エンベロープとは
エンベロープとは、移動平均線の上下に、一定の割合(%)だけ離れた位置に、平行な線を引いたものです。「エンベロープ(envelope)」は「封筒」という意味で、移動平均線を、上下の線で包み込む形になることから、この名前がついています。移動平均線乖離率を、チャート上に線として表示したものとも言えます。移動平均線(SMA)、移動平均線乖離率については、別の記事で解説しています。
| ライン | 内容 |
|---|---|
| ミドルライン | 中心線。単純移動平均線(SMA)などを使う |
| アッパーライン | ミドルラインの、+k%の位置 |
| ロワーライン | ミドルラインの、−k%の位置 |

計算方法
アッパーライン = 移動平均線 × (1 + k ÷ 100)
ロワーライン = 移動平均線 × (1 − k ÷ 100)
(kは、自分で決める割合(%))
移動平均線から、一定の割合だけ離した線のため、線の幅は、常に、ほぼ一定です。
計算例:エンベロープの計算
25SMAが150.00円、k = 0.5%のとき、次のとおりです。
アッパー = 150.00 × (1 + 0.005) = 150.75円
ロワー = 150.00 × (1 − 0.005) = 149.25円
幅 = 150.75 − 149.25 = 1.50円(150pips)
移動平均線が、150.00円から、152.00円に動いたとすると、次のとおりです。
アッパー = 152.00 × 1.005 = 152.76円
ロワー = 152.00 × 0.995 = 151.24円
幅 = 152.76 − 151.24 = 1.52円(152pips)
移動平均線が動いても、幅は、ほとんど変わりません。幅が、価格に対する割合で決まるためです。
kの決め方
「何%にすれば良い」という決まった数字は、ありません。通貨ペア・時間足・時期によって、普段の値動きの大きさが違うためです。過去のチャートで、「どの程度、離れることが、よくあるか」を確認して、決めます。
計算例:過去の乖離率から、kを決める
過去10回分の、25SMAからの乖離率(絶対値、%)を、小さい順に並べました(例の数値です)。
0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.50、0.60、0.80
このうち、0.60%を超えたのは、10回中1回(0.80%)です。kを0.60%にすると、「普段の値動きの大部分は、ラインの内側に収まり、特に大きく離れたときだけ、ラインの外に出る」という設定になります。サンプルが少ないと、数字は安定しません。実際には、もっと多くの期間で、確認します。
エンベロープが示すこと
価格が、アッパーラインに触れる = 平均から、+k%離れた(上に行き過ぎ)
価格が、ロワーラインに触れる = 平均から、−k%離れた(下に行き過ぎ)
考え方は、移動平均線乖離率と同じで、「離れすぎた価格は、平均に戻りやすい」という見方です。ただし、これは傾向であり、保証ではありません。
ボリンジャーバンドとの違い
エンベロープの特徴は、「幅が一定」であることです。そのため、値動きの大きさが変わると、見え方が変わります。
| エンベロープ | ボリンジャーバンド | |
|---|---|---|
| 幅の決め方 | 一定の割合(自分で決める) | 標準偏差(値動きで決まる) |
| 値動きが小さいとき | 幅は変わらず、価格がほとんど触れない | 幅が狭くなり、価格が触れやすい |
| 値動きが大きいとき | 幅は変わらず、価格が外に出続けやすい | 幅が広がり、価格が収まりやすい |
| 計算の手間 | 簡単 | 標準偏差の計算が必要 |
計算例:値動きの大きさによる違い
25SMAが150.00円、エンベロープはk = 0.5%(±0.75円)、ボリンジャーバンドは±2σとします。
値動きが小さい期間(標準偏差が0.10円)
エンベロープ = 150.00 ± 0.75 → 149.25〜150.75円
ボリンジャー = 150.00 ± 0.10 × 2 → 149.80〜150.20円
価格が、150.00円から、±0.30円の範囲で動いている場合、エンベロープには、一度も触れませんが、ボリンジャーバンドには、触れます。
値動きが大きい期間(標準偏差が0.50円)
エンベロープ = 150.00 ± 0.75 → 149.25〜150.75円
ボリンジャー = 150.00 ± 0.50 × 2 → 149.00〜151.00円
価格が、150.00円から、±0.90円の範囲で動いている場合、エンベロープは、何度も外に出ますが、ボリンジャーバンドの内側には、収まります。図でも、同じ値動きで、エンベロープは、値動きが小さい期間はほぼ触れず、大きい期間は外に出続けています。ボリンジャーバンドについては、別の記事で解説しています。
この違いから、エンベロープは、「値動きの大きさが、あまり変わらない相場」「幅を自分で固定したい場合」に、向いています。
使い方
1. レンジでの逆張りの目安にする
レンジ相場で、価格がラインに触れたとき、ミドルラインへの戻りを、狙う考え方です。
