移動平均線の傾きとは
移動平均線の傾きとは、移動平均線が、右上がりか、右下がりか、横ばいか、そしてどれくらいの勢いで動いているかを表したものです。移動平均線の向きは、「平均価格が、どちらへ動いているか」を示すため、トレンドがあるのか、ないのかを見分ける目安として使われます。移動平均線(SMA)については、別の記事で解説しています。
| 右上がり | 横ばい | 右下がり | |
|---|---|---|---|
| 平均価格の動き | 上がり続けている | ほとんど動いていない | 下がり続けている |
| 相場の見方 | 上昇トレンドの目安 | レンジの目安 | 下降トレンドの目安 |
| 向いている考え方 | 買い目線 | 順張りを控える、またはレンジの手法 | 売り目線 |

傾きの測り方
傾きは、見た目の角度ではなく、数値で測るのが基本です。チャートの縦横の縮尺を変えると、見た目の角度は、いくらでも変わってしまうためです。
傾き(円/本)= (今の移動平均線 − N本前の移動平均線)÷ N
1本あたり、何円(何pips)動いているかを出す方法です。「N本前」のNは、5本や10本など、自分で決めます。
計算例:傾きの計算
日足の25SMAが、今は150.45円、5本前は150.30円だったとします。
変化量 = 150.45 − 150.30 = 0.15円(15pips)
傾き = 0.15 ÷ 5 = 0.03円/本(3pips/本)
この「3pips/本」が、大きいのか、小さいのかは、その通貨ペア・時間足の、普段の動きの大きさによって変わります。そこで、「1本あたりの平均的な値動き」で割って、比べやすくします。
1本あたりの平均的な値動き = 直近20本の「終値の差(絶対値)」の平均
この平均が、0.40円(40pips)の場合は、次のとおりです。
傾き(比率)= 0.03 ÷ 0.40 = 0.075
別の例として、5本前が149.95円、今が150.45円なら、次のとおりです。
変化量 = 150.45 − 149.95 = 0.50円(50pips)
傾き = 0.50 ÷ 5 = 0.10円/本(10pips/本)
傾き(比率)= 0.10 ÷ 0.40 = 0.25
「しきい値を0.15とする」と、1つ目の例(0.075)は横ばい、2つ目の例(0.25)は上向きと判定できます。この「0.15」は、あくまで一例です。図の下段は、この方法で計算した傾きの推移で、灰色の帯(±0.15)の中にあるときが、横ばいです。
しきい値の決め方
「どれくらいなら、横ばいと見なすか」は、決まった数字がありません。通貨ペア・時間足・移動平均線の期間で、変わります。
| 決め方 | 内容 |
|---|---|
| 過去のチャートで確認 | 「レンジだった期間」の傾きを、いくつか集めて、その範囲をしきい値にする |
| 平均的な値動きで割る | 本記事の方法。通貨ペアが違っても、比べやすい |
| パーセントで見る | 傾きを、価格に対する割合(%/本)で表す |
サンプルが少ないと、しきい値は安定しません。多くの期間で、確認しましょう。
傾きが示すこと
移動平均線が、右上がり = 直近N本の平均が、前よりも高くなっている
傾きが急 = 平均の上昇が、速い
傾きがゆるやかになる = 上昇の勢いが、弱まってきている
| 状態 | 読み取れること |
|---|---|
| 急な右上がり | 勢いの強い上昇。ただし、価格が平均から離れていることもある |
| ゆるやかな右上がり | 安定した上昇。押し目を探しやすい |
| 横ばい | 方向感がない。レンジの可能性 |
| 傾きが、だんだん小さくなる | 勢いが、衰え始めている |
| 向きが、逆に変わる | トレンドの転換、または一時的な戻りの可能性 |
傾きは、「今、トレンドがあるか」を見る道具です。「どこで天井・底をつけるか」を、予測する道具ではありません。
傾きと、価格・他の線との関係
傾きの変化は、価格との交差や、2本の移動平均線の交差よりも、早く現れることがあります。
① 価格が、動き始める
② 移動平均線の傾きが、小さくなり、横ばいに近づく ← 傾きの変化
③ 価格が、移動平均線を、終値で抜ける ← 価格との交差
④ 短期線が、長期線を抜ける ← ゴールデンクロス・デッドクロス
交差は、「変わった」ことを確認するサインで、傾きは、「変わりつつある」ことを示す目安です。ただし、傾きが小さくなっても、そのまま、また動き出すことは、よくあります。
| 傾きの確認 | 価格と移動平均線の交差 | ゴールデンクロス・デッドクロス | |
|---|---|---|---|
| 見るもの | 1本の線の向きと勢い | 価格と1本の線の位置 | 2本の線の交差 |
| サインの種類 | 「トレンドの有無」の目安 | 短期の押し引き | 「変わった」ことの確認 |
| 遅れ | 小さい | 小さい | 大きい |
| ダマシ | 横ばいの付近で、向きが頻繁に変わる | レンジで多い | レンジで多い |
ゴールデンクロスとデッドクロス、パーフェクトオーダーについては、別の記事で解説しています。
使い方
1. レンジとトレンドを区別する
傾きが、しきい値の範囲内(横ばい)のときは、順張りを控える、しきい値を超えているときだけ、順張りを考える、という使い方です。ダマシの多いレンジでの取引を、減らすことを目的にします。環境認識については、別の記事で解説しています。
2. 順張りの方向を決める
傾きが右上がりなら、買い目線のみ、右下がりなら、売り目線のみとします。長期の移動平均線の傾きと、そろっていると、方向が、より確かになると考えられます。
3. 押し目を探す環境にする
