TRIXとは
TRIX(トリックス)とは、終値の指数平滑移動平均(EMA)を、三重に重ねて計算し、その1期間の変化率(%)を示す、オシレーター系のテクニカル指標です。EMAを3回かけることで、小さな上下動(ノイズ)を、強く取り除き、「大きな流れの向き」だけを、取り出そうとする考え方で、1980年代に考案されたと、されています。線は、なめらかな形になり、ゼロラインを境に、プラス圏なら、三重EMAが上向き、マイナス圏なら、下向きと見るのが、基本です。
| TRIXの位置 | 一般的な見方(目安) |
|---|---|
| ゼロラインより上 | 三重EMAが、上向き(上昇の流れ) |
| ゼロライン付近 | 三重EMAが、ほぼ横ばい(方向感が弱い) |
| ゼロラインより下 | 三重EMAが、下向き(下落の流れ) |

図では、価格が高値(52本目)をつけたあと、TRIXがシグナルを下抜けたのは5本後、ゼロラインを下抜けたのは10本後です。その時点で、価格は、すでに、大きく下がっています。TRIXは、「素早さ」より、「ノイズの少なさ」を優先した指標です。
計算方法
EMA1 = 終値のEMA(N)
EMA2 = EMA1のEMA(N)
EMA3 = EMA2のEMA(N)
TRIX(%)= (今回のEMA3 − 前回のEMA3) ÷ 前回のEMA3 × 100
シグナル = TRIXの移動平均(一般的に期間9)
EMAの計算式は、EMA = α × 今回の値 + (1 − α) × 前回のEMA、α = 2 ÷ (N + 1)です。期間Nは、ソフトの標準設定が、12、14、15など、ソフトによって違います。シグナルの移動平均も、SMAかEMAかが、ソフトによって違います。
計算例:N = 3 で、手計算する
計算を簡単にするため、N = 3(α = 0.5)とします(例の数値です。実際の期間は、もっと長く使います)。EMAの初期値は、最初の終値とします(ソフトによって、初期値の扱いは違います)。
2本目の計算(終値150.20円)
EMA1 = 0.5 × 150.20 + 0.5 × 150.00 = 150.1000
EMA2 = 0.5 × 150.1000 + 0.5 × 150.0000 = 150.0500
EMA3 = 0.5 × 150.0500 + 0.5 × 150.0000 = 150.0250
TRIX = (150.0250 − 150.0000) ÷ 150.0000 × 100 ≒ 0.0167 %
3本目の計算(終値150.50円)
EMA1 = 0.5 × 150.50 + 0.5 × 150.1000 = 150.3000
EMA2 = 0.5 × 150.3000 + 0.5 × 150.0500 = 150.1750
EMA3 = 0.5 × 150.1750 + 0.5 × 150.0250 = 150.1000
TRIX = (150.1000 − 150.0250) ÷ 150.0250 × 100 ≒ 0.0500 %
同じ計算を、10本目まで続けると、次のとおりです。
| 足 | 終値 | EMA1 | EMA2 | EMA3 | TRIX(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1本目 | 150.00 | 150.0000 | 150.0000 | 150.0000 | ― |
| 2本目 | 150.20 | 150.1000 | 150.0500 | 150.0250 | + 0.0167 |
| 3本目 | 150.50 | 150.3000 | 150.1750 | 150.1000 | + 0.0500 |
| 4本目 | 150.40 | 150.3500 | 150.2625 | 150.1813 | + 0.0541 |
| 5本目 | 150.70 | 150.5250 | 150.3938 | 150.2875 | + 0.0707 |
| 6本目 | 150.90 | 150.7125 | 150.5531 | 150.4203 | + 0.0884 |
| 7本目 | 150.60 | 150.6563 | 150.6047 | 150.5125 | + 0.0613 |
| 8本目 | 150.30 | 150.4781 | 150.5414 | 150.5270 | + 0.0096 |
| 9本目 | 150.10 | 150.2891 | 150.4152 | 150.4711 | − 0.0371 |
| 10本目 | 150.20 | 150.2445 | 150.3299 | 150.4005 | − 0.0469 |
