MACDとは
MACD(Moving Average Convergence Divergence:移動平均収束拡散法)とは、短期と長期の、2本の指数平滑移動平均線(EMA)の「差」を使って、トレンドの方向と勢いを、見る指標です。米国のジェラルド・アペル氏が、1970年代に考案したものと、されています。「MACD線」と「シグナル線」の2本の線と、その差を、棒グラフで示した「ヒストグラム」で、表示されます。一般的な設定は、短期12・長期26・シグナル9です。トレンド系(移動平均線)と、オシレーター系(ゼロを中心に、上下に振れる)の、両方の性質を、あわせ持つのが、特徴です。指数平滑移動平均線については、別の記事で解説しています。
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| MACD線 | 短期EMA − 長期EMA |
| シグナル線 | MACD線の、EMA(一般的には9本) |
| ヒストグラム | MACD線 − シグナル線(棒グラフ) |
| ゼロライン | 短期EMAと長期EMAが、等しい水準 |

計算方法
MACD線 = 短期EMA(12)− 長期EMA(26)
シグナル線 = MACD線の、EMA(9)
ヒストグラム = MACD線 − シグナル線
EMA = α × 今の終値 +(1 − α)× 前のEMA (α = 2 ÷(N + 1))
αは、期間Nによって決まり、短期12なら 2 ÷ 13 ≒ 0.154、長期26なら 2 ÷ 27 ≒ 0.074です。EMAは、直近の値に、重みを置くため、短期EMAは、価格に素早く反応し、長期EMAは、ゆっくり動くことに、なります。この「速さの差」が、MACD線の動きになります。
計算例:短期3・長期5・シグナル3で、MACDを計算する
計算を簡単にするため、短期3・長期5・シグナル3(α = 0.5、1/3、0.5)で、8本分を計算します。1本目のEMAは、1本目の終値とします(簡略化)。終値は、次のとおりです(例の数値です)。
2本目(終値150.20)
短期EMA = 0.5 × 150.20 + 0.5 × 150.00 = 150.100
長期EMA = (1/3)× 150.20 + (2/3)× 150.00 ≒ 150.067
MACD線 = 150.100 − 150.067 ≒ 0.033
シグナル線 = 0.5 × 0.033 + 0.5 × 0 ≒ 0.017
ヒストグラム = 0.033 − 0.017 ≒ + 0.017
7本目(終値150.70)
短期EMA = 0.5 × 150.70 + 0.5 × 150.7875 ≒ 150.744
長期EMA = (1/3)× 150.70 + (2/3)× 150.6329 ≒ 150.655
MACD線 = 150.744 − 150.655 ≒ 0.089
シグナル線 = 0.5 × 0.089 + 0.5 × 0.1248 ≒ 0.107
ヒストグラム = 0.089 − 0.107 ≒ − 0.018
| 足 | 終値 | 短期EMA | 長期EMA | MACD線 | シグナル線 | ヒストグラム |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1本目 | 150.00 | 150.000 | 150.000 | 0.000 | 0.000 | 0.000 |
| 2本目 | 150.20 | 150.100 | 150.067 | 0.033 | 0.017 | + 0.017 |
| 3本目 | 150.50 | 150.300 | 150.211 | 0.089 | 0.053 | + 0.036 |
| 4本目 | 150.40 | 150.350 | 150.274 | 0.076 | 0.064 | + 0.012 |
| 5本目 | 150.80 | 150.575 | 150.449 | 0.126 | 0.095 | + 0.031 |
| 6本目 | 151.00 | 150.788 | 150.633 | 0.155 | 0.125 | + 0.030 |
| 7本目 | 150.70 | 150.744 | 150.655 | 0.089 | 0.107 | − 0.018 |
| 8本目 | 150.30 | 150.522 | 150.537 | − 0.015 | 0.046 | − 0.061 |
