ドンチャンチャネルとは
ドンチャンチャネルとは、直近N本の足の「最高値」と「最安値」を結んで引いた、帯状のラインのことです。米国のリチャード・ドンチャン氏が考案したとされ、「価格が、直近の高値や安値を、抜けたかどうか」を、見やすくするために使われます。移動平均線や標準偏差を使わず、高値と安値だけで決まるのが特徴です。ブレイクアウト(高値・安値の更新)を、そのまま目に見える形にした指標と言えます。ブレイクアウトについては、別の記事で解説しています。
| ライン | 内容 |
|---|---|
| アッパーライン | 直近N本の、最高値 |
| ロワーライン | 直近N本の、最安値 |
| ミドルライン | アッパーとロワーの、中間の値 |
期間Nは、20がよく使われます(ソフトによって、初期設定が異なる場合があります)。

計算方法
アッパーライン = 直近N本の最高値
ロワーライン = 直近N本の最安値
ミドルライン = (アッパー + ロワー)÷ 2
ブレイクの判定に使う場合は、「今の足を含めない、直前N本」で計算するのが、一般的です。今の足を含めてしまうと、価格がアッパーラインを、超えることが、できなくなるためです。ソフトの設定によって、今の足を含む場合も、ありますので、確認しましょう。
計算例:5本のドンチャンチャネル
手計算しやすいように、5本で計算します(実際には、20本などを使います)。直前5本の高値と安値は、次のとおりでした。
| 足 | 高値 | 安値 |
|---|---|---|
| 1本目 | 150.30円 | 150.00円 |
| 2本目 | 150.50円 | 150.20円 |
| 3本目 | 150.60円 | 150.35円 |
| 4本目 | 150.75円 | 150.30円 |
| 5本目 | 150.85円 | 150.55円 |
アッパー = 5本の最高値 = 150.85円
ロワー = 5本の最安値 = 150.00円
ミドル = (150.85 + 150.00)÷ 2 = 150.425円
幅 = 150.85 − 150.00 = 0.85円(85pips)
次の足(6本目)の高値が、150.92円だったとします。6本目は、アッパーライン(150.85円)を、7pips上回ったため、上方向へのブレイクアウトと判定できます。
ドンチャンチャネルが示すこと
価格が、アッパーラインを上に抜ける = 直近N本で、最も高い水準になった
価格が、ロワーラインを下に抜ける = 直近N本で、最も低い水準になった
チャネルが広い = 直近の値動きが大きい
チャネルが狭い = 直近の値動きが小さい(保ち合い)
「直近の高値を更新した = 買いが強い」「直近の安値を更新した = 売りが強い」と見る考え方に、もとづいています。
使い方
1. ブレイクアウトの目安にする
アッパーラインを上に抜けたら買い、ロワーラインを下に抜けたら売りという、順張りの考え方です。トレンドの初動を、機械的に捉えやすい一方、レンジでは、ダマシが多くなります。図の左側は、一度上抜けたあと、すぐに戻った(ダマシ)例です。
この考え方は、1980年代に活躍したとされる「タートル(海亀)トレーダー」の手法でも、使われたことで知られています。「20日の高値を抜けたら買い、10日の安値を割ったら決済」といった、エントリーと決済で、期間を変える方法が、紹介されています。現在のFXで、同じように機能するかは、通貨ペア・時間足・期間で変わるため、自分で、検証する必要があります。
計算例:ブレイク直後に入る場合と、押しを待つ場合
上の例(アッパー150.85円、ミドル150.425円、幅85pips)で、6本目がアッパーを上抜けたとします。損切りは、ミドルライン(150.43円)、利益確定は、チャネルの幅(85pips)をブレイク位置に足した151.70円とします。ミドルラインを割ると、「ブレイクに勢いがある」という前提が崩れやすいためです。
ブレイクの瞬間(150.86円)に、逆指値で買う場合
エントリー 150.86円、損切り 150.43円、利確 151.70円
リスク = 150.86 − 150.43 = 0.43円(43pips)
リワード = 151.70 − 150.86 = 0.84円(84pips)
リスクリワード比 = 84 ÷ 43 ≒ 2.0
ブレイクのあと、旧高値(150.85円)の10pips下の150.75円まで戻ってきたところで、指値で買う場合
エントリー 150.75円、損切り 150.43円、利確 151.70円
リスク = 150.75 − 150.43 = 0.32円(32pips)
リワード = 151.70 − 150.75 = 0.95円(95pips)
リスクリワード比 = 95 ÷ 32 ≒ 3.0
