時間を使わないチャートとは
ローソク足は、「1分」「1時間」「1日」といった時間で区切って、1本ずつ足を描くチャートです。これに対して、時間の経過を使わず、価格の動きだけで描くチャートがあります。この記事で解説する、次の4つです。
| チャート | 読み方 | 特徴 |
|---|---|---|
| カギ足 | かぎあし | 価格の反転ごとに、線を折り返して描く |
| 練行足 | れんこうあし | 一定の値幅ごとに、レンガ(ブロック)を積む |
| 新値足 | しんねあし | 終値が新しく更新されたときだけ、足を追加する |
| ポイント&フィギュア | — | X と O の記号を、列にして並べる |
カギ足・練行足・新値足は、日本で生まれた手法です。ポイント&フィギュアは、欧米で古くから使われています。
共通する特徴
- 時間軸がない:一定の値動きがあったときだけ、チャートが進む
- 小さな値動き(ノイズ)が省かれる:トレンドが見やすくなる
- 値動きが小さいときは、チャートがほとんど進まない
- 始値・高値・安値は使わず、主に終値(または一定の値幅)を使う
下の図は、同じ終値のデータを、4つのチャートで描いたものです。

同じ値動きでも、4つとも見え方が大きく違うことが分かります。
練行足(れんこうあし)
練行足とは
練行足とは、価格が一定の値幅(ブロックの幅)だけ動いたときに、1つのブロックを描くチャートです。英語ではRenko(レンコ)と呼ばれます。レンガを積み上げるように、チャートが進みます。
描き方
あらかじめブロックの幅を決めます。たとえば、20pipsとします。
| 状況 | ブロックの描き方 |
|---|---|
| 上昇が続く | 直前のブロックの上端から、さらに20pips上昇したら、上向きのブロック(陽線)を追加 |
| 下落が続く | 直前のブロックの下端から、さらに20pips下落したら、下向きのブロック(陰線)を追加 |
| 反転する | 直前のブロックの反対側の端から、さらに20pips動いたら、反転のブロックを追加 |
反転のブロックは、ブロック2つ分の逆行があって初めて描かれます。たとえば、上昇ブロックの上端から40pips下落して、はじめて下向きのブロックが出ます。この仕組みが、小さな逆行を無視する効果を生みます。
見方
- 同じ色のブロックが続く:トレンドが継続している
- 色が変わる:トレンドが転換した可能性がある(反転にはブロック2つ分の逆行が必要なため、転換のサインは一定の信頼性がある)
- ブロックが上下に行ったり来たり:レンジ(もみ合い)
ブロック幅の決め方
- 固定の値幅(例:20pips)を決める
- ATR(値動きの大きさを表す指標)をもとに、相場の動きに合わせて決める方法もある
幅が小さいほど、細かい動きが反映されるためサインが増えますが、ダマシも増えます。幅が大きいほど、大きな流れだけが残り、サインは遅くなります。
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ノイズが少なく、トレンドが見やすい | 時間の情報がない |
| 色の変化で、転換が分かりやすい | ブロック幅の設定次第で、見え方が変わる |
| ルールが単純 | 転換の判断が、遅れやすい |
| 損切り・利確の目安を、ブロック単位で決めやすい | ブロックの位置が、実際の価格と一致しないことがある |
カギ足(かぎあし)
カギ足とは
カギ足とは、価格が一定の幅だけ反転したときに、線を折り返して描くチャートです。英語ではKagi(カギ)と呼ばれます。縦線と横線で作られ、線の太さが変わるのが特徴です。
描き方
あらかじめ反転幅を決めます。たとえば、20pipsとします。
- 価格が上昇している間は、縦線を上に伸ばす
- 直前の高値から、20pips以上下落したら、横に折り返して、新しい列で縦線を下に描く
- 価格が下落している間は、縦線を下に伸ばす
- 直前の安値から、20pips以上上昇したら、横に折り返して、新しい列で縦線を上に描く
太線と細線
カギ足では、線の太さに意味があります。
| 線 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| 太線 | 陽線(ようせん) | 価格が、直前の高値(肩)を上抜けた。上昇の勢いが強い |
