波動論とは
波動論とは、一目均衡表の考案者・一目山人(細田悟一)氏が体系化した、「値動きを、波の形に分けて、次の目標となる価格を計算する」考え方です。一目均衡表の「時間論」「波動論」「値幅観測論」という3つの柱のうち、価格の動きを扱う部分にあたります。値動きを、一定の形(波動)の組み合わせとして捉え、「次は、どこまで動くか」の目標値を、簡単な足し算・引き算で求めるのが、特徴です。一目均衡表の基本については、別の記事で解説しています。
基本となる形は、次の2つです。
| 波動 | 形 | 内容 |
|---|---|---|
| I波動(一波動) | 一方向への動き | 安値から高値、高値から安値へ、一直線に動く |
| N波動(三波動) | 「上昇 → 押し → 上昇」(または「下落 → 戻り → 下落」) | A→B→Cと動き、その後、さらに伸びる |
そして、A→B→Cという3点から、次の目標値を求める式が、N計算値・V計算値・E計算値・NT計算値です。これらを、まとめて「値幅観測」とも呼びます。

計算方法
上昇の波動で、次の3点を決めます。
A = 上昇の起点(安値)
B = 上昇の終点(高値)
C = 押し(Bのあとの安値)
そこから、次の4つの計算値を、求めます。
| 計算値 | 計算式 | 考え方 |
|---|---|---|
| N計算値 | C + (B − A) | Cから、A→Bと同じ値幅だけ、上げる |
| V計算値 | B + (B − C) | Bから、B→Cの押しと同じ値幅だけ、さらに上げる |
| E計算値 | B + (B − A) | Bから、A→Bと同じ値幅だけ、さらに上げる |
| NT計算値 | C + (C − A) | Cから、A→Cと同じ値幅だけ、上げる |
下降の波動では、上下を反対にして、計算します(A = 高値、B = 安値、C = 戻りの高値)。
N計算値 = C − (A − B)
V計算値 = B − (C − B)
E計算値 = B − (A − B)
NT計算値 = C − (A − C)
計算例:上昇の波動の場合
A = 150.00円(安値)、B = 151.00円(高値)、C = 150.40円(押しの安値)とします。
A→Bの値幅 = 151.00 − 150.00 = 1.00円(100pips)
B→Cの値幅 = 151.00 − 150.40 = 0.60円(60pips)
A→Cの値幅 = 150.40 − 150.00 = 0.40円(40pips)
N計算値 = 150.40 + 1.00 = 151.40円
V計算値 = 151.00 + 0.60 = 151.60円
E計算値 = 151.00 + 1.00 = 152.00円
NT計算値 = 150.40 + 0.40 = 150.80円
この例では、小さい順に、NT(150.80円)、N(151.40円)、V(151.60円)、E(152.00円)です。NT計算値が、B(151.00円)より下にあることに、注目してください。NT計算値は、「最も控えめな目標」で、これを超えられずに、Cを割る場合は、非常に弱い動きと、見られます。
図でも、価格がCから反発したあと、NT(150.80円)を超え、N(151.40円)とV(151.60円)の付近まで上がり、その後、下がっています。これは、あくまで、例として描いた動きで、実際に、計算値で止まる保証は、ありません。
計算例:押しの深さで、順番が変わる
同じ、A = 150.00円、B = 151.00円で、C(押しの安値)が違う場合を、比べます。
| 深い押し(C = 150.40円) | 浅い押し(C = 150.70円) | |
|---|---|---|
| N計算値 | 150.40 + 1.00 = 151.40円 | 150.70 + 1.00 = 151.70円 |
| V計算値 | 151.00 + 0.60 = 151.60円 | 151.00 + 0.30 = 151.30円 |
| E計算値 | 151.00 + 1.00 = 152.00円 | 151.00 + 1.00 = 152.00円 |
| NT計算値 | 150.40 + 0.40 = 150.80円 | 150.70 + 0.70 = 151.40円 |
Eは、押しの深さに関係なく、同じです。押しが浅いほど、N・NTの値は大きくなり、Vの値は小さくなります。押しが浅い(Cが高い)=買いの勢いが強いと考えられ、N・NTの目標も、高くなることに、なります。
計算値の位置づけ
| 計算値 | 一般的な位置づけ |
|---|---|
| NT計算値 | 最も控えめな目標。これを超えられないと、弱い動き |
| V計算値 | 押しの値幅を、Bの上に写した目標 |
| N計算値 | 最も基本となる目標。「A→Bと同じ値幅」で、Cから伸びる |
| E計算値 | 大きな目標。A→Bの動きが、もう1回起こるイメージ |
どれが「必ず到達する」ものでは、ありません。「価格が意識されやすい水準の目安」として、見るのが、基本です。
同じように、過去の値幅から、目標を出す方法として、フィボナッチ・エクスパンションがあります。N・E計算値は、フィボナッチ・エクスパンションの、100%・161.8%などに、近い考え方です。フィボナッチについては、別の記事で解説しています。
使い方
1. 利益確定の目標にする
押し(C)から買って、N計算値を、最初の目標、V・E計算値を、次の目標にする、といった使い方です。目標を、複数用意しておくと、段階的に、利益を確定しやすくなります。
計算例:押し目から買う場合
