平滑移動平均線(SMMA)とは
平滑移動平均線(SMMA:Smoothed Moving Average)とは、前の値をほとんど残したまま、新しい終値を少しずつ混ぜていく移動平均線です。単純移動平均線(SMA)や指数平滑移動平均線(EMA)より、さらになめらかで、反応がゆっくりです。「修正移動平均線(Modified Moving Average)」「Wilder’s Smoothing」「RMA」などの名前で呼ばれることもあります。考案者のJ・W・ワイルダー氏が、RSIやATR、ADXの計算に使ったことで知られています。
MT4・MT5では「Smoothed」という名前で、移動平均線の計算方法として選べます。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Smoothed Moving Average(SMMA) |
| 計算に使う値 | 終値(設定で、他の価格に変えられる) |
| 期間 | 前の値を残す度合いを決める数値(14、50など) |
| 特徴 | 反応がゆっくりで、なめらか |
計算方法
SMMAは、「前のSMMAを(N−1)の重みで」「今の終値を1の重みで」足し合わせ、Nで割ります。
今のSMMA = (前のSMMA × (N − 1) + 今の終値) ÷ N
= 前のSMMA + (今の終値 − 前のSMMA) ÷ N
最初の値は、直前のN本のSMAを使うのが、一般的な方法です。
これは、EMAの平滑化係数αを「2 ÷ (N+1)」ではなく「1 ÷ N」にしたものと、同じです。
| 期間N | SMMAの係数 1 ÷ N | 同じ期間のEMAの係数 2 ÷ (N+1) |
|---|---|---|
| 5 | 0.200 | 0.333 |
| 10 | 0.100 | 0.182 |
| 14 | 0.071 | 0.133 |
同じ期間なら、SMMAの係数のほうが小さく、新しい終値の影響が小さいことが分かります。また、SMMA(N)は、EMA(2N − 1)と同じ動きになります。
SMMA(5) の係数 = 1 ÷ 5 = 0.2
EMA(9) の係数 = 2 ÷ (9 + 1) = 0.2
→ SMMA(5) と EMA(9) は、同じ値になる
計算例:5本のSMMA
SMA・EMA・WMAの記事と同じ、次の終値を使います。5本目時点の5SMAは150.34円で、これをSMMAの最初の値とします。
| 足 | 終値 |
|---|---|
| 1本目 | 150.10円 |
| 2本目 | 150.30円 |
| 3本目 | 150.20円 |
| 4本目 | 150.50円 |
| 5本目 | 150.60円 |
| 6本目 | 150.80円 |
| 7本目 | 150.40円 |
【5本目】5SMMA = 5SMA = 150.34円(初期値)
【6本目】終値 150.80円
5SMMA = (150.34 × 4 + 150.80) ÷ 5
= (601.36 + 150.80) ÷ 5
= 752.16 ÷ 5
≒ 150.43円
【7本目】終値 150.40円
5SMMA = (150.4320 × 4 + 150.40) ÷ 5
= (601.728 + 150.40) ÷ 5
= 752.128 ÷ 5
≒ 150.43円
| 6本目 | 7本目 | 6本目→7本目の動き | |
|---|---|---|---|
| 終値 | 150.80円 | 150.40円 | −40pips(下落) |
| 5SMA | 150.48円 | 150.50円 | +2pips |
| 5EMA | 150.49円 | 150.46円 | −3pips |
| 5WMA | 150.57円 | 150.55円 | 約−2.7pips |
| 5SMMA | 150.43円 | 150.43円 | 約−0.6pips |
6本目に20pips上がった終値(150.60円→150.80円)に対して、5SMMAは、150.34円から150.43円へ、9pipsしか動いていません。7本目に40pips下がっても、約0.6pipsしか動きません。SMMAは、1本の値動きに、ほとんど反応しないことが分かります。
遅れの大きさ
一定の傾きで動き続ける価格に対する、SMMAの遅れは、おおよそ(N − 1)本分です。
SMA :(N − 1) ÷ 2 本分
WMA :(N − 1) ÷ 3 本分
EMA :(N − 1) ÷ 2 本分
SMMA :(N − 1) 本分
N = 14 の場合
SMA = 13 ÷ 2 = 6.5本分
WMA = 13 ÷ 3 ≒ 4.3本分
EMA = 13 ÷ 2 = 6.5本分
SMMA = 13本分
同じ期間なら、SMMAの遅れは、SMA・EMAの約2倍です。SMMAを使うときは、同じ期間のSMAより、ずっとゆっくり動くことを、理解しておく必要があります。
計算例:急に動いたときの追いつき方
価格が、1回で100pips上がり、そのまま横ばいになった場合を、考えます。期間は10です。
1本目の上昇幅
SMA = 100pips × 1/10 = 10pips
EMA = 100pips × 2/11 ≒ 18pips
SMMA = 100pips × 1/10 = 10pips
10本後に残る、価格との差
SMA = 0pips(完全に追いつく)
EMA = 100 × (1 − 2/11)^10 ≒ 13.5pips
SMMA = 100 × (1 − 1/10)^10 ≒ 34.9pips
SMMAは、10本たっても、約35pips分が追いつかず、残ります。EMAの約2.6倍です。SMMAは、急な変化にゆっくり反応する分、一時的なノイズに振り回されにくいといえます。
他の種類との違い
| SMA | EMA | WMA | SMMA | |
|---|---|---|---|---|
| 新しい終値の重み | 1/N | 2/(N+1) | 2/(N+1) | 1/N |
| 古い値の重み | N本前まで同じ | 徐々に減る(ゼロにならない) | N本前でほぼゼロ | 徐々に減る(ゼロにならない) |
