差し込み線とは
差し込み線とは、下降トレンドの途中で現れる、2本のローソク足の形で、1本目の大陰線のあと、2本目の陽線が、1本目の実体の中に入り込むものの、半値(50%)には届かずに引ける形を指します。英語ではスラスティング・ライン(Thrusting Line)と言います。切り込み線と形が似ていますが、反発が浅く、下降トレンドの継続を示すと見られます。
| 本数 | ローソク足 | 内容 |
|---|---|---|
| 1本目 | 大陰線 | 下降の勢いを示す、大きな陰線 |
| 2本目 | 陽線 | 1本目の終値付近から始まり、1本目の実体の中に入るが、半値には届かずに引ける |
買いが押し返そうとしたが、勢いが足りなかったことを示す形です。酒田五法の流れをくむ古いローソク足の読み方で、知られています。
なお、差し込み線の定義は、解説によって細かな違いがあります。本記事では、「1本目の終値を超え、実体の半値には届かずに引ける陽線」として扱います。1本目の終値とほぼ同じ位置で引ける形は、入り首線と別に呼ばれることがありますが、意味はほぼ同じ(売り優勢の継続)と考えて構いません。
差し込み線が示すこと
下降が続く中で、1本目に大陰線(売りが勢いよく入った)
→ 2本目は、1本目の終値付近から始まる
→ 買いが入り、1本目の実体の中まで戻した
→ しかし、半値には届かなかった
→ 買いの勢いが、足りなかった
| 読み取れること | 内容 |
|---|---|
| 買いの弱さ | 反発したが、実体の半分も戻せなかった |
| 売りの優勢 | 売りの力が、まだ残っている |
| 下降の継続 | 戻りが浅く、下降トレンドが続く可能性 |
切り込み線は、「半値を超えて戻した」ため、底打ちの可能性を示しますが、差し込み線は、「半値にも届かなかった」ため、むしろ売り優勢の継続を示します。
切り込み線・陽の包み線との違い
3つとも、大陰線のあとに陽線が出る形ですが、2本目の終値の位置で、意味が変わります。切り込み線、包み足については、別の記事で解説しています。
| 差し込み線 | 切り込み線 | 陽の包み線 | |
|---|---|---|---|
| 2本目の終値 | 1本目の終値より上、半値より下 | 半値より上、1本目の始値より下 | 1本目の始値より上 |
| 戻りの度合い | 浅い(50%未満) | 半分以上 | 全部 |
| 示すこと | 下降の継続 | 底打ちの可能性 | 底打ちの可能性(やや強い) |
2本目の終値がどこで引けたかが、意味の境目になります。
差し込み線の条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 直前の値動き | 下降トレンドが続いている |
| 1本目 | 大陰線(実体が大きい) |
| 2本目の始値 | 1本目の終値の近く(または、それより下) |
| 2本目の終値 | 1本目の終値より上で、実体の半値より下 |
FXでの注意点:2本目の始値の位置
株式では、2本目が窓を空けて、1本目の安値より下から始まることが条件とされることがあります。FXは、ほぼ24時間取引されているため、窓がほとんど空かず、2本目の始値は、1本目の終値とほぼ同じになります。
そのため、FXでは、「2本目の始値が、1本目の終値付近か、それより下」という緩やかな条件で、判定します。2本目の終値が、1本目の実体のどこまで戻したかを、中心に見るのが、実用的です。
計算例:差し込み線の判定
下降が続いたあとの、1時間足の2本が、次の値だったとします。
| 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | |
|---|---|---|---|---|
| 1本目(大陰線) | 150.80円 | 150.85円 | 150.15円 | 150.20円 |
| 2本目(陽線) | 150.18円 | 150.46円 | 150.12円 | 150.40円 |
1本目の実体 = 150.80 − 150.20 = 0.60円(60pips)
1本目の半値 = (150.80 + 150.20) ÷ 2 = 150.50円
2本目の終値 = 150.40円 > 1本目の終値(150.20円)
2本目の終値 = 150.40円 < 半値(150.50円)
戻りの度合い = (150.40 − 150.20) ÷ 0.60
= 0.20 ÷ 0.60 ≒ 0.33(約33%)
2本目の終値は、1本目の終値を超えて、半値(150.50円)には届いていないため、差し込み線と判定できます。戻りの度合いは、約33%です。
戻りの度合いが小さいほど、買いの弱さがはっきりしており、50%に近づくほど、切り込み線に近くなります。「半値に届かない」という基準や、33%といった数値は、あくまで一例です。自分で基準を決め、過去のチャートで検証することが大切です。
上昇トレンドでの差し込み線(逆の形)
上昇トレンドの途中で、大陽線のあとの陰線が、1本目の実体の半値までは下げず、浅い押しにとどまる形も、上下を逆にした差し込み線として扱われます。売りの勢いが足りず、上昇が続く可能性を示します。
| 下降中の差し込み線 | 上昇中の差し込み線 | |
|---|---|---|
| 1本目 | 大陰線 | 大陽線 |
| 2本目 | 半値に届かない陽線 | 半値に届かない陰線 |
| 示すこと | 下降の継続 | 上昇の継続 |