計算例:ロワーラインからの戻り買い
上の例(25SMAが150.00円、ロワーラインが149.25円)で、レンジ相場だとします。価格が、149.25円に触れたあと、下ヒゲの陽線が、149.40円で確定しました。直近安値は、149.20円です。**損切りは、ロワーラインの15pips下(149.10円)、利益確定は、ミドルライン(150.00円)**とします。
149.25円に指値で買う場合
エントリー 149.25円、損切り 149.10円、利確 150.00円
リスク = 149.25 − 149.10 = 0.15円(15pips)
リワード = 150.00 − 149.25 = 0.75円(75pips)
リスクリワード比 = 75 ÷ 15 = 5.0
反発の陽線が確定した終値(149.40円)で買う場合
エントリー 149.40円、損切り 149.10円、利確 150.00円
リスク = 149.40 − 149.10 = 0.30円(30pips)
リワード = 150.00 − 149.40 = 0.60円(60pips)
リスクリワード比 = 60 ÷ 30 = 2.0
指値のほうが、リスクリワード比は良くなります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。ただし、149.25円の手前で反発すると、エントリーできません。また、価格がそのまま、ロワーラインを割り込むと、損切りになります。反発を確認してから入るほうが、ダマシは減りやすい一方、リスクリワード比は下がります。ミドルライン(移動平均線)自体も動くため、目標の位置は、見直す必要があります。
2. トレンドの方向を見る
価格が、ミドルラインとアッパーラインの間を推移している場合は、上昇トレンドが続いていると見る考え方があります。ミドルラインの傾きも、あわせて確認します。移動平均線の傾きについては、別の記事で解説しています。
3. ブレイクの目安にする
値動きが小さい期間のあと、価格がラインを、終値で抜ける場面を、ブレイクの目安にする方法があります。ただし、幅が一定のため、「値動きが大きくなったから、ラインの外に出た」だけのこともあります。
注意点
1. 強いトレンドでは、ラインの外に出続ける
強いトレンドでは、価格が、ラインの外にとどまり続けます。逆張りは、特に注意が必要です。バンドウォークについては、別の記事で解説しています。
2. 値動きの大きさが変わると、設定が合わなくなる
幅が一定のため、値動きが小さい期間は、ほとんど触れず、大きい期間は、外に出続けます。相場の状況に合わせて、kを見直す必要があります。
3. 「何%」という固定の基準は、通用しない
通貨ペア・時間足・時期によって、普段の値動きの大きさが違います。他人の数字を、そのまま使わないようにしましょう。
4. ミドルラインの遅れがある
ミドルラインは、移動平均線のため、トレンドの転換には、遅れて反応します。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、価格が一気にラインの外に出ることが、あります。その後の動きも大きくなるため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足は、ラインに触れたように見えても、確定までに戻ることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
ラインに触れたら、すぐに逆張りする
トレンドが強いと、ラインの外に出続けます。ローソク足の形など、他の根拠も、あわせて確認しましょう。
他の人のkを、そのまま使う
kは、通貨ペア・時間足・時期で、適切な値が変わります。自分で、過去のチャートから、確認しましょう。
ボリンジャーバンドと、同じものと考える
ボリンジャーバンドは、値動きに応じて幅が変わり、エンベロープは、幅が一定です。同じ使い方が、できるとは限りません。
kを、頻繁に変える
結果が悪いたびに、kを変えると、過去のチャートに合わせただけになり、将来には通用しにくくなります。
検証せずに、使う
「エンベロープに触れたら、戻る」と聞いても、実際の確率は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- エンベロープは、移動平均線の上下に、一定の割合(%)だけ離した、平行な線。移動平均線乖離率を、線として表示したもの
- アッパー = 移動平均線 × (1 + k%)、ロワー = 移動平均線 × (1 − k%)
- 幅は一定で、値動きの大きさが変わっても、変わらない。この点が、ボリンジャーバンドとの大きな違い
- kに決まった数字はない。過去の乖離率から、自分で決める
- レンジでの逆張りの目安、トレンドの方向の確認に使う。指値のほうがリスクリワード比は良くなるが、エントリーできないこともある
- 強いトレンドでは、ラインの外に出続ける。値動きの大きさが変わると、設定が合わなくなる
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
