約定力とは
約定力(やくじょうりょく)とは、注文を出したときに、希望どおりのレートで、すばやく約定できる力のことです。FX会社やその取引環境の「注文の通りやすさ」を表す言葉として使われます。
約定力が高いとは、おおむね次のような状態を指します。
- 注文を出したレートで、ほぼそのまま約定する
- 約定までの時間が短い
- 約定拒否(リクォート)が少ない
- 相場が急変する場面でも、注文が通りやすい
逆に、約定力が低いと、注文が通らない・不利なレートで約定する・約定に時間がかかるといったことが起こりやすくなります。
スリッページとは
スリッページとは、注文を出したときのレートと、実際に約定したレートがずれる現象のことです。「滑る」と表現されることもあります。
スリッページの種類
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 不利なスリッページ | 注文より不利なレートで約定した(買いなら高く、売りなら安く) |
| 有利なスリッページ | 注文より有利なレートで約定した(買いなら安く、売りなら高く) |
「スリッページ」というと、不利なずれを指すことが多いですが、有利な方向にずれる場合もあります。
スリッページの例
USD/JPYの買い注文を、150.00円で出したとします。
| ケース | 約定レート | 結果 |
|---|---|---|
| ずれなし | 150.00円 | 注文どおり |
| 不利なスリッページ | 150.03円 | 3銭(3pips)不利 |
| 有利なスリッページ | 149.98円 | 2銭(2pips)有利 |
1万通貨の取引で、3pipsの不利なスリッページがあった場合の損失は、3 × 100円 = 300円です。
スリッページが起こる原因
1. レートが急変している
経済指標の発表時や、要人発言、突発的なニュースなどで、レートが急激に動くと、注文が処理される間に、レートが先に進んでしまうことがあります。
2. 流動性が低い
取引する人が少ない時間帯(早朝、年末年始、休日前後)や、取引量が少ない通貨ペアは、注文を受ける相手が少なく、希望のレートで約定しにくくなります。
3. 注文の数量が大きい
大きな数量を一度に注文すると、複数のレートに分けて約定する(部分約定)場合があり、平均の約定レートがずれることがあります。
4. 注文の種類による影響
| 注文の種類 | スリッページ |
|---|---|
| 成行注文 | 起こりやすい |
| 逆指値注文 | 起こりやすい(特に損切りの急変時) |
| 指値注文 | 基本的に、不利なスリッページは起こらない(指定レートより有利な約定はあり得る) |
5. 通信やシステムの遅延
インターネット回線の遅れ、取引ツールの動作の遅れ、FX会社のサーバーの混雑などで、注文の処理が遅れ、レートがずれることがあります。
6. 窓開け(ギャップ)
週末や祝日をまたぐと、次の取引開始時にレートが大きく飛ぶことがあります。この場合、逆指値の損切り注文が、指定レートを大きく飛び越えて約定することがあります。
スリッページが問題になる場面
損切りのスリッページ
逆指値による損切りは、急変時に想定より大きな損失になることがあります。たとえば、149.50円に逆指値の損切りを置いていても、レートが149.30円まで飛べば、149.30円付近で約定する場合があります。
短期売買(スキャルピング)での影響
狙う値幅が小さい短期売買では、数pipsのスリッページが、利益を大きく削ることになります。
経済指標の発表前後
雇用統計・FOMC・CPIなどの発表前後は、スリッページが起こりやすい代表的な場面です。
約定拒否(リクォート)とは
約定拒否とは、注文を出したあと、FX会社から「そのレートでは約定できません」と拒否されることです。リクォートとも呼ばれ、新しいレートが再提示される場合もあります。
- ストリーミング注文などで、画面のレートと、サーバー上のレートが一致しないと起こりやすい
