通貨強弱メーターとは
通貨強弱メーター(強弱指標)とは、複数の通貨ペアの値動きから、「通貨ごとの強さ」を計算して、通貨同士を比べられるようにした、FX特有の指標です。通常のチャートは、「EUR/JPY」のように、2つの通貨の「関係」しか、示しません。「ユーロが強いから上がったのか、円が弱いから上がったのか」は、チャートだけでは、分かりません。通貨強弱メーターは、この点を、補うための道具です。
| 通常のチャート(通貨ペア) | 通貨強弱メーター | |
|---|---|---|
| 見ているもの | 2つの通貨の、比率 | 通貨ごとの強さ |
| 例 | EUR/JPYが上昇 | EURが強い、JPYが弱い、USDは中間、など |
| 分かること | ペアが上がったか、下がったか | どの通貨が、上昇・下落を、主導しているか |
| 分からないこと | どちらの通貨が、動いたのか | ペアの、細かい値動き |

図は、EUR・USD・JPYの3通貨から、強弱を計算した例です。EURが最強でJPYが最弱の区間では、EUR/JPYが上昇し、順位が入れ替わると、EUR/JPYが、下落に転じています。USD/JPYは、EURの動きとは、別の動きをしています。
計算方法
計算方法は、ソフト・ツールによって、大きく違います。ここでは、最も単純な、「変化率の平均」で、説明します。
各通貨ペアの変化率(%)= (今回の価格 − N本前の価格)÷ N本前の価格 × 100
通貨の強さ = その通貨を含む全ペアで、
「その通貨が、ベース(左側)なら、変化率をそのまま」
「クオート(右側)なら、変化率の符号を逆にして」
平均を取る
EUR/USDが上昇したら、「EURは強く、USDは弱い」と見て、EURには+、USDには−を、割り当てる考え方です。
計算例:3通貨・3ペアで、手計算する
EUR・USD・JPYの3通貨で、3つのペア(EUR/USD、USD/JPY、EUR/JPY)があるとします(例の数値です)。ある期間の変化率が、次のとおりでした。
| 通貨ペア | 変化率 |
|---|---|
| EUR/USD | + 0.40 % |
| USD/JPY | + 0.10 % |
| EUR/JPY | + 0.50 % |
各通貨の強さを、計算します。それぞれの通貨が含まれるペアは2つなので、2で割ります。
EUR:EUR/USD(ベース)、EUR/JPY(ベース)
= (+0.40 + 0.50) ÷ 2 = + 0.45
USD:EUR/USD(クオート)、USD/JPY(ベース)
= (−0.40 + 0.10) ÷ 2 = − 0.15
JPY:USD/JPY(クオート)、EUR/JPY(クオート)
= (−0.10 − 0.50) ÷ 2 = − 0.30
| 通貨 | 強さ(%) | 順位 |
|---|---|---|
| EUR | + 0.45 | 1位(最強) |
| USD | − 0.15 | 2位 |
| JPY | − 0.30 | 3位(最弱) |
この計算方法では、3通貨の強さの合計は、0になります(+0.45 − 0.15 − 0.30 = 0)。強さは、通貨同士の「相対的な」関係であり、全員が強い、ということは、ありません。
この例で、分かることは、次のとおりです。
- USD/JPYの+0.10%は、小さな動きに見えますが、実際は、USDも(−0.15)、JPYも(−0.30)、弱い状態です。USD/JPYのチャートだけでは、この関係が、分かりません
- 最強はEUR、最弱はJPYです。この2つを組み合わせた、EUR/JPY(+0.50%)が、最も、はっきりした動きになっています
実際のツールでは、8通貨・28ペアなどで、計算することが、多いです。その場合は、各通貨が含まれる、7つのペアで、平均を取ることに、なります。
通貨強弱メーターが示すこと
強さが高い = 他の通貨に対して、上昇している(買われている)
強さが低い = 他の通貨に対して、下落している(売られている)
差が大きい = 2つの通貨の動きが、はっきり分かれている
順位の入れ替わり = 主導する通貨が、変わった
「最強の通貨を買い、最弱の通貨を売る」という組み合わせが、トレンドの目安として、よく使われます。ただし、強弱は、あくまで、すでに起きた値動きの集計です。
他の指標との違い
| 通貨強弱メーター | RSIなどのオシレーター | 相関(通貨ペア同士) | |
|---|---|---|---|
| 見る対象 | 複数ペアから見た、通貨ごとの強さ | 1つのペアの、買われすぎ・売られすぎ | ペア同士の、動きの類似度 |
| 目的 | どの通貨が、動きを主導しているか | 過熱感の、目安 | 同時に持つ、リスクの重複を知る |
| 計算の元 | 複数ペアの変化率 | 1つのペアの値動き | 2つのペアの値動き |
| FX特有か | はい | いいえ | いいえ |
通貨強弱メーターは、「ペア選び」の道具で、「いつ入るか」を、決める道具では、ありません。RSIについては、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. 最強と最弱の通貨を、組み合わせる
最強の通貨と、最弱の通貨で作られるペアが、最も、動きやすいと、見る考え方です。図のとおり、EURが最強、JPYが最弱の区間では、EUR/JPYが、上昇しています。
2. 強弱の差の、拡大・縮小を見る
差が拡大している間は、トレンドが、強まっている、差が縮小し始めたら、勢いが、弱まっていると、見る使い方です。ただし、差が、縮小しても、すぐに、反転するとは、限りません。
3. 順位の入れ替わりを、見る
最強の通貨と、最弱の通貨が、入れ替わったら、主導する通貨が、変わったと、見ます。図のとおり、順位が入れ替わった後、EUR/JPYは、下落に転じています。ただし、入れ替わりの直後は、ダマシも、多いです。
4. 環境認識・エントリーの指標と、組み合わせる
通貨強弱メーターは、「どのペアを、見るか」を、決める道具です。エントリーの位置は、別のチャートや、指標で、確認します。
計算例:EUR/JPYで、強弱を確認して、買う場合