この例では、価格が6本目の150.90円で、高値になりました。TRIXも、6本目(+0.0884%)がピークで、7本目以降は、低下しています。ただし、TRIXが、マイナスに転じたのは、9本目で、価格が高値(150.90円)から、80pips(150.10円)下がったあとです。
TRIXの数値は、小さくなります(%で、小数第3〜4位まで動く)。数値そのものより、ゼロより上か下か、どちらを向いているかを、見る指標です。
TRIXが示すこと
TRIX > 0 = 三重EMAが、前の足より上がっている(上向き)
TRIX < 0 = 三重EMAが、前の足より下がっている(下向き)
TRIXがゼロを上抜け = 三重EMAが、上向きに転じた
TRIXがゼロを下抜け = 三重EMAが、下向きに転じた
TRIXのゼロは、「価格の水準」ではなく、「三重EMAの向きが変わる点」です。価格が高い位置にあっても、三重EMAが下がり始めれば、TRIXはマイナスになります。
他の指標との違い
| TRIX | MACD | モメンタム | |
|---|---|---|---|
| 計算の元 | 三重EMAの1期間の変化率 | 短期EMAと長期EMAの差 | N本前の終値との差 |
| 単位 | % | 価格差(円) | 価格差(円) |
| ノイズ | 少ない(強く平滑化) | 中程度 | 多い |
| 反応の速さ | 遅い | やや遅い | 速い |
| ゼロライン | あり | あり | あり |
| シグナル | あり(一般的) | あり | ソフトによる |
TRIXは、MACDと、似た形で使いますが、「より、なめらか」な分、「より、遅れる」と、考えるとわかりやすいです。MACD、モメンタムについては、別の記事で解説しています。
基本の使い方
1. ゼロラインの上抜け・下抜けを、トレンドの転換の目安にする
TRIXがゼロを上抜けたら、上昇の流れ、下抜けたら、下落の流れと見る考え方です。ただし、ゼロの上抜け・下抜けは、価格の転換から、かなり遅れて出るため、「転換を当てる」より、「大きな流れに、乗る」ために使うことが、一般的です。
2. シグナルとの交差を、目安にする
TRIXが、シグナルを上抜けたら、上昇の勢いが強まった、下抜けたら、勢いが弱まったと見る使い方です。ゼロラインより、早く出ますが、そのぶん、ダマシも、増えます。
3. 他の指標・環境認識と、組み合わせる
TRIXは、遅れが大きいため、「上位足の方向」や「サポート・レジスタンス」で、場所を確認し、TRIXは、方向の確認に、使うことが、一般的です。
計算例:シグナルとゼロラインで、買う場合
直近の安値が149.40円で、下げ止まり、直近高値は150.60円だったとします。損切りは直近安値(149.40円)、利益確定は、直近高値(150.60円)とします(例の数値です)。TRIXが、シグナルを上抜けた足の終値が149.90円、その後、ゼロラインを上抜けた足の終値が150.20円でした。
安値の近く(149.55円)に、指値で買う場合
エントリー 149.55円、損切り 149.40円、利確 150.60円
リスク = 149.55 − 149.40 = 0.15円(15pips)
リワード = 150.60 − 149.55 = 1.05円(105pips)
リスクリワード比 = 105 ÷ 15 = 7.0
TRIXが、シグナルを上抜けた足の終値(149.90円)で買う場合
エントリー 149.90円、損切り 149.40円、利確 150.60円
リスク = 149.90 − 149.40 = 0.50円(50pips)
リワード = 150.60 − 149.90 = 0.70円(70pips)
リスクリワード比 = 70 ÷ 50 = 1.4
TRIXが、ゼロラインを上抜けた足の終値(150.20円)で買う場合
エントリー 150.20円、損切り 149.40円、利確 150.60円
リスク = 150.20 − 149.40 = 0.80円(80pips)
リワード = 150.60 − 150.20 = 0.40円(40pips)
リスクリワード比 = 40 ÷ 80 = 0.5
| エントリー | 価格 | リスク | リワード | リスクリワード比 |
|---|---|---|---|---|
| 指値(安値付近) | 149.55円 | 15pips | 105pips | 7.0 |
| シグナルの上抜け | 149.90円 | 50pips | 70pips | 1.4 |
| ゼロラインの上抜け | 150.20円 | 80pips | 40pips | 0.5 |
