加重移動平均線(WMA)とは
加重移動平均線(WMA:Weighted Moving Average)とは、直近N本の終値に、新しいものほど大きな重みをつけて平均した移動平均線です。単純移動平均線(SMA)は、すべての終値を同じ重さで平均します。WMAは、最新の終値の重みを最も大きくし、1本古くなるごとに、重みを一定の量ずつ減らします。そのため、同じ期間のSMAより、直近の値動きに素早く反応します。SMAについては、別の記事で解説しています。
指数平滑移動平均線(EMA)も、新しい値を重くみる点は同じですが、重みの減り方が違います。EMAについては、別の記事で解説しています。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Weighted Moving Average(WMA) |
| 計算に使う値 | 終値(設定で、他の価格に変えられる) |
| 期間 | 重みをつける本数(5、10、20など) |
| 特徴 | 直近を重視。SMAより遅れが小さい |
MT4・MT5には「Linear Weighted(線形加重)」という名前で入っています。TradingViewなど、ツールによって「WMA」と表示されます。
計算方法
N本の終値に、新しいものから順に「N、N−1、…、2、1」の重みをかけて足し、重みの合計で割ります。
WMA = (最新×N + 1本前×(N−1) + … + (N−1)本前×1) ÷ (N + (N−1) + … + 1)
重みの合計 = N × (N + 1) ÷ 2
| 期間N | 重みの並び(新しい→古い) | 重みの合計 | 最新の終値が占める割合 |
|---|---|---|---|
| 5 | 5、4、3、2、1 | 15 | 5 ÷ 15 ≒ 33.3% |
| 10 | 10、9、8、…、1 | 55 | 10 ÷ 55 ≒ 18.2% |
| 25 | 25、24、23、…、1 | 325 | 25 ÷ 325 ≒ 7.7% |
SMAでは、最新の終値が占める割合は、5期間で20%、10期間で10%です。WMAのほうが、直近を大きく反映しています。
計算例:5本のWMA
SMA・EMAの記事と同じ、次の終値を使います。
| 足 | 終値 | 重み(5本目時点) |
|---|---|---|
| 1本目 | 150.10円 | 1 |
| 2本目 | 150.30円 | 2 |
| 3本目 | 150.20円 | 3 |
| 4本目 | 150.50円 | 4 |
| 5本目 | 150.60円 | 5 |
5本目時点の5WMA
= (150.60×5 + 150.50×4 + 150.20×3 + 150.30×2 + 150.10×1) ÷ 15
= (753.00 + 602.00 + 450.60 + 300.60 + 150.10) ÷ 15
= 2256.30 ÷ 15
= 150.42円
同じ5本目時点で、5SMAは150.34円でした。終値が上昇してきているため、新しい値を重くみるWMAのほうが、8pips高くなっています。
6本目(終値150.80円)、7本目(終値150.40円)の値は、次のとおりです。
【6本目】5WMA
= (150.80×5 + 150.60×4 + 150.50×3 + 150.20×2 + 150.30×1) ÷ 15
= 2258.60 ÷ 15 ≒ 150.57円
【7本目】5WMA
= (150.40×5 + 150.80×4 + 150.60×3 + 150.50×2 + 150.20×1) ÷ 15
= 2258.20 ÷ 15 ≒ 150.55円
| 6本目 | 7本目 | 6本目→7本目の動き | |
|---|---|---|---|
| 終値 | 150.80円 | 150.40円 | −40pips(下落) |
| 5SMA | 150.48円 | 150.50円 | +2pips(上がった) |
| 5EMA | 150.49円 | 150.46円 | −3pips |
| 5WMA | 150.57円 | 150.55円 | 約−2.7pips |
終値が40pips下がった7本目で、5SMAは上がり、5WMAと5EMAは下がっています。WMAも、SMAのように「古い値が外れる」影響はありますが、外れる値の重みが1(最小)のため、影響が小さいです。
遅れの大きさ
一定の傾きで動き続ける価格に対する、移動平均線の遅れは、次のとおり、おおよその目安が計算できます。
SMA :(N − 1) ÷ 2 本分
WMA :(N − 1) ÷ 3 本分
EMA :(N − 1) ÷ 2 本分
N = 10 の場合
SMA = 9 ÷ 2 = 4.5本分
WMA = 9 ÷ 3 = 3本分
EMA = 9 ÷ 2 = 4.5本分
同じ期間なら、WMAの遅れは、SMAの約3分の2です。WMAは、トレンドへの追従が速いといえます。
| SMA | EMA | WMA | |
|---|---|---|---|
| 重みの減り方 | 減らない(全て同じ) | 一定の割合で減る(ゼロにはならない) | 一定の量で減る(N本前で、ほぼゼロ) |
| 一定の傾きでの遅れ | (N−1)÷2本 | (N−1)÷2本 | (N−1)÷3本 |
| 急な変化への反応 | ゆっくり | 速い | 速い |
| 古い値が外れる影響 | 大きい | ほとんどない | 小さい |
| なめらかさ | なめらか | やや敏感 | やや敏感 |
WMAは、遅れが小さい分、小さな値動きにも反応しやすく、ダマシも増えやすいことを、理解しておく必要があります。
移動平均線が示すこと
見方は、SMA・EMAと同じです。傾き、価格との位置、押し目・戻りの目安を見ます。
| 見るポイント | 内容 |
|---|---|
| 傾き | 右上がりなら上昇、右下がりなら下降、横ばいならレンジの目安 |
| 価格との位置 | 価格がWMAの上なら買い優勢、下なら売り優勢の目安 |
| 転換の早さ | SMAより早く、向きを変える |
使い方
転換の兆しを、早めにつかむ
WMAは、SMAより早く向きを変えるため、下降から上昇への切り替わりを、早く見つける目的で使われます。
