般的です。
計算例:1×1の線の近くで、押し目を買う場合
図の例(55本目の1×1の線=150.10円)で、線の近くの、押し目を、買う場合を、考えます。損切りは、150.10円の下の149.95円、利益確定は、次の高値の目安として、150.80円とします(例の数値です)。
1×1の線(150.10円)に、指値で買う場合
エントリー 150.10円、損切り 149.95円、利確 150.80円
リスク = 150.10 − 149.95 = 0.15円(15pips)
リワード = 150.80 − 150.10 = 0.70円(70pips)
リスクリワード比 = 70 ÷ 15 ≒ 4.7
反発を確認した足の終値(150.25円)で買う場合
エントリー 150.25円、損切り 149.95円、利確 150.80円
リスク = 150.25 − 149.95 = 0.30円(30pips)
リワード = 150.80 − 150.25 = 0.55円(55pips)
リスクリワード比 = 55 ÷ 30 ≒ 1.8
前の高値(150.35円)を、上抜けた足の終値(150.38円)で買う場合
エントリー 150.38円、損切り 149.95円、利確 150.80円
リスク = 150.38 − 149.95 = 0.43円(43pips)
リワード = 150.80 − 150.38 = 0.42円(42pips)
リスクリワード比 = 42 ÷ 43 ≒ 1.0
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 |
|---|---|---|---|---|
| 指値(1×1の線) | 150.10円 | 15pips | 70pips | 4.7 |
| 反発を確認(足の確定) | 150.25円 | 30pips | 55pips | 1.8 |
| 前の高値を上抜けた(継続の確認) | 150.38円 | 43pips | 42pips | 1.0 |
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。指値は、価格が、線に届かずに、反発して、エントリーできないことも、あります。また、ギャンアングルは、斜めの線のため、150.10円は、55本目の価格で、時間が進むと、線の価格が、変わります。前の高値の上抜けまで待つと、目標までの値幅が、小さくなるため、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。
注意点
1. 目盛りの決め方で、線が、大きく、変わる
価格1目盛りを、どう決めるかで、同じ「1×1」でも、線の位置が、大きく、変わります。FXでは、決まった単位が、ないため、人によって、線が、違い、「どの線が、効いたか」の、判断も、変わります。
2. 起点の選び方で、すべて、変わる
「どの高値・安値を、起点にするか」は、人によって、違います。起点が、少し、ずれるだけでも、線の位置は、変わります。
3. 線の数が多く、後付けに、なりやすい
ギャンファンは、複数の線を、引くため、価格が、「どれかの線の、近くで、反応した」ように、見えやすいです。後から、当てはめるのではなく、事前に、線を、決めておくことが、必要です。
4. 画面の縮尺で、線が、変わる場合がある
ソフトによっては、「画面上の45度」で、1×1の線が、引かれ、チャートの、拡大・縮小で、線の傾きが、変わります。使っているソフトの、仕様を、確認しましょう。
5. 検証が、難しい
ギャン理論の、考え方は、定義が、あいまいな部分も、多く、再現性のある、検証が、難しいと、言われています。ルールを、はっきり、決めた上で、自分で、検証することが、必要です。
たとえば、線での買いが、損失20pipsで、9回続くと、合計−180pipsの損失です。その後の1回の利益が、250pipsなら、合計は+70pips、150pipsなら、合計は−30pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって、変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
6. 足が確定するまで、分からない
ヒゲで、一時的に、線を、下抜けても、足が確定したときには、戻っていることが、あります。終値で、確認するようにしましょう。確定するまで、分からないことを、忘れないようにしましょう。
初心者が間違えやすいポイント
「1×1の線は、必ず、効く」と考える
1×1の線は、ギャンが、重視した、線ですが、必ず、反発する、線では、ありません。線を、あっさり、下抜けることも、あります。
目盛りを、決めずに、使う
価格1目盛りを、決めずに、ソフトの、初期設定のまま、使うと、線の位置が、実際の値動きと、合わないことが、あります。自分で、目盛りを、決めるようにしましょう。
線を、固定の価格と、考える
ギャンアングルは、斜めの線で、時間とともに、価格が、変わります。「この価格」と、決めつけず、その時点の、線の価格を、確認しましょう。
後から、当てはめる
反発した後に、「ここに、線が、あった」と、線を引くのは、後付けです。リアルタイムで、使えるかを、検証しましょう。
検証せずに、使う
「ギャン理論で、相場が読める」と聞いても、実際の成績は、通貨ペア・時間足・目盛り・ルールの組み合わせで、変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- ギャン理論は、W.D. ギャンが、考案したと、される、価格と時間を、重視する、分析の、総称。ギャンアングルは、決まった傾き(1×1・2×1・1×2など)の、斜めの線、ギャンファンは、その線を、扇状に、まとめたもの
- 1×1は、時間1に価格1の傾き(45度)で、最も重要な線と、されている。価格が、1×1の上にある間は、強い上昇、下抜けたら、次の線(1×2など)が、サポートになると、考える
- 例では、価格1目盛り=2pipsで、1×1の線は、55本目で150.10円、100本目で151.00円。1×2の線は、115本目で150.15円
- 同じ「1×1」でも、目盛りが、1pips・2pips・4pipsで、50本目の線が、149.50円・150.00円・151.00円と、変わる
- 例では、指値(4.7)、反発の確認(1.8)、前の高値の上抜け(1.0)の順に、リスクリワード比が下がる。指値は、エントリーできないこともある
- 目盛り・起点の選び方で、線が大きく変わる。線の数が多く、後付けになりやすい。検証が、難しい
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。チャート分析の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