| 遅れ(N本) | (N−1)/2 | (N−1)/2 | (N−1)/3 | N−1 |
| なめらかさ | なめらか | やや敏感 | やや敏感 | 最もなめらか |
| ダマシ | 比較的少ない | やや多い | やや多い | 最も少ない傾向 |
| 主な使い道 | 標準的 | 短〜中期の流れ | 転換の早い把握 | 長期の方向、他の指標の計算 |
SMMAは、動きが遅い分、ダマシが少ない一方、転換を知らせるのも遅くなります。EMA、WMAについては、別の記事で解説しています。
使い方
1. 大きな方向を確認する(方向フィルター)
期間の長いSMMA(50など)は、小さな値動きにほとんど反応しないため、「今は買い目線か、売り目線か」を決める目安に使えます。価格がSMMAの上、かつSMMAが右上がりなら、買い目線という使い方です。
2. 押し目・戻りの目安にする
上昇トレンドで、価格がSMMAまで下がって、反発する場面を、押し目として見ます。SMMAは動きが遅いため、深い押しでも、サポートとして機能するかを、見ることになります。押し目(プルバック)については、別の記事で解説しています。
計算例:押し目買い
上昇トレンド(50SMMAが右上がり、価格はSMMAの上)で、価格が、50SMMA(150.20円)の少し上の150.30円まで下がり、反発の陽線が150.45円で引けたとします。前回高値は151.05円です。損切りは、SMMAの少し下(150.10円)、利益確定は前回高値(151.05円)とします。SMMAを割ると、「大きな流れが支える」という前提が崩れるためです。
反発の陽線が確定した終値(150.45円)で買う場合
エントリー 150.45円、損切り 150.10円、利確 151.05円
リスク = 150.45 − 150.10 = 0.35円(35pips)
リワード = 151.05 − 150.45 = 0.60円(60pips)
リスクリワード比 = 60 ÷ 35 ≒ 1.7
押しの底付近(150.30円)に指値で買う場合
エントリー 150.30円、損切り 150.10円、利確 151.05円
リスク = 150.30 − 150.10 = 0.20円(20pips)
リワード = 151.05 − 150.30 = 0.75円(75pips)
リスクリワード比 = 75 ÷ 20 ≒ 3.8
指値のほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、底の手前で反発すると、エントリーできません。また、SMMAは動きが遅いため、価格との距離が離れやすく、押しがSMMAまで届かない場面も多いです。エントリーの機会は、SMA・EMAより少なくなります。
3. 他の指標の土台として使われる
RSI、ATR、ADXなど、ワイルダー氏が考案した指標は、SMMAと同じ平滑化で計算されます。RSI、ATR、DMI・ADXについては、別の記事で解説しています。ビル・ウィリアムズ氏のアリゲーターも、SMMAを使っているとされます。
注意点
1. 反応が遅く、転換を知るのも遅い
SMMAは、(N − 1)本分遅れるため、転換点では、すでに大きく動いてから、向きを変えることになります。天井や底の予測には、向いていません。
2. エントリーの機会が少ない
価格がSMMAから離れやすく、押しや戻りがSMMAまで届かないことが、多いです。
3. ツールによって、初期値や名称が違う
「Smoothed」「SMMA」「RMA」「Modified MA」など、ツールによって名前が違い、初期値の決め方も少し違うことがあります。数値が、少しずれる場合があります。普段使うツールで、確認しましょう。
4. 期間に、魔法の数字はない
「この期間なら勝てる」というものは、ありません。過去のチャートで、通貨ペア・時間足ごとに確認することが大切です。
5. 時間足で、意味が変わる
短い時間足のSMMAは、ノイズが多いです。長い時間足のSMMAのほうが、意識されやすいと考えられます。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足の終値は、確定するまで変わります。SMMAの値も、それにつれて動くため、確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
SMMAを、SMAと同じ感覚で使う
同じ期間なら、SMMAはSMAよりずっとゆっくり動きます。SMAの期間と、SMMAの期間を、同じ感覚で比べないことが大切です。SMMA(N)は、EMA(2N − 1)と同じ動きと考えると、分かりやすいです。
動きが遅いことを、「精度が高い」と考える
なめらかで、ダマシが少ないことと、利益が出ることは、別です。転換が遅れる分、利益が減ることもあります。
押し目を待ち続ける
SMMAまで下がらない場面では、エントリーできないまま、上がり続けることがあります。
期間を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「SMMAなら、ダマシが少ない」と聞いても、実際に利益につながるかは、通貨ペア・時間足・相場の状況で変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- SMMAは、前の値をほとんど残して、新しい終値を少しずつ混ぜる移動平均線。今のSMMA = (前のSMMA × (N − 1) + 今の終値) ÷ N
- EMAの係数を、2 ÷ (N+1) から 1 ÷ N にしたもので、SMMA(N)は、EMA(2N − 1)と同じ動き
- 遅れは、おおよそ(N − 1)本で、SMA・EMAの約2倍。最もなめらかで、ダマシが少ない一方、転換を知るのも遅い
- 大きな方向の確認、深い押し目の目安として使える。エントリーの機会は少なくなる
- RSI・ATR・ADXなど、ワイルダー氏の指標の計算に使われる
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