移動平均線が、右上がりのまま、価格が移動平均線まで下がって反発する場面を、押し目として見ます。押し目(プルバック)については、別の記事で解説しています。
計算例:傾きを使った押し目買い
上の例(傾き比率0.25、右上がりの25SMA)で、価格が、25SMA(150.45円)の少し上の150.50円まで下がり、反発したとします。前回高値は、151.10円です。損切りは、25SMAの10pips下(150.35円)、利益確定は前回高値(151.10円)とします。25SMAを割ると、傾きが小さくなり、「右上がり」という前提が崩れやすいためです。
150.50円に指値で買う場合
エントリー 150.50円、損切り 150.35円、利確 151.10円
リスク = 150.50 − 150.35 = 0.15円(15pips)
リワード = 151.10 − 150.50 = 0.60円(60pips)
リスクリワード比 = 60 ÷ 15 = 4.0
反発の陽線が確定した終値(150.62円)で買う場合
エントリー 150.62円、損切り 150.35円、利確 151.10円
リスク = 150.62 − 150.35 = 0.27円(27pips)
リワード = 151.10 − 150.62 = 0.48円(48pips)
リスクリワード比 = 48 ÷ 27 ≒ 1.8
指値のほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、25SMAの手前で反発すると、エントリーできません。また、価格が少し下がっただけで、損切りになりやすい点にも注意します。反発を確認してから入るほうが、勝率は高くなりやすい一方、リスクリワード比は下がります。傾きは、「入ってよい環境か」を確認するもので、入る位置そのものは、別に決める必要があります。
4. 利益確定・撤退の目安にする
傾きが急に小さくなる、または逆向きになることを、決済や、新規の見送りの目安にする方法があります。ただし、傾きが変わった時点では、すでに価格が大きく戻っていることも、あります。
期間による違い
| 短い期間(例:10本) | 長い期間(例:75本) | |
|---|---|---|
| 傾きの変化 | 早い。頻繁に向きが変わる | 遅い。向きがなかなか変わらない |
| ダマシ | 多い | 少ない |
| 向いている見方 | 短期の勢いの確認 | 大きな方向の確認 |
期間が短いほど、傾きは敏感に変わり、横ばいと上向きを、行き来しやすくなります。期間が長いほど、傾きは安定しますが、変化の確認は遅くなります。どの期間が最適かは、通貨ペア・時間足・相場の状況で変わります。
注意点
1. 見た目の角度で、判断しない
チャートの縦軸・横軸の縮尺で、角度は大きく変わります。「45度」といった、見た目の角度を基準にしないようにしましょう。数値で測ることが、基本です。
2. 横ばいと上向きの境目で、判定が揺れる
傾きが、しきい値の付近にあるときは、判定が、足ごとに変わります。「3本連続でしきい値を超えたら、上向きと判定する」など、確認の条件を決めておくと、揺れを減らせます。
3. サインが、遅い
移動平均線は、過去の価格の平均です。傾きに現れるのは、価格が動いたあとです。初動を、捉える道具ではありません。
4. 傾きが急でも、続くとは限らない
急な右上がりは、価格が平均から大きく離れている状態でもあります。そこから新規で入ると、反動に当たりやすくなります。移動平均線乖離率については、別の記事で解説しています。
5. 時間足で、意味が変わる
短い時間足の傾きは、ノイズが多く、長い時間足の傾きのほうが、意識されやすいと考えられます。上位足の方向と、そろっているかも、確認しましょう。上位足については、別の記事で解説しています。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足の終値は、確定するまで変わります。傾きの値も、それにつれて動くため、確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
見た目の角度だけで判断する
縮尺を変えれば、同じ線でも、急にも、ゆるやかにも見えます。数値で、確認しましょう。
右上がりなら、すぐに買う
傾きは、「入ってよい環境か」の確認で、入る位置を示すものではありません。価格が離れているときに飛びつくと、損切りが遠くなり、リスクリワード比が悪くなりがちです。
横ばいを、トレンドの始まりと決めつける
横ばいのあと、また元の方向へ動くこともあります。傾きの変化だけでは、転換とは言えません。
期間を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間やしきい値を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「傾きが上向きなら勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- 移動平均線の傾きは、移動平均線の向きと、勢いを表したもの。トレンドの有無を見る目安になる
- 見た目の角度ではなく、「(今の値 − N本前の値)÷ N」で、数値として測る
- 1本あたりの平均的な値動きで割ると、通貨ペアや時間足が違っても、比べやすい
- 「何なら横ばいか」の基準は、決まっていない。過去のチャートで、自分で確認して決める
- 横ばいのときは順張りを控え、右上がり・右下がりのときに、その方向を考える
- 傾きの変化は、交差より早く現れることがあるが、ダマシも多い
- 傾きは「入ってよい環境か」の確認で、入る位置は別に決める。指値のほうがリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
