フィボナッチ・リトレースメントとは
フィボナッチ・リトレースメント(Fibonacci Retracement)とは、直近の上昇(または下落)の値幅に、フィボナッチ数列から作られる比率をかけて、「押し(または戻り)が、どこまで進みやすいか」の目安となる、水平線を、引く分析です。23.6%・38.2%・50%・61.8%・78.6%の水準が、よく使われます。フィボナッチ数列と、比率の成り立ちについては、別の記事で解説しています。
上昇後の押しの価格 = 高値 − (高値 − 安値)× 比率
下落後の戻りの価格 = 安値 + (高値 − 安値)× 比率

図は、高値152.00円から、安値150.50円まで下落した後、約53%まで戻して、再び下落した例です。この図は、説明のために作った例で、必ず、このように動くわけでは、ありません。
比率の意味
| 比率 | 内容 | 見方の目安 |
|---|---|---|
| 23.6% | 浅い押し・戻り | トレンドが、強い場合に、現れやすいと、言われる |
| 38.2% | やや浅い押し・戻り | 多くの解説で、最初に、意識される水準 |
| 50.0% | 半値押し・半値戻り | 数列の比ではなく、慣習的に、使われる |
| 61.8% | 深い押し・戻り | 黄金比。トレンドが、続くかどうかの、分かれ目と見る人が、多い |
| 78.6% | 非常に深い押し・戻り | 0.618の平方根。ここを超えると、トレンドの終わりを、疑う人が、多い |
押し・戻りの深さから、トレンドの強さを、考える使い方も、あります(あくまで目安です)。
| 押し・戻りの深さ | 見方の例 |
|---|---|
| 〜38.2% | トレンドが、強い。押し・戻りが、浅い |
| 38.2%〜61.8% | 一般的な、押し・戻り |
| 61.8%〜78.6% | 深い調整。トレンドの勢いが、弱まっている可能性 |
| 78.6%〜100% | ほとんど、全戻し。トレンドの終わりも、疑う |
| 100%超 | 起点を超え、その波の見方が、成り立たない |
引き方の手順
1. 直近の、大きな上昇(または下落)の、起点と終点を決める
2. 上昇の場合は、「安値 → 高値」の順に、下落の場合は、「高値 → 安値」の順に、結ぶ
3. 終点が0%、起点が100%となり、その間に、各比率の水平線が、表示される
多くのチャートソフトに、フィボナッチ・リトレースメントの描画ツールが、あります。ソフトによって、標準で、表示される比率や、0%・100%の向きが、違うため、使っているソフトで、確認しましょう。
水準の手計算の例
高値が152.00円、安値が150.50円まで下落したとします(例の数値です)。値幅は、152.00 − 150.50 = 1.50円(150pips)です。下落後の戻りの水準を、計算します。
23.6%の戻り = 150.50 + 1.50 × 0.236 = 150.854円
38.2%の戻り = 150.50 + 1.50 × 0.382 = 151.073円
50.0%の戻り = 150.50 + 1.50 × 0.500 = 151.250円
61.8%の戻り = 150.50 + 1.50 × 0.618 = 151.427円
78.6%の戻り = 150.50 + 1.50 × 0.786 = 151.679円
| 比率 | 戻りの価格 | 安値からの幅 |
|---|---|---|
| 23.6% | 150.854円 | 35.4pips |
| 38.2% | 151.073円 | 57.3pips |
| 50.0% | 151.250円 | 75.0pips |
| 61.8% | 151.427円 | 92.7pips |
| 78.6% | 151.679円 | 117.9pips |
計算例:実際の戻りが、何%だったか
戻りの高値が、151.30円だった場合、戻り率は、次のとおりです。
戻り率 = (151.30 − 150.50)÷ 1.50 × 100 = 0.80 ÷ 1.50 × 100 ≒ 53.3 %
50.0%(151.25円)は、超えたが、61.8%(151.427円)には、届かずに、戻りが終わったと、読み取れます。この場合、「61.8%まで、戻らなかったため、下落の勢いが、強い」と、見る人もいますが、必ず、そうなるわけでは、ありません。
他の分析との違い
| フィボナッチ・リトレースメント | 水平線(サポート・レジスタンス) | 移動平均線 | |
|---|---|---|---|
| 水準の決め方 | 直近の値幅に、比率をかけて計算 | 過去に、意識された価格に引く | 過去の価格の、平均 |
| 使う場面 | 押し・戻りの深さの、目安 | 反転しやすい価格の、目安 | トレンドの向きの、確認 |
| 主観の入りやすさ | 起点・終点の選び方で、変わる | 線の引き方で、変わる | 期間の設定で、変わる |
| 目標値の計算 | できない(別の道具を使う) | できる場合がある | できない |
リトレースメントは、「どこまで押す(戻る)か」を、考える道具で、「どこまで伸びるか」は、別の道具(エクスパンション・プロジェクション)を、使います。サポート・レジスタンス、移動平均線、フィボナッチ・エクスパンション・プロジェクションについては、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. トレンドの方向を、確認する
上昇トレンドなら、押し目、下降トレンドなら、戻りを、狙います。上位足で、トレンドの方向を、確認します。環境認識については、別の記事で解説しています。
2. 起点・終点を、決めて、水準を引く
直近の大きな波の、安値・高値に、リトレースメントを引き、各水準を、確認します。ヒゲの先端を使うか、実体(終値)を使うかは、人によって、違います。自分のルールを、決めておくことが、必要です。
3. 他の根拠と、重なる場所を、探す
水平線・移動平均線・トレンドライン・前の高値・安値などと、フィボナッチの水準が、重なる場所は、意識されやすいと、考えられています。たとえば、61.8%の戻り(151.43円)の近くに、前の安値(151.40円)があれば、その差は、3pipsで、重なっていると、見ることが、できます。
4. 反転のサインを、確認する
水準に、到達しただけでは、エントリーせず、反転のサイン(ローソク足の形など)を、確認するのが、一般的です。
計算例:61.8%の戻りで、売る場合(下降トレンド)