- 急変時に、FX会社が、そのレートで約定する余裕がない場合に起こる
約定拒否が多いと、チャンスを逃したり、損切りが遅れたりします。
約定力の高いFX会社を選ぶポイント
1. 約定率・約定スピードの公表数値を確認する
FX会社によっては、約定率や平均約定スピードを公表しています。ただし、どの条件で測定した数値か(平常時のみか、指標発表時を含むか)を確認する必要があります。
2. スリッページの設定が、細かくできるか
取引ツールで、スリッページの許容幅を設定できるか確認します。
3. 約定拒否(リクォート)の有無
約定拒否の有無や、ルールを、公式サイトや約款で確認します。
4. 取引システムの安定性
サーバーの安定性、過去の障害の有無、混雑時の挙動などもチェックしましょう。
5. 口コミや実際の使用感を、複数の情報源で確認する
公式の数値だけでなく、実際の利用者の声や、デモ口座・少額での取引で確認することも有効です。
注意:「約定力が高い」とされる数値は、測定条件によって大きく異なります。数値だけで判断せず、複数の観点から総合的に判断しましょう。
スリッページを抑える対策
1. 重要な経済指標の前後は、取引を避ける
発表の数分前〜直後は、新規注文や、成行注文を避けるのが基本です。
2. 流動性が低い時間帯の取引を避ける
早朝、年末年始、クリスマスなどは、スプレッドも広がりやすく、スリッページも起こりやすい時間帯です。
3. 成行注文ではなく、指値注文を使う
価格を指定できる指値注文なら、不利なスリッページを避けられます。ただし、約定しないリスクがあります。
4. 取引数量を大きくしすぎない
資金に見合った数量で取引し、一度の注文数量を抑えます。
5. スリッページの許容幅を設定する
取引ツールに許容幅の設定があれば、適切に設定します。許容幅を狭くすると、約定しにくくなる点に注意します。
6. 通信環境を整える
安定した回線を使い、取引ツールの動作が重くならないようにします。
7. 週末をまたぐポジションに注意する
窓開けによるスリッページを避けるには、週末前にポジションを決済する、または数量を抑えることが有効です。
損切りの逆指値とスリッページ
逆指値による損切りは、スリッページが起こる可能性があるため、次の点を意識しましょう。
- 損切り幅に、余裕を持たせる:ぎりぎりではなく、スリッページを見込んだ設定にする
- 取引数量を抑える:想定より大きな損失になっても、許容範囲内に収まるようにする
- 重要イベント前は、ポジションを減らすか、決済する
初心者が間違えやすいポイント
「逆指値を入れておけば、その価格で必ず損切りされる」と考える
逆指値は、指定したレートに到達してから、成行注文として出されることが多く、指定したレートで約定する保証はありません。
スプレッドが狭いFX会社=約定力が高いFX会社と考える
スプレッドが狭くても、約定力が低いことはあります。スプレッドと約定力は別の指標です。
スリッページは「損をするもの」だけと思い込む
スリッページには、有利なレートで約定するケースもあります。ただし、FX会社によっては、有利なスリッページを認めない(不利なスリッページのみ許容する)場合もあります。
経済指標の発表時に、成行注文を出す
発表時は、スプレッドの拡大と、スリッページのリスクが重なります。
まとめ
- 約定力は、注文が希望のレートで、すばやく約定する力
- スリッページは、注文時のレートと約定レートのずれ。不利な方向にも、有利な方向にも起こる
- 原因は、急変・低い流動性・大きな数量・注文の種類・通信の遅延・窓開けなど
- 成行注文と逆指値注文は、特にスリッページが起こりやすい
- 約定力は、公表数値の測定条件を確認し、複数の観点から判断する
- 対策は、指標の前後や低流動性の時間帯を避ける・指値を使う・数量を抑える・週末持ち越しに注意する
- 逆指値の損切りは、スリッページを見込んで余裕を持たせる
本記事は情報提供を目的としたもので、投資の勧誘や利益を保証するものではありません。取引は自己責任でお願いします。
