サイクルの失敗とは
サイクル理論では、上昇が続いている間は、周期の安値が、前の周期の安値より、高くなる(切り上がる)と考えます。この安値が、前の安値を割り込んだとき、その周期が「失敗した(フェイル)」と、呼ばれることがあります。
メリマン(Raymond A. Merriman)の公式サイトの用語集では、強気相場を「同じ種類の周期の、高値と安値が、連続して、切り上がる」状態、弱気相場を「連続して、切り下がる」状態と、説明しています。また、トレンドは、1つ上の周期で決まる、とも説明されています。一方で、「失敗」という言葉の定義は、この用語集では、確認できていません。この記事の「失敗」は、周期理論の解説で、使われる意味に、沿って、整理した、考え方です。
| 内容 | |
|---|---|
| 維持 | 周期の安値が、前の安値より、上で止まる(切り上がる) |
| 失敗 | 周期の安値が、前の安値を、割り込む(切り下がる) |
周期の長さの目安(PCは週足24〜35本、MCは日足35〜45本、TCは4時間足60〜80本)は、別の記事で解説しています。この記事では、TC(4時間足)の例で、安値割れの見方と、トレードでの扱いを、整理します。

上の図は、説明のために作った例です。0本目の安値①から、70本目の安値②、140本目の安値③まで、TCの周期は、どちらも70本で、同じです。130本目までは、上段と下段で、同じ値動きにしてあります。そこから先で、安値③が、②を割るか、維持するかが、分かれます。実際の相場が、このようにきれいに動くことは、少ないです。
失敗の判定のしかた
この記事では、次のルールで、判定します(例です。決まった基準は、ありません)。
- 前の周期の安値(安値②)の価格を、確認しておく
- 周期の窓(安値②から、60〜80本後)の中で、安値を探す
- その安値が、安値②より、低ければ「失敗」、高ければ「維持」
窓 = 安値②の本数 + 60 〜 安値②の本数 + 80
= 70 + 60 〜 70 + 80
= 130本目 〜 150本目
ヒゲの先で割ったか、終値で割ったか、で、判定は、変わります。この記事の例では、ヒゲの先(安値)で、判定します。ヒゲだけで、一瞬割って、すぐ戻るだけの動きは、「流動性スイープ」として、整理されることがあります(別の記事で解説しています)。失敗と、スイープは、見た目が、似ているため、あとの動きまで、見て、区別する必要があります。
計算例
安値を割った幅
例の価格は、次のとおりです(例の数値です)。
| 安値① | 安値② | 安値③(失敗の例) | 安値③(維持の例) | |
|---|---|---|---|---|
| 本数 | 0本目 | 70本目 | 140本目 | 140本目 |
| 価格 | 149.50円 | 149.80円 | 149.35円 | 149.95円 |
①から②:149.80 − 149.50 = 0.30円(+30pips)切り上がり
失敗の例の③:
②との差 = 149.80 − 149.35 = 0.45円(45pips、②を割る)
①との差 = 149.50 − 149.35 = 0.15円(15pips、①も割る)
維持の例の③:
②との差 = 149.95 − 149.80 = 0.15円(+15pips、②を上回る)
失敗の例では、1つ前の安値②だけでなく、2つ前の安値①も、割っています。このとき、上昇の流れが、崩れた可能性が、あると、見る考え方が、あります。ただし、それは、見方の1つで、必ず、そうなるわけでは、ありません。
山の位置と失敗
2つ目の周期(70〜140本目)の山は、112本目の150.90円でした。トランスレーションの位置を、計算します(トランスレーションは、別の記事で解説しています)。
周期の長さ = 140 − 70 = 70本、中心 = 70 + 35 = 105本目
山の位置(%)= (112 − 70)÷ 70 × 100 = 42 ÷ 70 = 60.0 %(右寄り)
この例では、山の位置が、右寄り(60.0%)でした。それでも、次の安値③は、失敗の例では、②を割っています。右寄りだからといって、次の安値が、必ず、維持されるとは、限りません。
周期の長さの確認
1つ目の周期:0〜70本 → 70本(窓 60〜80本の中)
2つ目の周期:70〜140本 → 70本(窓 60〜80本の中)
140本 ÷ 6(4時間足は1日6本)≒ 23.3日
失敗の例でも、周期の長さは、通常の範囲(60〜80本)の中です。延長や短縮とは、別の話で、周期の長さが、普通でも、安値は、割れることが、あります(延長・短縮は、別の記事で解説しています)。
どの周期の失敗かで、意味が変わる
公式サイトの用語集では、トレンドは、1つ上の周期で、決まると、されています。この考え方を、この記事の周期の組み合わせに、当てはめた、整理です(解説の例で、メリマンの言葉ではありません)。
| 失敗した周期 | 上の周期 | 見方(考え方) |
|---|---|---|
| TC(4時間足) | MC(日足) | MCの上昇が、終わりかけていないかを、確認する |
| MC(日足) | PC(週足) | PCの上昇が、崩れていないかを、確認する |
| PC(週足) | さらに上の周期 | この記事の範囲外。大きな流れを、別の方法で、確認する |
下の周期の失敗が、必ず、上の周期の転換を、意味するわけでは、ありません。複数の周期の動きを、あわせて、確認します(構造は、別の記事で解説しています)。
基本の使い方
1. 前の周期の安値を、記録する
安値①、安値②の、本数と価格を、記録します。図のような、目印の線を、引いておくと、分かりやすくなります。
2. 窓に入ったら、安値を探す
安値②から、60本後(130本目)を、窓の入口として、安値を、探し始めます。
3. 安値②の価格を、基準にする
安値②の価格の、少し外側を、損切りの目安に、する考え方が、あります。価格が、安値②を、割ると、失敗の可能性が、高くなるためです。
4. 失敗なら、上昇の見方を、見直す
安値②を、割った場合は、上昇が続くという見方を、一度、外して、状況を、確認します。
計算例:窓の入口で買う場合
