ケルトナーチャネルとは
ケルトナーチャネルとは、移動平均線を中心に、その上下に、ATR(値動きの幅の平均)の何倍かを足し引きして引いた、帯状のラインのことです。米国のチェスター・ケルトナー氏が考案した手法が元で、その後、リンダ・ラシュキ氏が、現在よく使われる形に改良したとされています。ボリンジャーバンドと似た見た目ですが、「幅の決め方」が違います。ボリンジャーバンドについては、別の記事で解説しています。
| ライン | 内容 |
|---|---|
| ミドルライン | 中心線。一般に、20期間の指数平滑移動平均線(20EMA) |
| アッパーライン | ミドルライン + ATR × 倍率 |
| ロワーライン | ミドルライン − ATR × 倍率 |
一般的な設定は、EMA20、ATR10、倍率2です(ソフトによって、異なる場合があります)。

ATRとは
ATR(Average True Range)とは、1本の足が、平均してどれくらい動いたかを表す指標です。まず、1本ごとの「トゥルーレンジ(TR)」を求めます。
TR = 次の3つのうち、最も大きい値
① 高値 − 安値
② |高値 − 前の足の終値|
③ |安値 − 前の足の終値|
②・③があるのは、前の足の終値から、ギャップ(窓)があった場合も、動いた幅に含めるためです。ATRは、このTRの平均です。ATRについては、別の記事でも解説しています。
計算例:5本のATRを計算する
手計算しやすいように、5本の足で計算します(実際には、10本などを使います)。直前の足の終値は、150.10円です。
| 足 | 高値 | 安値 | 前の終値 | ① 高値−安値 | ② 高値−前の終値 | ③ 安値−前の終値 | TR | 終値 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1本目 | 150.30 | 150.00 | 150.10 | 0.30 | 0.20 | 0.10 | 0.30 | 150.25 |
| 2本目 | 150.50 | 150.20 | 150.25 | 0.30 | 0.25 | 0.05 | 0.30 | 150.45 |
| 3本目 | 150.60 | 150.35 | 150.45 | 0.25 | 0.15 | 0.10 | 0.25 | 150.40 |
| 4本目 | 150.75 | 150.30 | 150.40 | 0.45 | 0.35 | 0.10 | 0.45 | 150.70 |
| 5本目 | 150.85 | 150.55 | 150.70 | 0.30 | 0.15 | 0.15 | 0.30 | 150.80 |
ATR(5本の単純平均)= (0.30 + 0.30 + 0.25 + 0.45 + 0.30)÷ 5
= 1.60 ÷ 5 = 0.32円(32pips)
ATRの平均の取り方には、単純平均のほか、ワイルダーが考案した平滑化の方法などがあり、ソフトによって異なります。
計算方法
ミドルライン = N期間のEMA
アッパーライン = ミドルライン + ATR × 倍率
ロワーライン = ミドルライン − ATR × 倍率
計算例:ケルトナーチャネルの計算
20EMAが150.40円、ATRが0.32円(32pips)、倍率2のとき、次のとおりです。
アッパー = 150.40 + 0.32 × 2 = 151.04円
ロワー = 150.40 − 0.32 × 2 = 149.76円
幅 = 151.04 − 149.76 = 1.28円(128pips)
ATRは、ローソク足の値幅の平均のため、ボリンジャーバンドのように、終値のばらつきだけでなく、高値・安値の動きも反映します。
ボリンジャーバンドとの違い
| ケルトナーチャネル | ボリンジャーバンド | |
|---|---|---|
| 中心線 | EMA(一般に) | SMA(一般に) |
| 幅の決め方 | ATR(足の値幅の平均) | 標準偏差(終値のばらつき) |
| 急な値動きへの反応 | ゆるやか | 敏感。大きく広がる |
| バンドの滑らかさ | 滑らか | 急に広がり、急に狭まる |
ボリンジャーバンドは、終値のばらつきを使うため、1本の大きな動きで、急に広がります。ケルトナーチャネルは、ATRを使うため、幅が滑らかに変化します。図でも、急な下落のあと、ボリンジャーバンド(点線)は大きく広がり、ケルトナーチャネル(実線)は、ゆるやかに広がっています。
また、ボリンジャーバンドが、ケルトナーチャネルの内側に入るほど狭まった状態を、値動きが小さい状態(スクイーズ)とみなす考え方もあります。スクイーズとエクスパンションについては、別の記事で解説しています。
ケルトナーチャネルが示すこと
価格が、アッパーラインの外 = 平均から、ATRの2倍以上、上に離れた
価格が、ミドルラインの上 = 平均より、買いが優勢
ミドルラインが右上がり = 上昇方向のトレンド
| 読み取れること | 内容 |
|---|---|
| トレンドの方向 | ミドルラインの傾きと、価格の位置 |
| 行き過ぎの目安 | アッパー・ロワーラインへの接触、超え |
| ボラティリティ | チャネルの幅(ATRの大きさ) |
使い方
1. トレンドの方向と、押し目を見る