| 細線 | 陰線(いんせん) | 価格が、直前の安値(腰)を下抜けた。下落の勢いが強い |
- 肩(かた):直前の山の高値
- 腰(こし):直前の谷の安値
細線から太線に変わることを「陽転(ようてん)」、太線から細線に変わることを「陰転(いんてん)」と呼びます。
見方
| サイン | 読み取れること |
|---|---|
| 陽転(細線 → 太線) | 上昇トレンドへの転換、買いのサインとされる |
| 陰転(太線 → 細線) | 下落トレンドへの転換、売りのサインとされる |
| 肩・腰が切り上がる | 上昇トレンドが続いている |
| 肩・腰が切り下がる | 下落トレンドが続いている |
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 売買のサイン(陽転・陰転)が明確 | 反転幅の設定次第で、結果が大きく変わる |
| ノイズが少ない | 時間の情報がない |
| **支持線・抵抗線(肩と腰)**が見える | サインが遅れることがある |
| トレンドの強弱が、線の太さでわかる | 描き方に、流派・ツールごとの違いがある |
新値足(しんねあし)
新値足とは
新値足とは、終値が、直前の高値や安値を更新したときだけ、新しい足を描くチャートです。英語ではThree Line Break(スリー・ライン・ブレイク)と呼ばれ、「3本新値足」が最も一般的です。
終値だけを使い、更新があったときだけ足を追加するため、足の長さがバラバラになります。
描き方(3本新値足)
| 状況 | 足の描き方 |
|---|---|
| 上昇中(陽線) | 終値が、直前の足の高値を超えたら、陽線を追加 |
| 下落中(陰線) | 終値が、直前の足の安値を下回ったら、陰線を追加 |
| 陽線から陰線へ(陰転) | 終値が、直近3本の足の安値(最も低いもの)を下回ったら、陰線(転換足)を追加 |
| 陰線から陽線へ(陽転) | 終値が、直近3本の足の高値(最も高いもの)を上回ったら、陽線(転換足)を追加 |
更新がなければ、足は追加されません。
3本新値足のポイント
- 転換するには、直近3本分の安値(高値)をすべて更新する必要がある:簡単には転換しない
- 転換足は長くなる:トレンドが変わったことが、視覚的に分かる
- 「3本」の部分は、2本・5本など、設定を変えられるツールもある
見方
- 陽線が続く:上昇トレンド
- 陰線が続く:下落トレンド
- 色が変わる(陰転・陽転):トレンドの転換のサイン
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ダマシが少ない傾向がある | サインが遅れる(転換足が出たときには、すでに大きく動いている) |
| ルールが明確で、売買の基準にしやすい | レンジ相場では、機能しにくい |
| トレンドの方向が、色で分かる | 時間の情報がない |
ポイント&フィギュア(P&F)
ポイント&フィギュアとは
ポイント&フィギュアとは、価格の上昇を「X」、下落を「O」の記号で表し、列にして並べるチャートです。英語ではPoint and Figure(ポイント・アンド・フィギュア)と呼ばれ、欧米で古くから使われてきた手法です。時間軸も、足もありません。
描き方
あらかじめ、次の2つを決めます。
- ボックスサイズ:1つの記号が表す値幅(例:50pips)
- 反転ボックス数:反転と見なすのに必要なボックス数(3ボックスが標準)
| 状況 | 記号の描き方 |
|---|---|
| X列(上昇)で、さらに1ボックス上昇 | Xを、上に1つ追加 |
| X列で、3ボックス以上下落(反転) | 右隣の列に移り、Oを下向きに描く |
| O列(下落)で、さらに1ボックス下落 | Oを、下に1つ追加 |
| O列で、3ボックス以上上昇(反転) | 右隣の列に移り、Xを上向きに描く |
ボックスサイズに満たない小さな動きは、無視されます。1ボックスや2ボックスの逆行も、反転とは見なされません。
見方
- X列が高くなっていく(前のX列より、上まで伸びる):上昇トレンド
- O列が低くなっていく:下落トレンド
- X列が、前のX列の高さを超える:買いのサイン(ダブルトップ・ブレイクアウト)とされる
- O列が、前のO列の安値を割る:売りのサイン(ダブルボトム・ブレイクダウン)とされる