かぶせ線は、「半値を割り込む陰線」で天井を示唆しますが、半値に届かない陰線は、差し込み線の逆にあたります。かぶせ線については、別の記事で解説しています。
場所別の見方
| 場所 | 下降中の差し込み線の見方 |
|---|---|
| 下降トレンドの途中 | 戻りが浅く、下降が続く可能性。最も典型的 |
| レジスタンスライン付近 | 戻りが、ラインで止められた。戻り売りの根拠になりうる |
| サポートを割った直後の戻り | 割ったラインに戻れず、売り優勢が続く可能性 |
| 下降トレンドの安値圏 | 底打ちを探す場面では、買いが弱い証拠 |
| レンジの中央 | 意味が薄い |
サポートライン・レジスタンスラインについては、別の記事で解説しています。
使い方
戻り売りの目安として、注目する
下降トレンドの途中で、差し込み線が出たとき、戻りが浅く終わったことから、戻り売りの目安として見ます。戻りについては、別の記事で解説しています。
計算例:差し込み線のあとに、売る場合
上の例の差し込み線が、下降トレンドの途中で出たとします。次の足が、2本目の安値(150.12円)を割ったため、150.10円で売る場合です。直前の安値を、149.30円とします。
| 項目 | 価格 | 値幅 |
|---|---|---|
| エントリー(売り) | 150.10円 | — |
| 損切り | 150.51円(2本目の高値の5pips上) | −41pips |
| 利益確定 | 149.30円(直前の安値) | +80pips |
リスク = 150.51 − 150.10 = 0.41円(41pips)
リワード = 150.10 − 149.30 = 0.80円(80pips)
リスクリワード比 = 80 ÷ 41 ≒ 1.95
損切りは、2本目の高値の少し上に置きます。高値を超えると、「買いが弱い」という前提が崩れるためです(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。
2本目の安値を割るまで待つことで、下降継続の確認ができますが、入る価格は、その分不利になります。
注意点
1. 差し込み線だけでは、判断できない
差し込み線は、「戻りが浅かった」ことを示すだけで、下降継続の保証ではありません。場所・前後の足、次の足の動きとあわせて判断します。
2. 次の足で、切り込み線や包み足に変わることもある
差し込み線の次の足が、大きな陽線になれば、買いが戻したことになり、見立てが変わります。次の足の動きを、必ず確認しましょう。
3. 底打ちの見落としにも注意
下降が続いたあとの安値圏で出た差し込み線を、「継続のサイン」と決めつけると、底打ちを見逃すことがあります。場所とあわせて、判断しましょう。
4. 小さな足の連続の中では、意味が薄い
ローソク足が小さい(値動きが乏しい)状況で出た差し込み線は、意味が薄いことがあります。1本目が、はっきり大きいことが、前提です。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
発表で、一方向に急変した大きな足のあとの陽線が、差し込み線のように見えても、その後に、再度動くことがあります。
6. 時間帯・時間足で、意味が変わる
値動きの小さい時間帯や、短い時間足では、意味は薄いことがあります。長い時間足の差し込み線のほうが、意識されやすいと考えられます。
7. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、差し込み線に見えても、確定までに形が変わります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
陽線が出たから、反発だと考える
陽線が出ても、半値に届いていなければ、買いの勢いは弱いと見られます。**「どこまで戻したか」**を、必ず計算で確認しましょう。
切り込み線と、混同する
2本目の終値が、半値を超えれば、切り込み線です。意味が異なるため、区別しましょう。
差し込み線を、必ず下がるサインだと考える
「戻りが浅い」ことは、継続の可能性を示すだけで、確実ではありません。反転することもあります。
場所を無視して、形だけで判断する
何もない場所で出た差し込み線は、意味が薄いことが多いです。
検証せずに、使う
「差し込み線のあとは、下がる」と聞いても、実際の確率は、判定基準や場所で変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- 差し込み線は、下降トレンドの途中で、大陰線のあとの陽線が、1本目の実体の半値には届かずに引ける形。買いの弱さと下降の継続を示す
- 切り込み線(半値を超える)とは2本目の終値の位置が違い、意味も逆になる
- 上昇トレンドでは、半値に届かない陰線が、上下を逆にした差し込み線にあたる
- FXでは、窓がほとんど空かないため、2本目の始値は、1本目の終値付近か、それより下と、緩やかに判定する
- 戻りの度合いが小さいほど、買いの弱さがはっきりしている
- 損切りは、2本目の高値の少し上。2本目の安値割れを待つ考え方もある
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。ローソク足の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