計算例:転換を、どこで見つけるか
下降が続いたあと、底をつけて上昇に転じた場面を、考えます。5SMA・5EMA・5WMAの値は、次のとおりです。
| 足 | 終値 | 5SMA | 5EMA | 5WMA |
|---|---|---|---|---|
| 5本目 | 150.400円 | 150.652円 | 150.652円 | 150.568円 |
| 6本目 | 150.300円 | 150.532円 | 150.535円 | 150.451円 |
| 7本目 | 150.220円 | 150.420円 | 150.430円 | 150.347円 |
| 8本目 | 150.180円 | 150.324円 | 150.347円 | 150.267円 |
| 9本目 | 150.260円 | 150.272円 | 150.318円 | 150.245円 |
| 10本目 | 150.380円 | 150.268円 | 150.338円 | 150.281円 |
| 11本目 | 150.520円 | 150.312円 | 150.399円 | 150.365円 |
価格が移動平均線の上で引けた最初の足と、移動平均線が上向きに変わった最初の足は、次のとおりです。
| 終値が平均線を上回った足 | 平均線が上向きに変わった足 | |
|---|---|---|
| 5WMA | 9本目(150.260 > 150.245) | 10本目(150.245 → 150.281) |
| 5EMA | 10本目(150.380 > 150.338) | 10本目(150.318 → 150.338) |
| 5SMA | 10本目(150.380 > 150.268) | 11本目(150.268 → 150.312) |
WMAは、9本目の時点で、終値が平均線を上回り、SMA・EMAより1本早く反応しています。
計算例:エントリーの早さによる違い
損切りは、底(8本目の終値150.18円)の5pips下(150.13円)、利益確定は、下落の起点の150.90円とします。底を割ると、「底打ち」という前提が崩れるためです。
5WMAの上で引けた9本目の終値(150.26円)で買う場合
エントリー 150.26円、損切り 150.13円、利確 150.90円
リスク = 150.26 − 150.13 = 0.13円(13pips)
リワード = 150.90 − 150.26 = 0.64円(64pips)
リスクリワード比 = 64 ÷ 13 ≒ 4.9
5SMA・5EMAの上で引けた10本目の終値(150.38円)で買う場合
エントリー 150.38円、損切り 150.13円、利確 150.90円
リスク = 150.38 − 150.13 = 0.25円(25pips)
リワード = 150.90 − 150.38 = 0.52円(52pips)
リスクリワード比 = 52 ÷ 25 ≒ 2.1
早く入るほど、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、9本目の終値は、5WMAを約1.5pips上回っただけです。このわずかな差は、すぐに逆転しやすく、ダマシになりやすいことを、理解しておく必要があります。早い反応は、ダマシと隣り合わせです。
注意点
1. ダマシが増えやすい
敏感な分、小さな値動きにも反応します。レンジでは、価格との交差が増えます。傾きを、まず確認しましょう。
2. 使っている人が、SMA・EMAより少ない
多くの人が見ている線ほど、意識されやすいと考えられます。WMAは、SMA・EMAより使う人が少ないため、その意味では、サポート・レジスタンスとして意識されにくい可能性があります。
3. ツールによって、名前や初期設定が違う
MT4・MT5では「Linear Weighted」と表示されます。ツールによって、表示名や計算方法の細部が違うことがあります。普段使うツールで、確認しましょう。
4. 期間に、魔法の数字はない
「この期間なら勝てる」というものは、ありません。過去のチャートで、通貨ペア・時間足ごとに確認することが大切です。
5. 時間足で、意味が変わる
短い時間足のWMAは、ノイズが多いです。長い時間足のWMAのほうが、意識されやすいと考えられます。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足の終値は、確定するまで変わります。WMAの値も、それにつれて動くため、確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
WMAは、SMAより「優れている」と考える
WMAは、遅れが小さい分、ダマシも増えます。どちらが良いかは、使い方次第です。
WMAとEMAを、同じものと考える
どちらも新しい値を重くみますが、重みの減り方が違います。EMAは古い値の重みがゼロにならず、WMAはN本前でほぼゼロになります。
早い反応を、早い利益と考える
早く入れるのは、リスクリワード比が良くなる反面、ダマシにかかる確率も上がるためです。
期間を、頻繁に変える
結果が悪いたびに、期間を変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「WMAは転換が早い」と聞いても、実際に利益につながるかは、通貨ペア・時間足・相場の状況で変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- WMAは、新しい終値ほど大きな重みをつけて平均する移動平均線。重みは、最新からN、N−1、…、1
- 計算は、「重みをかけた終値の合計 ÷ 重みの合計」。重みの合計は、N × (N + 1) ÷ 2
- 一定の傾きでの遅れは、おおよそ(N − 1) ÷ 3本で、SMA・EMAの(N − 1) ÷ 2本より小さい
- 転換を早く見つけやすいが、ダマシも増えやすい
- 早くエントリーするほど、リスクリワード比は良くなるが、ダマシのリスクも上がる
- EMAとは、重みの減り方が違う。EMAは古い値がゼロにならず、WMAはN本前でほぼゼロ
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