上の例(A = 150.00円、B = 151.00円、C = 150.40円)で、価格が、Cの付近から反発したとします。N計算値(151.40円)を、利益確定の目標とし、損切りは、C(150.40円)の10pips下(150.30円)とします。Cを割ると、「押し」という前提が崩れるためです。
150.45円(C付近)に指値で買う場合
エントリー 150.45円、損切り 150.30円、利確 151.40円(N計算値)
リスク = 150.45 − 150.30 = 0.15円(15pips)
リワード = 151.40 − 150.45 = 0.95円(95pips)
リスクリワード比 = 95 ÷ 15 ≒ 6.3
反発の陽線が確定した終値(150.55円)で買う場合
エントリー 150.55円、損切り 150.30円、利確 151.40円
リスク = 150.55 − 150.30 = 0.25円(25pips)
リワード = 151.40 − 150.55 = 0.85円(85pips)
リスクリワード比 = 85 ÷ 25 = 3.4
参考として、B(151.00円)を上に抜けた151.02円で買う場合
エントリー 151.02円、損切り 150.30円、利確 151.40円
リスク = 151.02 − 150.30 = 0.72円(72pips)
リワード = 151.40 − 151.02 = 0.38円(38pips)
リスクリワード比 = 38 ÷ 72 ≒ 0.5
押しの付近で買うと、リスクリワード比は大きく良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、Cの手前で反発すると、エントリーできません。反発を確認してから入るほうが、ダマシは減りやすい一方、リスクリワード比は下がります。Bを抜けてから入る場合は、N計算値までの距離が近く、リスクリワード比が1を下回るため、目標を、V・E計算値まで広げるか、見送る判断も、必要です。「A・B・Cが、あとから決まる」点にも、注意が必要です(注意点を参照)。
2. 目標までの距離から、見送りを判断する
エントリーの前に、「目標までの距離」と「損切りまでの距離」を、比べることが、できます。目標の計算値が近すぎる場合は、見送る、という判断にも、使えます。
3. 複数の計算値が重なる場所を探す
N・V・E計算値が近い価格帯に、集まることが、あります。さらに、前回の高値・安値や、キリの良い数字と重なると、意識されやすい水準として、見られます。
注意点
1. A・B・Cは、あとからでないと決まらない
Cが「押しの安値」だったかは、そのあとに価格が上がって、初めて分かります。押しの途中では、「まだ下がるのか、Cなのか」が、分かりません。リアルタイムで、A・B・Cを、正確に決めるのは、難しいです。
2. A・B・Cの選び方で、計算値が変わる
どの安値・高値を、A・B・Cとするかで、計算値は、大きく変わります。ルールを先に決めておかないと、「後から、都合の良い点を選ぶ」ことに、なりかねません。
3. 計算値で、必ず止まるとは限らない
計算値は、目安です。計算値を超えて、さらに伸びることも、手前で、反転することも、あります。
4. 時間足で、意味が変わる
短い時間足では、ノイズが多く、A・B・Cの判断も、ぶれやすいです。長い時間足の波動のほうが、意識されやすいと考えられます。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、計算値を一気に超えることが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足の高値・安値は、確定するまで変わります。A・B・Cも、足が確定してから、判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
計算値で、必ず反転すると考える
計算値は、「意識されやすい水準の目安」で、反転を保証するものでは、ありません。
Cが確定する前に、計算値を引く
押しの途中で、Cと思った点が、さらに下がることが、あります。反発が確認できてから、引くほうが、ぶれが少なくなります。
4つの計算値を、全部、目標にする
N・V・E・NT計算値を、すべて引くと、チャートが線だらけになります。使う計算値を、先に決めて、一貫して使うことが、大切です。
都合の良いA・B・Cを、選ぶ
後から見て、きれいに計算値に当たる点を選ぶと、将来には通用しません。ルールを、先に決めましょう。
検証せずに、使う
「N計算値まで上がる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- 波動論は、値動きを波の形で捉え、A→B→Cの3点から、次の目標値を計算する、一目均衡表の考え方
- N計算値 = C + (B − A)、V計算値 = B + (B − C)、E計算値 = B + (B − A)、NT計算値 = C + (C − A)。下降の波動では、上下を反対に計算する
- A = 150.00円、B = 151.00円、C = 150.40円の例では、NT = 150.80円、N = 151.40円、V = 151.60円、E = 152.00円
- 押しが浅いほど、N・NTは大きくなり、Vは小さくなる。Eは、押しの深さに関係しない
- 押し目の付近で買うとリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある。Bを抜けてから入ると、N計算値までの距離が近く、比が悪くなる
- A・B・Cは、あとからでないと決まらない。計算値で、必ず止まるとは限らない
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