6本目までは、MACD線が、シグナル線の上にあり、ヒストグラムは、プラスです。7本目で、終値が、151.00円から150.70円に下がると、MACD線が、シグナル線を下回り、ヒストグラムが、マイナスに転じます。8本目で、終値が150.30円まで下がると、短期EMAが、長期EMAを下回り、MACD線も、ゼロより下になります。シグナル線を下抜けたのが、先で、ゼロラインを下抜けたのが、あと、という順番が、分かります。
MACDの見方
MACD線 が シグナル線 を 下から上に抜ける = ゴールデンクロス(買いの目安)
MACD線 が シグナル線 を 上から下に抜ける = デッドクロス(売りの目安)
MACD線が ゼロより上 = 短期EMAが長期EMAより上(上昇傾向)
MACD線が ゼロより下 = 短期EMAが長期EMAより下(下降傾向)
MACD線とシグナル線の交差は、「勢いの向きの変化」を、示します。ゼロラインとの交差は、「短期EMAと、長期EMAの、交差」と、同じ意味で、より遅れて、出ます。ヒストグラムの見方は、別の記事で解説しています。
他の指標との違い
| MACD | 移動平均線 | RSI | |
|---|---|---|---|
| 計算の元 | 短期EMAと長期EMAの差 | 終値の平均 | 上げ幅と下げ幅の平均の比 |
| 値の範囲 | 上限・下限なし(ゼロを中心) | 価格と同じ | 0〜100 |
| 示すもの | トレンドの方向と勢い | トレンドの方向 | 勢いの偏り |
| 通貨ペア間の比較 | しにくい(値幅の大きさに左右される) | しにくい | しやすい(0〜100) |
| シグナルの遅れ | あり | あり | やや少ない |
MACDは、値に上限・下限が、ありません。そのため、「80以上」といった、固定の水準で、買われすぎ・売られすぎを、判断するのは、向きません。通貨ペアによって、値幅が違うため、ドル円のMACDと、ユーロドルのMACDを、同じ数値で、比べることも、できません。RSIについても、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. MACD線とシグナル線の交差を、目安にする
ゴールデンクロス(MACD線が、シグナル線を、下から上に抜ける)を、買いの目安、デッドクロス(上から下に抜ける)を、売りの目安に、する使い方です。
2. ゼロラインを、トレンドの目安にする
MACD線が、ゼロより上なら、上昇傾向、ゼロより下なら、下降傾向と、見る考え方です。ゼロラインを、上抜けた(下抜けた)ことは、トレンドの転換の、確認として、使われます。
3. ゼロラインの上と下で、交差の意味を変える
ゼロラインより上での、ゴールデンクロスは、上昇傾向の中での、押しからの再上昇、ゼロラインより下での、ゴールデンクロスは、下降傾向の中での、戻りの可能性もあると、見る考え方です。図のとおり、ゼロラインより下の、ゴールデンクロスのあとも、下落が続くことが、あります。
計算例:ゴールデンクロスと、ゼロライン上抜けの、エントリー位置の比較
下落のあと、直近の安値が149.80円になり、直近高値は150.90円です。損切りは直近安値(149.80円)、利益確定は、直近高値(150.90円)とします(例の数値です)。MACD線が、シグナル線を、下から上に抜けた(ゴールデンクロス)足の終値は150.10円、その後、MACD線がゼロラインを上抜けた足の終値は150.35円でした。
安値の近く(149.95円)に、指値で買う場合
エントリー 149.95円、損切り 149.80円、利確 150.90円
リスク = 149.95 − 149.80 = 0.15円(15pips)
リワード = 150.90 − 149.95 = 0.95円(95pips)
リスクリワード比 = 95 ÷ 15 ≒ 6.3
ゴールデンクロスの足の終値(150.10円)で買う場合
エントリー 150.10円、損切り 149.80円、利確 150.90円
リスク = 150.10 − 149.80 = 0.30円(30pips)
リワード = 150.90 − 150.10 = 0.80円(80pips)
リスクリワード比 = 80 ÷ 30 ≒ 2.7
ゼロラインの上抜けを確認して、買う場合(150.35円)
エントリー 150.35円、損切り 149.80円、利確 150.90円
リスク = 150.35 − 149.80 = 0.55円(55pips)
リワード = 150.90 − 150.35 = 0.55円(55pips)
リスクリワード比 = 55 ÷ 55 = 1.0
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 |
|---|---|---|---|---|
| 指値(安値付近) | 149.95円 | 15pips | 95pips | 6.3 |