P&Fでは、ダブルトップ、トリプルトップ、トレンドラインといった、独自のパターンが使われます。
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ノイズが少なく、サポート・レジスタンスが見やすい | 見慣れないと、読みづらい |
| 売買のサインが、明確 | ボックスサイズ・反転数の設定次第で、結果が変わる |
| 時間に左右されない | ツールで対応しているものが少ない |
4つのチャートの比較
| 練行足 | カギ足 | 新値足 | P&F | |
|---|---|---|---|---|
| 発祥 | 日本 | 日本 | 日本 | 欧米 |
| 時間軸 | なし | なし | なし | なし |
| 使う価格 | 終値(一定幅ごと) | 終値(反転幅) | 終値 | 終値(ボックス単位) |
| 主な設定 | ブロック幅 | 反転幅 | 本数(通常3本) | ボックスサイズ・反転数 |
| トレンドの見やすさ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
| 転換の分かりやすさ | 色の変化 | 陽転・陰転 | 転換足 | 列の切り替わり |
| 分かりやすさ | ○ | △ | ○ | △ |
ツールでの表示
- TradingView:チャートの種類として、練行足(Renko)・カギ足(Kagi)・新値足(Line Break)・ポイント&フィギュアが用意されています(プランや仕様は、変わることがあります)
- MT4・MT5:標準のチャートの種類にはありません。カスタムインジケーターを追加して使うのが一般的です
- 国内FX会社のツール:対応しているかは、ツールによって異なります
時間を使わないチャートの使い方
使い方の例
- ローソク足と併用し、ローソク足でエントリーのタイミング、これらのチャートでトレンドの方向を確認する
- トレンドの方向に、順張りで入るときの確認に使う
- サポート・レジスタンスを見つける
注意点
- 設定(ブロック幅・反転幅など)で、チャートが大きく変わる:過去のデータで、設定の違いを確認しておく
- 時間の情報がないため、「いつ起きたか」「どれくらいの時間をかけたか」が分からない
- 出来高の情報も、基本的にはない
- サインが出たときには、すでに価格が動いていることが多い
- 作り方のルールは、ツールや流派によって違うことがある。同じ名前のチャートでも、ツールごとに少し違って見える場合がある
初心者が間違えやすいポイント
ローソク足と同じ感覚で、時間を読もうとする
これらのチャートでは、横軸は時間ではありません。足やブロックが並んでいるだけで、時間の長さは分かりません。
設定を変えて、都合のよいチャートを探す
ブロック幅や反転幅を変えれば、どんなチャートでも作れてしまいます。後から都合のよい設定を探すと、過去にだけ合って、将来には通用しない設定になりがちです。
転換のサインを、すぐに売買のタイミングだと考える
転換のサインは、遅れて出る傾向があります。そのときの価格や、損切りの位置を、あわせて確認しましょう。
これだけで、すべてを判断する
単独で判断せず、ローソク足や水平線、他の指標と組み合わせて使うのが一般的です。
用語・ルールを混同する
カギ足の「陽線・陰線」は、線の太さを表します。ローソク足の陽線・陰線(始値と終値の関係)とは、意味が違います。
まとめ
- カギ足・練行足・新値足・ポイント&フィギュアは、時間を使わず、価格の動きだけで描くチャート
- 練行足:一定の値幅ごとに、ブロックを積む。反転にはブロック2つ分の逆行が必要
- カギ足:反転幅だけ反転したら、線を折り返す。太線(陽)・細線(陰)の切り替わりが、売買のサイン
- 新値足:終値が高値・安値を更新したときだけ描く。3本新値足では、直近3本の高値・安値を更新したときに転換
- ポイント&フィギュア:X(上昇)とO(下落)を列にして並べる。3ボックス反転が標準
- ノイズが少なく、トレンドが見やすい一方、時間の情報がなく、サインが遅れやすい
- 設定によって見え方が変わるため、ローソク足などと併用して使う
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。チャートの解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