戻りを待つほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、戻らずに、そのまま上がると、エントリーできません。また、旧高値を割り込んで戻る場合は、ブレイクがダマシだった可能性も、あります。逆指値でブレイクの瞬間に入る場合は、エントリーできないリスクは、ありませんが、ダマシにかかったときの損失は、そのまま発生します。「チャネルの幅を足した目標」は、あくまで目安で、届かないことも、多いです。
2. 決済の目安にする
買いのポジションを持っているとき、「直近10本の安値を割ったら決済」といった、エントリーより短い期間のロワーラインを、決済の目安にする方法があります。図でも、上昇のあと、価格が、直近10本の安値(赤の点線)を割った場面が、決済の目安になっています。利益を伸ばしながら、トレンドの終わりを、機械的に判断しやすい一方、決済が、遅くなることが、あります。
3. レンジの上限・下限を知る
チャネルの幅が狭い(保ち合い)ときは、ブレイクアウトの準備として、見ることもできます。チャネルの幅の変化は、ボラティリティ(変動の大きさ)の目安にもなります。
他のチャネル・バンドとの違い
| ドンチャンチャネル | ボリンジャーバンド | ケルトナーチャネル | |
|---|---|---|---|
| 計算に使うもの | 直近N本の高値・安値 | 終値の標準偏差 | ATR |
| 中心線 | 高値と安値の中間 | 移動平均線 | 移動平均線(EMA) |
| 形 | 階段状(高値・安値が更新されるまで、動かない) | なめらか | なめらか |
| 向いている使い方 | ブレイクアウト、決済の目安 | レンジでの逆張りの目安、値動きの大きさ | トレンドの方向、押し目 |
ドンチャンチャネルは、「平均」ではなく、「極値(最高値・最安値)」を使うため、ブレイクの判断が、シンプルです。ボリンジャーバンド、ケルトナーチャネルについては、別の記事で解説しています。
注意点
1. レンジでは、ダマシが多い
レンジ相場では、高値・安値を抜けても、すぐ戻ることが、よくあります。図の左側が、その例です。相場がトレンドか、レンジかを、まず確認しましょう。環境認識については、別の記事で解説しています。
2. 損切りが、大きくなりやすい
チャネルの幅が広いと、反対側のラインや、ミドルラインまでの距離が、遠くなります。損切りの位置を、どこに置くか、あらかじめ決めておくことが、大切です。
3. 期間によって、サインが変わる
期間が短いほど、ブレイクの回数は多く、ダマシも多いです。期間が長いほど、ブレイクの回数は少なく、ダマシも少ない一方、サインは遅くなります。決まった正解はありません。
4. 計算に、今の足を含むかを確認する
ソフトによって、今の足を含む場合と、含まない場合があります。含む場合は、「超えた」ことを、判定できませんので、設定を確認しましょう。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、一気に高値・安値を更新し、チャネルが広がることが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、高値・安値を超えたように見えても、確定までに戻ることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
高値・安値を抜けたら、必ず続くと考える
ブレイクは、「その方向に動き出した可能性」を示すだけで、続く保証ではありません。
レンジでも、機械的にブレイクで入る
レンジでは、ダマシが続き、小さな損失が重なります。相場の状態を、先に確認しましょう。
ミドルラインを、「平均」と同じものと考える
ドンチャンチャネルのミドルラインは、高値と安値の中間で、移動平均線とは、別のものです。
期間を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「高値ブレイクで買えば勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- ドンチャンチャネルは、直近N本の最高値・最安値を結んだ帯。期間は、20がよく使われる。高値・安値の更新(ブレイクアウト)を、目に見える形にした指標
- ブレイクの判定には、今の足を含めない、直前N本を使うのが一般的
- 5本の例では、アッパー150.85円、ロワー150.00円、幅85pips
- ブレイクアウトの目安、決済の目安、レンジの把握に使う
- ブレイクの瞬間に入るとリスクリワード比は下がり、戻りを待つと上がるが、エントリーできないこともある
- レンジではダマシが多い。損切りの位置は、あらかじめ決める
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