確認を重ねるほど、ダマシは減りやすくなりますが、エントリーが遅れ、リスクリワード比は、下がります(スプレッドや約定のずれは、考慮していません)。TRIXは、遅れが大きいため、ゼロラインの上抜けを待つと、リスクリワード比が、1を下回りやすいです。この場合は、目標を広げるか、見送る判断も、必要です。指値は、149.55円まで下がらずに、反発すると、エントリーできません。また、安値を割り込むと、損切りになります。
注意点
1. 遅れが、大きい
EMAを3回かけるため、TRIXは、価格の転換から、大きく遅れます。図のとおり、価格が高値をつけてから、ゼロラインの下抜けまで、10本かかり、その間に、価格は、大きく下がっています。「転換点を、当てる」道具では、ありません。
2. レンジ相場では、ゼロライン付近を往復する
方向感のないレンジ相場では、TRIXは、ゼロライン付近で、上下を繰り返し、シグナルとの交差も、増えます。図の右側のように、シグナルを上抜けても、価格が、下がり続けることも、あります。
たとえば、レンジ相場で、ダマシの買いが、損失25pipsで、6回続くと、合計−150pipsの損失です。その後の1回の利益が、180pipsなら、合計は+30pips、100pipsなら、合計は−50pipsです。この数字は、あくまで例ですが、損失を、利益で取り返せるかは、状況によって変わります。環境認識については、別の記事で解説しています。
3. 期間・設定で、見え方が変わる
期間を短くすると、反応は速くなるものの、ダマシが増え、長くすると、遅れが、さらに大きくなります。ソフトによって、標準の期間、シグナルの種類(SMAかEMAか)が、違います。他人のチャートと、そのまま比べないようにしましょう。
4. 計算の初期は、値が安定しない
EMAは、前回の値を使って計算するため、チャートの履歴の長さや、初期値の扱いで、表示される値が、少し変わることが、あります。図の左側(算出の初期)は、値が安定していないため、判断に、使わないようにしましょう。
5. 指標発表や要人発言の直後は、特に注意
急変動で、1本の大きな動きが出ても、TRIXは、三重に平滑化されているため、反応が、さらに遅れます。一方、その動きが、価格に与える影響は、大きいため、注意が必要です。
6. 足が確定するまで、分からない
進行中の足では、終値が動くたびに、TRIXの値も、変わります。ゼロラインやシグナルとの交差が、確定までに、入れ替わることがあります。確定後に判断しましょう。
初心者が間違えやすいポイント
ゼロラインを上抜けたら、すぐ買う
ゼロラインの上抜けは、「三重EMAが、上向きに転じた」という意味で、価格の転換から、すでに遅れています。買う位置が、高くなり、リスクリワード比が、下がりやすいことに、注意しましょう。
「ゼロ」を、価格の水準と考える
TRIXのゼロは、「三重EMAの向きが、変わる点」で、価格が、高いか、安いかを、示しているわけでは、ありません。
買われすぎ・売られすぎの指標と考える
TRIXには、RSIのような、上限・下限が、ありません。「ここまで上がったから、買われすぎ」と、判断する、固定の基準は、ありません。
数値の小ささを、気にする
TRIXの値は、%で、小さく表示されます(0.03など)。数値の大きさより、ゼロとの位置関係、向き、シグナルとの関係を、見るようにしましょう。
検証せずに、使う
「ゼロラインを上抜けたら買えば勝てる」と聞いても、実際の成績は、通貨ペア・時間足・期間の組み合わせで変わります。自分で、確認しましょう。
まとめ
- TRIXは、終値のEMAを三重にかけ、その1期間の変化率(%)を示す、オシレーター系の指標。ノイズを、強く取り除く
- TRIX(%)= (今回のEMA3 − 前回のEMA3)÷ 前回のEMA3 × 100。ゼロより上なら上向き、下なら下向き
- 例(N = 3)では、価格が150.90円で高値をつけたあと、TRIXがマイナスに転じたのは、80pips下がった9本目。遅れが、大きい
- 使い方は、ゼロラインの上抜け・下抜け、シグナルとの交差。ゼロラインは、価格の水準ではなく、三重EMAの向きを示す
- 例では、指値(7.0)、シグナルの上抜け(1.4)、ゼロラインの上抜け(0.5)の順に、リスクリワード比が下がる。指値は、エントリーできないこともある
- レンジ相場では、ゼロライン付近で、ダマシが、増える
- 単独では判断できない。必ず機能するわけではない
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。テクニカル指標の解釈は目安であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の勧誘や利益を保証するものでもありません。取引は自己責任でお願いします。