図の例(高値152.00円、安値150.50円)で、戻りを、売る場合を、考えます。損切りは、78.6%の水準(151.68円)の少し上の151.70円、利益確定は、直前の安値(150.50円)とします(例の数値です)。
61.8%の水準(151.43円)に、指値で売る場合
エントリー 151.43円、損切り 151.70円、利確 150.50円
リスク = 151.70 − 151.43 = 0.27円(27pips)
リワード = 151.43 − 150.50 = 0.93円(93pips)
リスクリワード比 = 93 ÷ 27 ≒ 3.4
戻りの後、陰線が確定した足の終値(151.20円)で売る場合
エントリー 151.20円、損切り 151.70円、利確 150.50円
リスク = 151.70 − 151.20 = 0.50円(50pips)
リワード = 151.20 − 150.50 = 0.70円(70pips)
リスクリワード比 = 70 ÷ 50 = 1.4
戻りの途中の安値(151.00円)を、下抜けた足の終値で売る場合
エントリー 151.00円、損切り 151.70円、利確 150.50円
リスク = 151.70 − 151.00 = 0.70円(70pips)
リワード = 151.00 − 150.50 = 0.50円(50pips)
リスクリワード比 = 50 ÷ 70 ≒ 0.7
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 |
|---|---|---|---|---|
| 指値(61.8%の水準) | 151.43円 | 27pips | 93pips | 3.4 |
| 反落を確認(足の確定) | 151.20円 | 50pips | 70pips | 1.4 |
| 戻りの安値を下抜けた(継続の確認) | 151.00円 | 70pips | 50pips | 0.7 |
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ここで、図の例では、戻りの高値が、約53%(151.30円)で終わり、61.8%の水準(151.43円)に、届いていません。この場合、61.8%の指値は、約定せず、エントリーできなかった、ことになります。指値は、価格が、届かずに、反転して、エントリーできないことが、あります。確認を待つと、リスクリワード比は、下がりますので、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。
注意点
1. 起点・終点の選び方で、水準が、変わる
「どの高値・安値を、使うか」は、人によって、違います。同じチャートでも、人によって、水準が、違い、「どの水準が、意識されるか」も、変わります。
2. 水準が多く、後付けに、なりやすい
5本の水準があると、反転が、「どれかの、近くで、起きたように、見える」ことが、あります。後から、当てはめるのではなく、事前に、水準を、決めておくことが、必要です。
3. 水準で、必ず、止まるわけではない
水準を、あっさり、通り過ぎる場合も、あります。水準での、反転は、「目安」であって、保証では、ありません。
4. 時間足によって、見え方が、変わる
同じ時期でも、日足と、1時間足で、起点・終点が、違い、水準が、変わります。どの時間足で、見ているかを、はっきりさせましょう。
5. レンジ相場では、機能しにくい
方向感のない、レンジ相場では、押し・戻りの、基準となる、大きな波が、はっきりせず、水準も、意味を、持ちにくいです。
たとえば、水準での売りが、損失30pipsで、7回続くと、合計−210pipsの損失です。その後の1回の利益が、250pipsなら、合計は+40pips、150pipsなら、合計は−60pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって、変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
6. 足が確定するまで、分からない
ヒゲで、一時的に、水準を、超えても、足が確定したときには、戻っていることが、あります。終値で、確認するようにしましょう。確定するまで、分からないことを、忘れないようにしましょう。
初心者が間違えやすいポイント
「61.8%で、必ず、反転する」と考える
61.8%は、よく、意識される水準ですが、必ず、反転する場所では、ありません。反転しない場合の、損切りを、先に、決めておくことが、必要です。
小さな波に、引いてしまう
小さな波に、引くと、水準が、狭い範囲に、集まり、どこでも、反転したように、見えます。上位足の、大きな波で、確認しましょう。
水準の「線」を、ぴったり、狙う
水準は、「線」ではなく、「帯(ゾーン)」として、見るほうが、現実的です。数pipsの、ずれは、よく、あります。
反転のサインを、待たずに、入る
水準に、到達しただけで、エントリーすると、そのまま、通過した場合に、損失が、広がります。反転のサインを、確認することが、一般的です。
検証せずに、使う
「フィボナッチを、使えば、勝てる」と聞いても、実際の成績は、通貨ペア・時間足・ルールの組み合わせで、変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- フィボナッチ・リトレースメントは、直近の上昇(下落)の値幅に、比率をかけて、押し(戻り)の目安の水準を、引く分析。23.6%・38.2%・50%・61.8%・78.6%が、よく使われる
- 50%は、数列の比ではなく、慣習的に、使われる。78.6%は、0.618の平方根
- 例では、高値152.00円・安値150.50円(150pips)の戻りの水準は、23.6%=150.854円、38.2%=151.073円、50.0%=151.250円、61.8%=151.427円、78.6%=151.679円。戻りの高値151.30円は、約53.3%
- 例では、指値(3.4)、反落の確認(1.4)、戻りの安値の下抜け(0.7)の順に、リスクリワード比が下がる。この例では、戻りが、61.8%に届かず、指値は、約定しなかった
- 起点・終点の選び方で、水準が変わる。水準が多く、後付けになりやすい。レンジ相場では、機能しにくい
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。チャート分析の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