| ゴールデンクロス | 150.10円 | 30pips | 80pips | 2.7 |
| ゼロラインの上抜け | 150.35円 | 55pips | 55pips | 1.0 |
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。指値は、149.95円まで下がらずに反発すると、エントリーできません。ゼロラインの上抜けを待つと、リスクリワード比は、1.0まで下がるため、この場合は、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。また、ゴールデンクロスのあとも、安値を割り込むと、損切りになります。
注意点
1. シグナルが遅れる
MACDは、移動平均線をもとにしているため、価格が反転してから、シグナルが出るまでに、時間がかかります。シグナルが出た時には、すでに、動きの大部分が終わっていることも、あります。
2. レンジ相場では、ダマシが多い
価格が、上下に動くだけで、方向が出ない場面では、MACD線とシグナル線が、何度も交差します。交差のたびに売買すると、小さな損失が、積み重なります。
たとえば、レンジでの交差が、損失25pipsで、5回続くと、合計−125pipsの損失です。その後の1回の利益が、150pipsなら、合計は+25pips、100pipsなら、合計は−25pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
3. 値の大きさは、比べられない
MACDの値は、通貨ペアや、時間足、値幅によって、大きく変わります。「MACDが0.3以上なら強い」といった、固定の基準は、使えません。自分のチャートの、過去の値と、比べるようにしましょう。
4. 設定で、見え方が変わる
12・26・9は、一般的な設定ですが、これが、最適とは限りません。期間を短くすると、反応は速くなりますが、ダマシが増えます。他人のチャートと、そのまま比べないようにしましょう。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、MACD線が、一気に大きく動き、そのあとで、すぐ戻ることが、あります。EMAは、直近の値を重視するため、急な動きの影響を、受けやすくなります。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、MACD線が、シグナル線を、上抜けたように見えても、確定までに戻ることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
ゴールデンクロスが出たら、すぐ買う
ゴールデンクロスは、「勢いの向きが、上に変わった」ことを、示すだけで、「上昇が続く」ことを、保証しません。特に、ゼロラインより下では、下降傾向の中の戻りで、終わることも、あります。
ゼロラインより上なら、必ず上昇すると考える
ゼロラインより上は、「短期EMAが、長期EMAより上」という意味で、「これから上がる」という意味では、ありません。
買われすぎ・売られすぎの目安として使う
MACDには、固定の上限・下限が、ありません。RSIのように、「70以上・30以下」で、判断する指標では、ありません。
通貨ペアが違うMACDの値を、比べる
値幅の大きい通貨ペアは、MACDの値も、大きくなります。同じ数字でも、強さは、違います。
検証せずに、使う
「MACDのゴールデンクロスで買えば勝てる」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- MACDは、短期EMAと長期EMAの差(MACD線)と、そのEMA(シグナル線)で、トレンドの方向と勢いを見る指標。ジェラルド・アペル氏が考案した。一般的な設定は、12・26・9
- MACD線 = 短期EMA − 長期EMA。シグナル線 = MACD線のEMA。ヒストグラム = MACD線 − シグナル線
- 例(短期3・長期5・シグナル3)では、7本目でMACD線がシグナル線を下回り、8本目でゼロラインも下回る。交差の順番は、シグナル線が先、ゼロラインがあと
- MACD線とシグナル線の交差は、勢いの向きの変化、ゼロラインは、トレンドの方向の目安
- 例では、指値(6.3)、ゴールデンクロス(2.7)、ゼロラインの上抜け(1.0)の順に、リスクリワード比が下がる。指値は、エントリーできないこともある
- シグナルが遅れる。レンジでは、ダマシが多い。値の大きさは、比べられない
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
