ストキャスティクスRSIとは
ストキャスティクスRSI(Stochastic RSI:StochRSI)とは、RSIの値に、ストキャスティクスの計算を、あてはめた指標です。「価格」ではなく「RSIの値」が、直近の範囲の中で、どの位置にあるかを、0〜100で示します。トゥシャール・シャンデ氏とスタンレー・クロール氏が、1990年代に、紹介したものと、されています。一般的な設定は、RSIの期間14、ストキャスティクスの期間14で、さらに%K・%Dの平滑化(3本)をかけた形が、よく使われます。RSIが、30〜70の狭い範囲で動いていても、その範囲の中での上下を、0〜100に引き伸ばして見られるのが、特徴です。
| 意味 | |
|---|---|
| RSI | 上げ幅と下げ幅の比率(0〜100) |
| ストキャスティクスRSI | そのRSIが、直近N本の最大・最小の範囲の中で、どこにあるか(0〜100) |
「80以上は買われすぎ、20以下は売られすぎ」という目安が、よく使われます(固定の基準では、ありません)。RSIの基本と、ストキャスティクスの基本は、それぞれ別の記事で解説しています。

計算方法
ストキャスRSI = (今のRSI − 直近N本のRSIの最小値)
÷(直近N本のRSIの最大値 − 直近N本のRSIの最小値)× 100
計算の順番は、①価格からRSIを計算、②そのRSIに、ストキャスティクスの式を、あてはめる、の2段階です。%K・%Dの平滑化(3本の移動平均)は、必要に応じて、追加します。RSIを先に計算するため、線が表示されるまでに、RSIの期間 + ストキャスティクスの期間分の、足が必要です。
計算例:5本の範囲で、ストキャスRSIを計算する(N = 5)
計算を簡単にするため、RSIの値は、すでに計算済みとし、N = 5で、ストキャスティクスの式を、あてはめます。RSIの値は、次のとおりです(例の数値です)。
| 足 | RSI |
|---|---|
| 1本目 | 45 |
| 2本目 | 52 |
| 3本目 | 61 |
| 4本目 | 68 |
| 5本目 | 64 |
| 6本目 | 72 |
| 7本目 | 58 |
5本目(1〜5本目の範囲)
RSIの最大 = 68、最小 = 45
ストキャスRSI = (64 − 45)÷(68 − 45)× 100 = 19 ÷ 23 × 100 ≒ 82.61
6本目(2〜6本目の範囲)
RSIの最大 = 72、最小 = 52
ストキャスRSI = (72 − 52)÷(72 − 52)× 100 = 100
7本目(3〜7本目の範囲)
RSIの最大 = 72、最小 = 58
ストキャスRSI = (58 − 58)÷(72 − 58)× 100 = 0
| 足 | RSI | ストキャスRSI |
|---|---|---|
| 5本目 | 64 | 82.61 |
| 6本目 | 72 | 100 |
| 7本目 | 58 | 0 |
6本目から7本目で、RSIは、72から58へ、14下がっただけですが、ストキャスRSIは、100から0へ、振り切れました。7本目のRSI(58)は、50を上回っており、RSIの目で見れば、「買い優勢」のままです。それでも、ストキャスRSIは、直近の範囲の最小値になったため、0を示します。ストキャスRSIは、RSIの小さな動きを、大きく拡大する、という性質が、分かります。
ストキャスティクスRSIが示すこと
ストキャスRSIが高い = RSIが、直近の範囲の、上のほうにある
ストキャスRSIが低い = RSIが、直近の範囲の、下のほうにある
100 = RSIが、直近N本の最大値になった
0 = RSIが、直近N本の最小値になった
「RSIが70以上」とは、意味が違います。RSIが50〜60の中での、小さな上下でも、ストキャスRSIは、100や0になります。そのため、ストキャスRSIは、「買われすぎ・売られすぎ」ではなく、「RSIの、直近の動きの中での位置」を示していると、考えるほうが、実態に近いでしょう。
他の指標との違い
| RSI | ストキャスティクス | ストキャスティクスRSI | |
|---|---|---|---|
| 計算の元 | 上げ幅と下げ幅の平均の比 | 高値・安値の範囲の中での、終値の位置 | RSIの、直近の範囲の中での位置 |
| 使うデータ | 終値 | 高値・安値・終値 | 終値(RSIを通して) |
| 値の範囲 | 0〜100(実際は、30〜70に収まることが多い) | 0〜100 | 0〜100 |
| 0・100への到達 | まれ | しばしば | 頻繁 |
| 反応の速さ | やや穏やか | 速い | 非常に速い |
| ダマシ | ある | 多い | さらに多くなりやすい |
ストキャスRSIは、RSIの動きを、拡大して見る指標です。RSIが、70・30に届きにくい場面でも、売買の目安を、得やすくなります。その一方で、シグナルの数が増え、ダマシも、増えやすくなります。スロー・ストキャスティクスについても、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. RSIが、動きの小さい場面で、反転の目安を探す
RSIが、50前後で、小さく動く場面では、70・30に届かず、RSIだけでは、売買の目安が、得にくいことが、あります。そこで、ストキャスRSIを使い、RSIの小さな上下を、拡大して見る、という使い方です。
2. 20以下・80以上を、目安にする
20以下は、RSIが直近の最小値付近、80以上は、最大値付近と、見る考え方です。ただし、「80以上だから、下がる」とは、限りません。図のとおり、80以上に張り付いたまま、上昇が続くことも、あります。
3. %Kと%Dの交差を、目安にする