図の上段・下段の、130本目の終値(150.20円)で、買う場合を、計算します。損切りは、安値②(149.80円)の、5pips下の149.75円、目標は、直前の山150.90円とします(例の数値です)。
エントリー 150.20円、損切り 149.75円、利確 150.90円
リスク = 150.20 − 149.75 = 0.45円(45pips)
リワード = 150.90 − 150.20 = 0.70円(70pips)
リスクリワード比 = 70 ÷ 45 ≒ 1.56 ≒ 1.6
損益分岐の勝率 = 1 ÷(1 + 1.6)= 1 ÷ 2.6 ≒ 38.5 %
安値③を確認してから、買う場合(下段の143本目、終値150.25円)も、計算します。
エントリー 150.25円、損切り 149.75円、利確 150.90円
リスク = 150.25 − 149.75 = 0.50円(50pips)
リワード = 150.90 − 150.25 = 0.65円(65pips)
リスクリワード比 = 65 ÷ 50 = 1.3
損益分岐の勝率 = 1 ÷(1 + 1.3)= 1 ÷ 2.3 ≒ 43.5 %
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 | 損益分岐の勝率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 窓の入口(130本目) | 150.20円 | 45pips | 70pips | 1.6 | 約38.5% |
| 安値③を確認してから(143本目) | 150.25円 | 50pips | 65pips | 1.3 | 約43.5% |
上段(失敗の例)で、窓の入口(130本目)に、買っていると、価格は、149.75円まで下がり、損切りになります。損失は、45pipsです。下段(維持の例)では、損切りには、かからず、安値③は、149.95円で、止まります。確認してから買う場合は、リスクリワード比が、1.6から1.3に、下がります。確認を待つほど、安全に、見えますが、そのぶん、取れる値幅は、小さくなります。上段のような失敗の例では、確認を待っても、買える場面が、来ないことも、あります。スプレッドや、約定のずれは、考慮していません。
損切りの位置は、安値③の結果を見てから、決めたものでは、ありません。ただ、図の形は、結果が分かっているから、作れる形です。実際には、窓に入った時点で、失敗か、維持かは、分かりません。
注意点
1. 失敗の定義は、決まっていない
メリマンの公式サイトの用語集には、「失敗」の定義が、確認できていません。解説によって、使い方が、違う可能性が、あります。
2. 失敗の判定は、後から、分かる
安値を、割って、初めて、失敗と、分かります。割る前に、失敗を、見分ける方法は、ありません。
3. 右寄りでも、失敗することがある
この記事の例のように、山の位置が、右寄り(60.0%)でも、次の安値が、前の安値を、割ることがあります。トランスレーションは、目安の1つです。
4. ヒゲの割れと、終値の割れは、別
安値の割れを、ヒゲで見るか、終値で見るかで、結果が、変わります。先に、決めて、固定しましょう。
5. 下の周期の失敗は、上の周期の転換とは、限らない
TCの失敗が、MCの転換に、つながらず、その後、上昇に、戻ることも、あります。
6. ブローカーによって、足の区切りが違う
ブローカーによって、サーバー時間が違い、4時間足や、日足の区切りが、違います。そのため、同じ期間でも、本数が、前後することが、あります。レートも、違うため、安値の位置が、微妙に、違うことが、あります。
7. ダマシ・負けが、続くことがある
たとえば、窓の入口(130本目)で、150.20円で買い、損切り149.75円にかかる場合、損失は45pipsです。これが3回続くと、合計−135pipsです。その後、70pipsの利益が1回なら、合計は−65pips、2回なら、+140pipsで、合計は+5pipsです。この数字は、あくまで例ですが、勝ちが2回ないと、取り返せないことが、分かります。
初心者が間違えやすいポイント
安値を少し割っただけで、トレンドが終わったと決める
ヒゲで一瞬割っただけで、すぐ戻ることも、あります。終値や、その後の動きも、確認しましょう。
失敗した後も、同じ方向に、買い続ける
損切りの位置は、先に、決めて、守りましょう。価格が、戻ることを、期待して、損切りを、動かすと、損失が、大きくなります。
窓の入口だけで、買う
窓に入っても、安値が、まだ、できていない場合が、あります。確認を、待つか、ロットを、小さくする、考え方が、あります。
上の周期を、見ない
TCの失敗だけで、判断せず、MCやPCの、状態も、確認しましょう。
検証せずに、使う
「安値を割ったら、失敗」と聞いても、実際の成績は、通貨ペア・時間足・ルールの組み合わせで、変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- サイクルの失敗は、周期の安値が、前の安値を、割ること。維持は、安値が、前の安値より、上で止まること
- メリマンの公式サイトの用語集では、強気相場は、安値と高値が切り上がる状態。トレンドは、1つ上の周期で、決まる。「失敗」の定義は、確認できていない
- 例では、安値②の窓は、130〜150本目(70+60〜70+80)。失敗の例の安値③149.35円は、②を45pips、①を15pips、割っている
- 山の位置が、60.0%(右寄り)でも、失敗の例のように、次の安値が、割れることがある。周期の長さが、通常(70本)でも、失敗は起こる
- 窓の入口(1.6)と、確認してから(1.3)で、リスクリワード比が、下がる。損益分岐の勝率は、約38.5%と約43.5%(スプレッド除く)。失敗の例では、窓の入口の買いは、45pipsの損切りになる
- 失敗は、安値を割ってから、分かる。ヒゲか終値かを、先に決める
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。チャート分析の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