ケルトナーチャネルは、トレンドの方向を見る道具として、使われることが、多いです。ミドルラインが右上がりで、価格がミドルラインより上にあれば、買い目線とします。価格がミドルラインまで戻って、反発する場面を、押し目として見ます。押し目(プルバック)については、別の記事で解説しています。
計算例:ミドルライン付近の押し目買い
上の例(20EMA 150.40円、アッパー151.04円)で、ミドルラインが右上がりだとします。価格が、ミドルラインの少し上の150.42円まで下がり、反発したとします。損切りは、ミドルラインの約25pips下(150.15円、ATRの約0.8倍)、利益確定は、アッパーライン(151.04円)とします。ミドルラインを大きく割ると、「上昇方向」という前提が崩れやすいためです。
150.42円に指値で買う場合
エントリー 150.42円、損切り 150.15円、利確 151.04円
リスク = 150.42 − 150.15 = 0.27円(27pips)
リワード = 151.04 − 150.42 = 0.62円(62pips)
リスクリワード比 = 62 ÷ 27 ≒ 2.3
反発の陽線が確定した終値(150.55円)で買う場合
エントリー 150.55円、損切り 150.15円、利確 151.04円
リスク = 150.55 − 150.15 = 0.40円(40pips)
リワード = 151.04 − 150.55 = 0.49円(49pips)
リスクリワード比 = 49 ÷ 40 ≒ 1.2
指値のほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、ミドルラインの手前で反発すると、エントリーできません。反発を確認してから入ると、ダマシは減りやすい一方、リスクリワード比は下がります。また、ミドルラインも、チャネルの位置も、時間とともに動くため、目標の位置は、見直す必要があります。
2. ブレイクアウトの目安にする
価格が、アッパーライン(またはロワーライン)を、終値で抜けたとき、強い動きの始まりの目安にする方法があります。ただし、抜けた後に、すぐ戻る(ダマシ)こともあります。
3. レンジでの逆張りの目安にする
レンジ相場では、ラインに触れたあと、ミドルラインへ戻る動きを狙う方法もあります。強いトレンドでは、ラインの外に出続けるため、相場の状態を、先に確認します。
注意点
1. 強いトレンドでは、ラインの外に出続ける
強いトレンドでは、価格が、ラインの外にとどまり続けます。逆張りは、特に注意が必要です。
2. 設定が違うと、見え方が変わる
EMAの期間・ATRの期間・倍率・ATRの平均の取り方が違うと、ラインの位置も変わります。他人のチャートと、そのまま比べないようにしましょう。
3. サインが、遅い
中心線がEMAでも、価格の動きに、遅れて反応します。天井や底の予測には、向いていません。
4. ギャップがあると、ATRが大きくなる
ギャップ(窓)があると、TRが大きくなり、ATRも大きくなります。FXは、ほぼ24時間取引のため、ギャップは、少ないですが、週明けの窓などが、含まれる場合は、ATRが一時的に大きくなることがあります。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、ATRが一気に大きくなり、チャネルが広がることが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、ラインに触れたように見えても、確定までに戻ることがあります。ATRも、足の動きとともに変わるため、確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
ボリンジャーバンドと、同じものと考える
見た目は似ていますが、幅の決め方が違います。急な値動きへの反応も、違います。
ラインに触れたら、すぐに逆張りする
トレンドが強いと、ラインの外に出続けます。ミドルラインの傾きと、ローソク足の形を、確認しましょう。
設定を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間や倍率を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
ATRの意味を、確認しない
ATRは、「値動きの大きさ」を表す数値で、方向は示しません。チャネルの幅が広がっても、上がるのか下がるのかは、分かりません。
検証せずに、使う
「ケルトナーチャネルで順張りすれば勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- ケルトナーチャネルは、移動平均線(一般にEMA)を中心に、ATRの何倍かを上下に足し引きして引いた、帯状のライン。一般的な設定は、EMA20・ATR10・倍率2
- ATRは、TR(高値−安値、高値−前の終値、安値−前の終値のうち最大)の平均。5本の例では、32pips
- ボリンジャーバンドと比べると、幅が滑らかに変化し、急な値動きに、敏感に反応しすぎない
- トレンドの方向、押し目、ブレイクの目安として使う。指値のほうがリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- 強いトレンドでは、ラインの外に出続ける
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