%Kが、20以下の位置で、%Dを下から上抜けたら、買いの目安、80以上の位置で、上から下抜けたら、売りの目安、という使い方です。ただし、交差の数が多く、ダマシも多いため、トレンドの方向や、サポート・レジスタンスなどの、他の根拠と、組み合わせることが、一般的です。
計算例:20以下で%Kが%Dを上抜けたあとの買い
ストキャスRSIが20以下まで下がり、直近の安値が152.10円になったとします。そのあと、%Kが%Dを上抜けた足の終値が、152.35円でした。直近高値は152.90円です。損切りは直近安値(152.10円)、利益確定は、直近高値(152.90円)とします(例の数値です)。
%Kが%Dを上抜けた足の終値(152.35円)で買う場合
エントリー 152.35円、損切り 152.10円、利確 152.90円
リスク = 152.35 − 152.10 = 0.25円(25pips)
リワード = 152.90 − 152.35 = 0.55円(55pips)
リスクリワード比 = 55 ÷ 25 = 2.2
安値の近く(152.20円)に、指値で買う場合
エントリー 152.20円、損切り 152.10円、利確 152.90円
リスク = 152.20 − 152.10 = 0.10円(10pips)
リワード = 152.90 − 152.20 = 0.70円(70pips)
リスクリワード比 = 70 ÷ 10 = 7.0
安値の近くで買うと、リスクリワード比は、良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、152.20円まで下がらずに、反発すると、エントリーできません。%Kが%Dを上抜けたことを確認してから入るほうが、ダマシは減りやすい一方、リスクリワード比は、2.2まで下がります。ストキャスRSIは、20以下・80以上に、頻繁に届くため、20以下の交差が出るたびに入ると、損切りの数も、増えやすくなります。また、安値を割り込むと、損切りになります。ストキャスRSIは、足が進むごとに変わるため、損切りや目標の位置は、見直す必要があります。
注意点
1. 動きが非常に速く、ダマシが多い
RSIの小さな動きを拡大するため、0や100に、頻繁に届き、%Kと%Dの交差も、頻繁に起こります。シグナルの数が多いことは、精度が高いことを、意味しません。
2. 強いトレンドでは、80以上・20以下が続く
強い上昇トレンドでは、ストキャスRSIが、80以上に、張り付いた状態が、続くことが、あります。「80以上=売り」と考えると、トレンドに、逆らい続けることに、なります。図の右側が、その例です。
たとえば、80以上での逆張りの売りが、損失20pipsで、6回続くと、合計−120pipsの損失です。その後の1回の利益が、150pipsなら、合計は+30pips、90pipsなら、合計は−30pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
3. RSIの値そのものは、示さない
ストキャスRSIが100でも、RSIが、70を超えているとは、限りません。RSIが45〜55の間で動いていても、100や0になります。RSIの水準も、あわせて確認しましょう。
4. 設定が多く、見え方が変わる
RSIの期間、ストキャスティクスの期間、%K・%Dの平滑化の本数と、設定が多いため、他人のチャートと、そのまま比べないようにしましょう。ソフトによっては、0〜1の範囲で表示されることもあります。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、ストキャスRSIが、一気に0や100になり、そのまま、張り付くことが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、%Kが%Dを上抜けたように見えても、確定までに戻ることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
80以上になったら、すぐ売る
80以上は、「RSIが、直近の範囲の上のほうにある」という意味で、「売りのサイン」では、ありません。トレンドが強いと、そのまま上がり続けます。
20以下になったら、すぐ買う
同じく、20以下は、「買いのサイン」では、ありません。下げの途中で、買うと、損失が広がります。
RSIより、優れた指標だと考える
ストキャスRSIは、RSIの動きを、拡大して見るもので、予測の精度が、上がるわけでは、ありません。ダマシも、増えやすくなります。
交差が出るたびに、売買する
ストキャスRSIの交差は、頻繁に起こります。位置(20以下・80以上か、中間か)や、トレンドの方向を見ずに、すべての交差で売買すると、ダマシに、振り回されます。
検証せずに、使う
「ストキャスRSIの20以下の交差で買えば勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- ストキャスティクスRSIは、RSIの値が、直近N本の範囲の中で、どの位置にあるかを、0〜100で示す指標。RSIに、ストキャスティクスの式を、あてはめたもの
- ストキャスRSI = (今のRSI − RSIの最小値)÷(RSIの最大値 − RSIの最小値)× 100
- 例(N = 5)では、RSIが72から58に、14下がっただけで、ストキャスRSIは、100から0に振り切れる。RSIの小さな動きを、拡大する
- 80以上は、RSIが範囲の上のほう、20以下は、下のほう。ただし、強いトレンドでは、80以上・20以下が続く
- 20以下で%Kが%Dを上抜けた足では、指値のほうがリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- 動きが非常に速く、ダマシが多い。設定が多く、見え方が変わる
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