EURが最強、JPYが最弱の状態で、EUR/JPYの直近安値が160.00円、直近高値が160.90円だったとします。損切りは直近安値(160.00円)、利益確定は、直近高値(160.90円)とします(例の数値です)。「EURの強さが、JPYの強さを上回った」ことを確認した足の終値が160.40円、その後、「強弱の差が、一定の幅に拡大した」ことを確認した足の終値が160.65円でした。
安値の近く(160.12円)に、指値で買う場合
エントリー 160.12円、損切り 160.00円、利確 160.90円
リスク = 160.12 − 160.00 = 0.12円(12pips)
リワード = 160.90 − 160.12 = 0.78円(78pips)
リスクリワード比 = 78 ÷ 12 = 6.5
EURの強さが、JPYを上回った足の終値(160.40円)で買う場合
エントリー 160.40円、損切り 160.00円、利確 160.90円
リスク = 160.40 − 160.00 = 0.40円(40pips)
リワード = 160.90 − 160.40 = 0.50円(50pips)
リスクリワード比 = 50 ÷ 40 ≒ 1.3
強弱の差が、一定の幅に拡大した足の終値(160.65円)で買う場合
エントリー 160.65円、損切り 160.00円、利確 160.90円
リスク = 160.65 − 160.00 = 0.65円(65pips)
リワード = 160.90 − 160.65 = 0.25円(25pips)
リスクリワード比 = 25 ÷ 65 ≒ 0.4
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 |
|---|---|---|---|---|
| 指値(安値付近) | 160.12円 | 12pips | 78pips | 6.5 |
| EURがJPYを上回った | 160.40円 | 40pips | 50pips | 1.3 |
| 強弱の差が拡大 | 160.65円 | 65pips | 25pips | 0.4 |
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。差の拡大まで待つと、リスクリワード比は、1を大きく下回るため、この場合は、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。指値は、160.12円まで下がらずに、反発すると、エントリーできません。また、安値を割り込むと、損切りになります。
注意点
1. 計算方法が、ツールによって、違う
変化率の平均だけでなく、RSIや、移動平均からの乖離を使うツールも、あります。期間・通貨数・正規化の方法も、さまざまです。同じ通貨でも、ツールが違えば、値も、順位も、変わることが、あります。他のツールの数値と、そのまま比べないようにしましょう。
2. すでに動いた結果である
強弱は、「過去N本の値動き」の集計です。最強と最弱の組み合わせは、すでに、大きく動いたあとで、そこから、さらに動くとは、限りません。図のとおり、強弱の差が、最大になった後に、順位が入れ替わることもあります。
3. 強弱は、相対的で、原因は分からない
「EURが強い」のは、EURが買われたからか、他の通貨が、売られたからか、強弱の数値だけでは、分かりません。3通貨の例では、どの通貨が動いたのか、特定できません。通貨数が多いほど、特定しやすくなりますが、「原因」までは、分かりません。
4. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
1つの国の経済指標で、その通貨が急変すると、その通貨を含む、すべてのペアが、動き、強弱も、大きく変わります。その後、元に戻ることも、あります。
5. 最強×最弱のペアは、スプレッドが広いことがある
最強と最弱の組み合わせが、取引量の少ない通貨ペアに、なることもあり、スプレッドが広がりやすいため、注意が必要です。
たとえば、強弱の順位の入れ替わりでの売買が、損失25pipsで、6回続くと、合計−150pipsの損失です。その後の1回の利益が、180pipsなら、合計は+30pips、100pipsなら、合計は−50pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足では、価格が動くたびに、各通貨の強さも、順位も、変わります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
最強×最弱のペアを、すぐ買う
最強と最弱の組み合わせは、すでに、大きく動いたあとの場合が、多いです。買う位置が、高くなり、リスクリワード比が、下がりやすいことに、注意しましょう。
強弱の数値を、絶対的な強さだと考える
強弱は、他の通貨との、相対的な関係で、「+」でも、上昇が続くとは、限りません。
ツールの数値を、そのまま信じる
ツールによって、計算方法が違うため、数値の意味を、確認しましょう。
強弱だけで、エントリーする
通貨強弱メーターは、「ペア選び」の道具で、エントリーのタイミングや、損切りの位置は、別に、決める必要があります。
検証せずに、使う
「最強と最弱を組み合わせれば勝てる」と聞いても、実際の成績は、通貨・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- 通貨強弱メーターは、複数の通貨ペアの値動きから、通貨ごとの強さを計算する、FX特有の指標。どの通貨が、動きを主導しているかを、見る
- 計算方法は、ツールによって、大きく違う。例では、各ペアの変化率を、ベース通貨に+、クオート通貨に−で割り当て、平均
- 例(3通貨)では、EUR +0.45、USD −0.15、JPY −0.30。USD/JPYの小さな動き(+0.10%)の裏で、USDもJPYも弱かった
- 使い方は、「最強×最弱」の組み合わせ、強弱の差、順位の入れ替わり。「ペア選び」の道具で、エントリーの道具では、ない
- 例では、指値(6.5)、EURがJPYを上回った(1.3)、強弱の差が拡大(0.4)の順に、リスクリワード比が下がる。指値は、エントリーできないこともある
- すでに動いた結果の集計で、強弱の原因は、分からない
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
